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【長澤まさみインタビュー完全版】結婚後初表紙に話題沸騰!「人との距離も芝居との距離も、もう一段深いところへ」

  • 2026.3.20

2026年、人生における新たな一歩を踏み出した長澤まさみさん。撮影現場で交わされた祝福の言葉に、「ありがとうございます」と晴れやかに微笑んでいらっしゃいました。そんな彼女に着ていただいたのは、デザイナーが変わったばかりのメゾンからピックアップしたフレッシュなお洋服たち。ブランドの伝統的なコードは大切に守りつつ、新しい風が吹くようなコレクション……。まさに今の長澤さんにこそふさわしいルックの数々。ファッションについて、またこれからの長澤さん自身について、貴重なお話を聞かせていただきました。

人との距離も芝居との距離も、もう一段、深いところへ。

新体制となったブランドのルックを纏いながら、長澤まさみさんは変わることと受け継ぐこと、その共存を肌で感じ取っていた。目新しさに目を奪われるというより、そこに流れる時間や思想を確かめるように。
「春らしくて、どれもカラフルで。それぞれのブランドが、これまでに大切にしてきたイメージを受け継ぎながら、新しいデザイナーによって新しい解釈で更新されている。それがひしひしと伝わるルックが多かったなと思いました。ディテールの美しさや素材のテクスチャーなど、見ているだけでも存在感があるけれど、実際に袖を通すと、ちゃんと服としての機能が備わっている実感もあって。着心地だとか、からだの動かしやすさなど、見た目の美しさだけじゃなくて、すごく現実的な部分にも完成度の高さを感じられました」

【MAISON MARGIELA】昨年就任した新クリエイティブ・ディレクターは、マルタン・マルジェラと同じアントワープ王立芸術アカデミー出身のグレン・マーティンス。ジャケット¥1,056,000、ドレス¥422,400、シューズ¥176,000、スカーフ¥48,400、リング¥101,200(全てメゾン マルジェラ/マルジェラ ジャパン クライアントサービス)、タイツはスタイリスト私物

ものづくりは、人の手に届いて受け取ってもらってこそ完成する

着用したBALENCIAGAのドレスには、ポケットが備わっていた。
「ドレスなのにポケットが付いているのって、すごく今っぽいですよね。ドレスは、我慢して着るものだった時代もあったと思うんです。コルセットを締めて、からだのラインを整えてから着る、というように。でも今は、その前提で作られていない。もちろんドレスにはドレスの美学や、品格、佇まいがあります。それは今も変わりませんが、女性が日常的に働き、生きている現代に、その美しさを一方的に押し付けるような作り方は、どのブランドもしていない気がします。ちゃんと“着る人の生活”を前提にしている。その感覚が、服の細部から伝わってきました。たった一着の中にも、時代の移り変わりが投影されている」

【BALENCIAGA】ヴァレンティノから活躍の場をバレンシアガに移したピエールパオロ・ピッチョーリによる待望のコレクション。ドレス¥1,177,000、シューズ¥177,100※共に予定価格(共にバレンシアガ/バレンシアガ クライアントサービス)

なかでも、CELINEのスタイリングには、盟友でもある俳優・スタイリスト野波麻帆さんの感性と、長澤さんらしさが重なる。
「若いころは、スキニーが相棒。動きやすさ重視だったし、形が本当にキレイで、自分の体形に合うという理由で愛用していました。昔から私のことを知っている野波さんが、そこをちゃんと拾ってくれたんだと思います。最近はワイドが多いけれど、トレンドや時代が移り変わってもスキニーは私の定番。年齢を重ねて手放すアイテムもある一方で、逆に“今またこれをはきたい”と再燃することもある。その感覚が久しぶりに戻ってきたようで、少し懐かしかった」

