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「真ん中の肘掛けはどっちが使う?」ありがち“新幹線モヤモヤ”が晴れた20代男性の「神対応」

  • 2026.3.26
新幹線車内や映画館、劇場などで静かに繰り広げられる「肘掛け争奪戦」。隣席の客が占領していてモヤッとすることもあるだろう。だが、38歳女性が隣り合わせた20代男性の対応は、互いの心が豊かになる素晴らしいものだった。※サムネイル画像:PIXTA
新幹線車内や映画館、劇場などで静かに繰り広げられる「肘掛け争奪戦」。隣席の客が占領していてモヤッとすることもあるだろう。だが、38歳女性が隣り合わせた20代男性の対応は、互いの心が豊かになる素晴らしいものだった。※サムネイル画像:PIXTA

シネコンなどの大きな映画館は座席も広めで肘掛けも幅が広い。ところが昔ながらの映画館や劇場は、今も隣席との肘掛け部分が狭く、隣の人の態度によっては無言の争いとなることもあるようだ。

年配男性が肘掛けを占領

「つい先日、小さな劇場に芝居を観に行ったんですが、隣の席の年配男性がめいっぱい肘掛けを占領しているんですよ。私は肘掛けは使わなくてもいいけど、彼の肘がこちらの席まで出てくるのが気になって……」

必要以上に座席が狭くなり、手を自然に膝の上に置くことすらできなかったとマナミさん(40歳)は言う。それとなく腕で相手の肘を押し返したが、男性はさらに肘をこちら側に突き出してきた。

「だんだん苦痛になってきて、『すみませんが、もう少し腕を引っ込めてもらえますか』と言ったんです。するとその男性、『ああ?』と不遜な態度でにらみつけてくる。思わずカッとして『私は肘を出してないけど、これ、出し過ぎでしょ』と彼の肘をつついたんですよ。そうしたら黙って大きなため息をつき、『まったく今どきの若い者は』って。若くないですけどね、私は」

その男性の声が大きかったので、前の席から「しっ」と言う声が飛んだ。すると男性は「あんたのせいでオレまで怒られたじゃないか」と怒りだした。

スタッフに訴えたものの

「それきり私は無言でいましたが、肘掛けから出ている腕を押し返す作業はずっと続きました。途中で休憩があったとき、会場のスタッフに訴えたんですが、他に席もないのでという返事。仲裁してもらえませんかと言っても、ちょっとお待ちくださいと言われて開演まで戻ってきませんでした。しかたなく自分の席に戻りましたが、なんだか釈然としませんでしたね」

彼もマナミさんも、一人で来ていたので他に助け船を出してくれる人もいない。結局、彼女が身を細めるようにして舞台に集中しようとした。

「悪いけど舞台の内容はほとんど覚えていない。意地で最後までいただけ。舞台が終わってその男性の顔をよく見てやろうと思ったら、その人、さっさと立ち上がって帰ってしまいました」

後味の悪さだけが残った結果となったそうだ。

乗り物の肘掛けは誰のもの?

一方、新幹線や飛行機ではどうなのだろうか。肘掛けは誰のものでもないので譲り合ってほしいということだが、二人掛けのとき、真ん中の肘掛けはどちらが使うべきなのか、三人掛けのとき真ん中になった人は両側を使っていいのかなど、さまざまな声がある。

「私はいつも通路側を予約するので、通路側の肘掛けしか使いません。だけど二人掛けの場合、窓際の人は窓寄りと私寄り、両方を使っていることがある。それを見ると若干、不公平なんじゃないのという気持ちが起こるんですよ。些細なことだけど……」

アキコさん(38歳)はそう言って苦笑した。仕事柄、出張が多いため、飛行機や新幹線は月に数回利用するが、そのつど、迷ったりモヤモヤしたりするらしい。

ただ、先日、いつものように通路側を予約して座っていると、あとから窓際の人が乗り込んできた。20代らしき会社員だ。

「彼は座って、後ろを振り向き、誰もいないのが分かると少しだけ背もたれを倒しました。二人掛けの席だったんですが、その人、『肘掛け使ってくださいね。僕は窓に寄りかかって寝るだけなので』って。そんな人、初めて会いました。

私はちょうどパソコンを広げて仕事をしようとしていたので、それなら肘掛けを両方使えた方がいいだろうと思ってくれたんでしょう。『ありがとうございます、助かります』と言うとニコッと笑って。こういうことがあると早朝からの出張も悪いことばかりじゃないなと思えます」

肘掛け争奪戦より思いやりの交換を

その後、彼がコンコンと咳をしていたので、彼女は手持ちの個包装ののど飴を差し出した。もしよかったらどうぞ、と。

「彼は『ありがとうございます。乾燥しているんですかね、急に咳が止まらなくなって』と恐縮しながら受け取ってくれました。本当にささやかな思いやりの交換ができたような気がしてうれしかった」

東京駅から乗って、彼は京都で降りていった。新大阪まで行く彼女の前を通りながら、彼はにこやかに会釈していった。

「彼の最後の言葉が、『また、どこかで』でした。なかなかすてきじゃないですか。どういう仕事をしている人か分かりませんが、彼の仕事がうまくいきますようにと思わず心の中で祈りました。私のその日の出張先の仕事もばっちりで、おそらくああいうできごとがあって、心が豊かになっていたからなのではないかと思えた。できる限り、人にはちょっとした思いやりを持ちたいと思った一件でした」

肘掛け争奪戦などするより、こうした些細な思いやりを交換する方がよほど、二人とも豊かな気持ちになれるという見本だろう。

文:亀山 早苗(フリーライター)

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