1. トップ
  2. 『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』西野亮廣が語る制作秘話「マーケティング的な邪な考えを捨てるのが一番難しかった(笑)」

『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』西野亮廣が語る制作秘話「マーケティング的な邪な考えを捨てるのが一番難しかった(笑)」

  • 2026.3.28

コロナ禍の最中であった2020年12月に公開され、国内動員数196万人の大ヒットを記録したオリジナルアニメーション『映画 えんとつ町のプペル』。原作絵本の累計発行部数は80万部を突破し、その後も歌舞伎、バレエ、ミュージカルとジャンルを超えて広がり続けてきた「プペルワールド」の最新作『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』が公開中だ。

【写真を見る】マルチな才能をみせる西野亮廣をモノクロ写真とカラーで撮り下ろし!

前作に引き続き、原作・脚本・製作総指揮を務めたのは、芸人・童話作家として活動しながら、プロデューサーとして国内外の様々なエンタテインメント作品を精力的に世に送り出している西野亮廣。「前作の公開から2か月くらい経ったころ、続編を作ってもいいんじゃないか、という話が出て。そこまでいけたのは、やっぱりうれしかったですね」と振り返る彼が、制作秘話やキャスティング、本作への想いについて語ってくれた。

「ちゃんとヒットさせなきゃいけない!というプレッシャーを感じた」

映画制作のスタートは、まず脚本から。しかし、西野にとって2作目の脚本執筆はなかなかスムーズにはいかなかったという。「前作のエンドロールを見た時、これほど多くのスタッフさんが携わっていたんだということを目の当たりにするじゃないですか。そうか、これだけの方たちにお時間をいただいて、みなさんそれぞれにご家族もあって。となると、続編を作るなら、ちゃんとヒットさせなきゃいけない!というプレッシャーを感じてしまったんですね。それで最初のうちは、売れる作品ってなんだろうと考えながら、結局10か月くらいかけて脚本を書いたんですけど、これが全然おもしろくなかったんですよ」。

 【写真を見る】マルチな才能をみせる西野亮廣をモノクロ写真とカラーで撮り下ろし! 撮影/木村篤史 スタイリスト/久 修一郎 ヘアメイク/KAE(NORA)
【写真を見る】マルチな才能をみせる西野亮廣をモノクロ写真とカラーで撮り下ろし! 撮影/木村篤史 スタイリスト/久 修一郎 ヘアメイク/KAE(NORA)

プロデューサーとしての視点を常に持ちながら、クリエイターとして新しい作品を生み出すことの難しさ。「作ったら、届けるところまでがセットだと思っているので、制作中に、こんなものがウケるんだろうか?みたいなマーケティングの空気がどうしてもちらつくんですよね。そういう邪な心を捨てるのが一番難しかった(笑)。でもね、ある時、せめて脚本段階ではそういう意識は1回忘れよう!と割り切ることにして。ようやく僕が2019年に出版した絵本『チックタック~ 約束の時計台~』の物語をベースにしようと決めました。そこからは早かったですね」。

今作で描かれるのは、第1作で大切な親友のゴミ人間・プペルを失った少年ルビッチが、ある日、時を司る異世界“千年砦”に迷い込み、再び“信じる勇気”を取り戻すまでの大冒険。ルビッチ役の新たなヴォイスキャストには、大々的なオーディションを敢行した結果、NHK連続テレビ小説「あんぱん」の主人公・朝田のぶの幼少期を演じた永瀬ゆずなが抜擢された。西野は「永瀬ゆずなという才能と出会ったことは、今作の最大の幸運であることは間違いない」と絶賛する。

「演技力も高いし、バランス感覚もいい。子どもだからといって、技術が未熟かというと、全然そんなことはなくて、出力のコントロールがすごくうまいんです。さらに、これは天性のものだと思いますけど、彼女の声は聴きたくなるし、応援したくなる。子ども特有のしゃべり方には、お父さん、お母さんが聞き取ってあげないといけないくらいの、ちょっと舌っ足らずな感じがあって、そこが子どもの求心力だと思うんですよね。たとえばベテランの落語家さんも、お客さんを前のめりにさせる技として、非常に大事なシーンで、あえてボソボソしゃべったりしますけど、子どもって、それを天然でできているんですよ。そういう子どもならではの資質と、永瀬ゆずなという役者としての才能が、今回めちゃくちゃいいタイミングで掛け合わさっているところがすばらしいなと思います」。