【CELINE】フィービー・ファイロ時代に10年間デザイン・ディレクターを務めたマイケル・ライダーが今季より古巣に復帰、アーティスティック・ディレクターに。デニムシャツ¥154,000、ハイネックトップス¥115,500、ジーンズ¥143,000、ブーツ¥209,000、キャップ¥84,700、スカーフ[90×90㎝]¥86,900、リング¥83,600、ベルト¥79,200※全て予定価格(全てセリーヌ/セリーヌ ジャパン)

ファッションは巡る。その言葉を実体験として理解できるようになった。
「ただ、過去に流行っていたものをそのまま着ると、正直、自分には似合わないことも。でもそれを若い子たちが着ると、驚くほどしっくりくるのが面白いんですよね。洋服って、行き先がちゃんとあるんだなと思います。古着ひとつでも、私たちの世代が選ぶものと、若い世代が手に取るものはまったく違う。その違いこそが、ファッションの面白さなんだと思います」
 
巡るけれど、同じにはならない。新体制のブランドにも同じ視点を向ける。
「GUCCIにも、デムナ(編注:GUCCIの新アーティスティック・ディレクター)っぽさがすごく感じられるんですけど、だからといって、これまでのイメージが失われているわけではないんですよね。アイコンとなる要素を大切にしながらデザインされていて、新鮮さの奥には、手にする側にとっての安心感、信頼がちゃんと残されている。ブランドの継承は、作り手だけで完結するものではなくて、受け取る側の存在も前提にあるのだなと感じられました」
 

【GUCCI】熱狂的なファンを多く持つデムナがアーティスティック・ディレクターに就任したグッチからは、長澤さんの滑らかな肌を引き立てる黒のドレスを。ドレス¥3,575,000、イヤリング¥385,000(共にグッチ/グッチ クライアント サービス)

作ること、受け取られること、その往復の中で初めて完成するという感覚は、長澤さんの仕事観とも深くつながる。その感覚をよりはっきりと刻んだ出来事があった。
「コロナ禍明けに参加した松尾スズキさんのミュージカルで、公演の最後に、松尾さんが客席に向かって拍手をしたんです。出演者やスタッフだけじゃなくて、この舞台を一緒に成立させた人たちとして。マスクをする、私語を控える……感染が広がらないように気をつけながら、最後まで公演を守ってくれた。そのおかげで無事に舞台を終えられた。ここまで一緒に来てくれてありがとう、という意味の拍手だったと思います。舞台も映画も、作り終えた時点が完成じゃなくて、人の手に届いて、観てもらって、何かを受け取ってもらって、そこまで含めてようやく完成といえる。その間には、たくさんの工程や人の手があって。どの仕事においても、そういったレイヤーが必ず存在します。その中で、自分がどこに立っているのかをちゃんと理解していたいなと思っています」

幸せを感じる言葉を使う時間を増やしたほうがいいなって

誰かと関わり、何かを受け取る日々の中で、これまで当たり前だと思っていた自分の癖にも、ふと目が向いた。
「人って、どうしても謙遜をしてしまいがち。“すみません”という言葉も、気づくと使っている。あれ? 謙遜している時間が人生の中で結構長いなと思い始めたら、もう少し“楽しい”とか“嬉しい”といった、生きている幸せを感じる言葉を使う時間を増やしたいと思うようになりました。たとえば現場で誰かにケアしてもらったとき、今までは反射的に“すみません”と言っていたんですけど、それを全部“ありがとう”に変えてみました。それだけで、場の空気も違うし、自分の心の持ちようも少し変わった気がして。最近、友人に言われたのは、“昔はもっと白黒がハッキリしていたけれど、今はだいぶマイルドになったね”って。曖昧なことを、曖昧なまま置いておけるようになったと。自分では、白黒ハッキリしている自覚がなかったので、少し意外な言葉でしたが、そう見えていたのかもしれないですね」
以前よりも、きっぱり決めなくていい。完璧に整えなくてもいい。そう思えるようになったことで、日常の過ごし方にも、自然と余白が生まれている。
「ちゃんと朝起きて、朝ごはんと昼ごはんも作って、という人間らしい生活をしています。難しいことはしないですけど、自分の手を動かして作った食事を、誰かと一緒に食卓を囲む。その時間があるだけで、気持ちが整う感じがします」

【BOTTEGA VENETA】ラコステやカルヴェンで経験を積んだルイーズ・トロッターが手がけた今季のコレクションは、世界中のファッショニスタの心を鷲掴みに。ジャケット¥579,700、セーター¥359,700、パンツ¥260,700※参考色、シャツ※参考商品(全てボッテガ・ヴェネタ/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

ピラティスに加えて、ピアノや太極拳など、新しいことにも少しずつ挑戦している。
「太極拳の動きは、健康にもメンタルにもいいとのことで気になっていました。教えてくださる先生とも出会えたので、レッスンを楽しみにしているところ。他にも、友人が畑を始めるので、今年はそのお手伝いにも行きます。土に触れたり、自然の中に身を置いたりしながら、ちゃんと息抜きをしようと決めました。意識しないと、休むことすら後回しになってしまう仕事だからこそ、息抜きすると“決める”んです」

【JIL SANDER】ジル サンダーらしい研ぎ澄まされたピュアさを表現するのは、今季よりディレクションを務めるシモーネ・ベロッティ。トップス¥203,500、スカート¥313,500、シューズ¥162,800(全てジル サンダー/ジルサンダージャパン)トップス¥203,500、スカート¥313,500、シューズ¥162,800(全てジル サンダー/ジルサンダージャパン)

次の方向性について尋ねると、返ってきた答えは驚くほどシンプルだった。
「楽しむ、です。私は芝居に向かっているときはまっすぐで、役を演じるって本当に難しくて、感情をすり減らすし、簡単にさらっとできるものじゃないんです。でも、現場で先輩が教えてくれたんですが、“誰もが絞り出しながら演じていると思うよ”って」
だからこそ、かつてかけられた何気ない一言が、ずっと心に残っている。
「以前、日本アカデミー賞の場で、司会をされていた西田敏行さんに、“芝居をしていて楽しいですか?”と聞かれたことがあって。当時の私は“もう本当に大変で大変で”としか答えられなかったんです。すると西田さんが“いつか楽しくなるといいね”と言葉をかけてくださって。芝居って、楽しんでやっていいものなの? とすごく意外で。そのころは、そんなふうに捉える事を考えてなかったし、自分にできる事を一生懸命やらなきゃと思ってました、芝居に真剣だった」
当時は受け止めきれなかった言葉を、今は少し違った距離で見つめる。
「お芝居が難しいのは大前提として、でも、その中に楽しんじゃう気持ちを持ちながら向き合えたら、集中の質も変わってくる気がして。好奇心を持って、芝居と向き合っていきたいなと思っています」
学びは終わらない。まだ、続いていく。
「芝居の勉強をもっとしたい。最近、現場で芝居の話ができる俳優仲間ができて、それがすごく嬉しくて。芝居って、セッションであり化学変化。馴れ合うためじゃなくて、もっと深く向き合うために、人との距離も芝居との距離も、もう一段深いところへ。今は、そこに向かっていきたいです」

【GUCCI】ドレス¥3,575,000、イヤリング¥385,000、シューズ¥195,800(グッチ/グッチ クライアント サービス)

Profile_長澤まさみ(ながさわ・まさみ)/1987年生まれ、静岡県出身。2000年に映画『クロスファイア』で俳優デビュー。映画『MOTHER マザー』で第44回 日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞を受賞。近年の出演作に、映画『キングダム』シリーズ、『スオミの話をしよう』『ドールハウス』『おーい、応為』、ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』、NODA・MAP『正三角関係』、Bunkamura Production 2025「おどる夫婦」などがある。

photograph:KATSUHIDE MORIMOTO
styling:MAHO NONAMI
hair:YU NAGATOMO[home agency]
make-up:SUZUKI
model:MASAMI NAGASAWA
text:HAZUKI NAGAMINE

otona MUSE 2026年4月号より

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