前作から6年、豪華キャスト&スタッフが集結し新たな冒険が始まる! [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会
前作から6年、豪華キャスト&スタッフが集結し新たな冒険が始まる! [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

とはいえ、やはり子どもなので、アフレコの演出の際に、難しい言葉で説明しても正確に届かない場合がある。そこで西野がとったのは「自分もアフレコの収録ブースの中に入って、『ゆずなちゃん、これのモノマネをやってみて』と1回やってみせる」という方法。「ゆずなちゃんも、途中でマイクの存在を忘れて、マイクに背を向けたまま、ワーッとセリフを言ったりして、アフレコの現場がすごく盛り上がりました(笑)。一緒に作っている!っていう感じがして、非常に楽しかったですね」。

異世界に迷い込んだルビッチの新たな相棒、人間の言葉を話す不思議なネコ・モフを演じるのは、西野とは旧知の仲であるMEGUMI。前作のルビッチが、ゴミ人間のプペルの世話を焼くお兄さん的なポジションだったのに対し、今作のルビッチは本来の姿である子どもらしい子どもとして描かれている。そんなルビッチの保護者的存在となるのがモフだ。

「ルビッチが子ども、つまりボケ役なので、モフ役は演技力だけでなく、ツッコミがうまいことが絶対に必要な条件だったんです。自分もお笑いをちょっとかじっているものですからわかるんですけど、ツッコミだけは演技じゃ無理なんですよね。ツッコミは明らかに技術職で、才能云々じゃなく、経験なんですよ。まずバラエティで慣れている人で、演技もツッコミもできて、人のことをアンタって自然に呼べる……となると、もうマツコ・デラックスさんとMEGUMIちゃんしかいない(笑)。あと小池栄子さんもそうですが、彼女は前作でルビッチのお母さん役で出てくださっているので」。

異世界に迷い込んだルビッチを導く不思議ネコ、モフの声をMEGUMIが担当する [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会
異世界に迷い込んだルビッチを導く不思議ネコ、モフの声をMEGUMIが担当する [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

断られることを恐れた西野は、自らMEGUMIに連絡して「姉さん、出てよ」と直々にオファー。「『やるやる!』って言ってもらえたんですけど、その時にモフというキャラクターがどれだけ重要かを伝えるのを忘れていて。後から脚本を送ったら『チョイ役だと思ったから気軽に引き受けたのに、これ、メインのキャラじゃない!』って怒られました(笑)」。

「映画 えんとつ町のプペル」シリーズでは、音楽も重要な要素のひとつ。今作では前作の大ファンだという富貴晴美が初参加し、登場人物たちの心情を表現するエモーショナルな楽曲の数々を手掛けている。ちなみに本作の新たなメインキャラクターである時計師のガス(声:吉原光夫)と、人の姿に化けた植物の精霊・ナギ(声:小芝風花)のクライマックスシーンのテーマ曲を作るにあたり、西野から富貴へのオファーは「名曲を書いてください!」というストレートすぎる言葉だったとか。

「いや、ほんとひどいですよね(笑)。富貴さんには謝らなきゃいけない。実は当初、そのシーンにはほかの曲を入れる予定だったんですが、富貴さんから新しい曲を書きたいという提案があったんです。それで『わかりました。その代わり、名曲を作ってくださいよ』と。プロの作曲家さんに、そんな指示出しちゃダメじゃないですか。お笑い芸人に対して、『おもしろいことやってくださいね』って言っているようなものですから。ですが、僕も本気で言ったんですよ。『めちゃくちゃ大事なシーンなので、この曲で締めるような、名曲を作ってください』って。後日、富貴さんから曲が上がってきた時には、もうガッツポーズでしたね。最初にデータで届いた曲を聴いたとき、僕すぐに電話して、『富貴さん、コレ!コレっす!ありがとうございます!』って。最高でした。うれしかったです」。

”王道の大冒険”を西野亮廣が信頼を寄せるSTUDIO4℃が見事に描き切る [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会
”王道の大冒険”を西野亮廣が信頼を寄せるSTUDIO4℃が見事に描き切る [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

「エンタメだから、いろんなものがあっていい」

アニメーション制作は、前作に続いてタッグを組むSTUDIO4℃。昨年公開された『ChaO』(25)でもアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞を受賞するなど、国際的な評価が高いスタジオとして知られている。西野にとってSTUDIO4℃作品との出会いは、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した『鉄コン筋クリート』(06)だった。

「僕は中学生のころから松本大洋さんの漫画が大好きで、ずっと読んでいたんです。その松本大洋さん原作の『鉄コン筋クリート』を映画化するって聞いた時は、失礼ながら、ムリだろって思ったんですよ。ところがSTUDIO4℃は松本さんの絵をアニメーションの形で本当に見事に動かされていて、めっちゃ感動したんですよね。で、自分が劇場アニメを作るというターンになった時に、STUDIO4℃の名前が挙がってきて。あれだけ自分を感動させてくれたスタジオさんと組めるなんて…ぜひお願いします!という感じでした」。

西野が考えるSTUDIO4℃の魅力は、まず「圧倒的な技術力」。そして「ひと目でSTUDIO4℃の絵だとわかる」個性的なキャラクターデザインだ。「日本のアニメって、美人キャラの顔はコレ、イケメンの顔はコレ、みたいな定型がなんとなくあって、僕たち観客もそういうものが好きになってきてしまっている。そんななか、STUDIO4℃はワガママなのかなんなのか(笑)、好みもバッチリ分かれます、みたいなところがあって。STUDIO4℃が描くキャラが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、僕はそこが本当に好きで。エンタメだから、いろんなものがあっていい。ひとつ確かなのは、STUDIO4℃はスタジオとしてのカラーが明らかで、日本国内だけじゃなく、海外でも、これはSTUDIO4℃の絵だなというのがはっきりわかるということ。いまのようにマーケティングのデータが取れて、観客の好みの答え合わせができる時代に、これだけ個性を残しているのはすばらしいなと思います」。

本作のヒロイン、ナギを小芝風花が、愛する者の帰りを信じるガスを吉原光夫が演じる [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会
本作のヒロイン、ナギを小芝風花が、愛する者の帰りを信じるガスを吉原光夫が演じる [c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

今作の制作期間中、西野は前作『映画 えんとつ町のプペル』で長編監督デビューを果たした廣田裕介監督、SUTDIO4℃の田中栄子プロデューサーと3人で「王道をやりきろう」と話し続けてきたという。「とにかくど真ん中の直球で、ハッピーエンドの冒険活劇。ハシゴを外したり、期待を裏切ったりするんじゃなくて、お客さんが求めているところに投げて、それをさらに上回るのをやろう!って言っていました。僕、90年代のトレンディドラマが好きなんですよ。一番盛り上がるシーンで主題歌が流れ始める、みたいな(笑)。恥ずかしがらず、あれをやりましょう!って」。

変化球なしの王道を真正面からやるというのは、実は「同業者の目もあるし、たぶんけっこう抵抗あると思うんですよね」と西野は語る。「芸人だったら、目の前のお客さんがどんなに笑っていても、舞台袖はあんまり笑ってないな…とか、ちょっと意識してしまう気持ちがあるんですけど。いや、それは関係ないなと。少なくとも、このプロジェクトにおいては、王道をやりきりたかった。廣田監督の采配も大きいと思いますね。覚悟を決めて、その方向に舵を切ってくださったのは、本当にうれしかったです。観てくださったお客さんに、スケールアップした正統派ファミリーエンタテインメントを楽しんでもらえたらなによりです」。

文/石塚圭子

元記事で読む
の記事をもっとみる