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20年前、日本中の女性を「美しい」と肯定した“あらたな愛の歌” 街中で脳内再生され続ける永遠のアンセム

  • 2026.4.20
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2006年の春。街が少しずつ新しい生活の匂いに包まれ始めた頃、テレビから流れてくるある圧倒的な「赤」の色彩が、私たちの視線を釘付けにした。鮮やかなパッケージのシャンプー、そして日本を代表する女優たちが一堂に会し、しなやかな黒髪をなびかせる資生堂「TSUBAKI」のCMである。その映像の背景で、まるで祝福のファンファーレのように鳴り響いていたのが、あの至福に満ちたメロディだった。

SMAP『Dear WOMAN』(作詞:麻生哲朗/作曲:平田祥一郎)ーー2006年4月12日発売

当時、この曲を耳にして、思わず背筋を伸ばした人は多かったのではないだろうか。それは単なるCMソングという枠を超え、聴く者すべてを包み込む「肯定」のメッセージとして、日本中の空気感を鮮やかに塗り替えていった。

多幸感のサウンドデザイン

この楽曲の最大の功労者の一人は、作曲と編曲を一手に引き受けた平田祥一郎だろう。イントロが鳴った瞬間に広がる、眩いばかりのキラキラとしたサウンド。そこには、現代のダンスミュージックが持つタイトなグルーヴと、古き良き歌謡曲が持っていた華やかなオーケストレーションが、絶妙なバランスで同居している。

特筆すべきは、その音の厚みである。エッジの効いたブラスセクションと躍動感あふれるストリングスが重なっていく。一つひとつの音が重なり合い、巨大な光の渦となって押し寄せてくるような感覚は、まさに「多幸感」という言葉を具現化したものだ。

技術的な視点で見れば、各楽器の帯域が非常に緻密に整理されており、これほど情報量が多いにもかかわらず、全く混濁していない。ハイハットの細かな刻みから、ボトムを支えるベースラインまで、すべてが一つの目的に向かって完璧に配置されている。この計算し尽くされた音像こそが、聴く者の心を瞬時に高揚させ、街を歩く歩幅をわずかに広くさせた正体なのだ。

5人の声が溶け合い、ひとつの「祈り」に変わる瞬間

SMAPというグループが持つボーカルの魅力が、これほどストレートに、かつ力強く発揮された楽曲も珍しい。サビにおける5人のユニゾンは、個々の技術的な巧拙を超えた、一種の象徴としての強さを持っている。

彼らの歌声は、時に繊細で、時に泥臭い。しかし『Dear WOMAN』における彼らの声は、どこまでも明るく、澄み渡っている。一人ひとりの歌い出しがバトンのようにつながれ、サビで大きなうねりとなって重なり合うとき、そこには不思議なほどの説得力が宿る。

編曲の平田氏は、5人の声の特性を理解した上で、コーラスワークにおいても重層的な厚みを持たせている。メインボーカルの背後で鳴るハーモニーのレイヤーは、楽曲全体を柔らかく包み込み、威圧感のない「優しさ」を演出している。それは、聴き手に対して「頑張れ」と強いるのではなく、「そのままの君でいい」と静かに、しかし情熱的に伝えるための装置として機能していた。

言葉が紡ぐ「日本女性」への誇りある讃歌

作詞を手がけた麻生哲朗による言葉選びもまた、この楽曲を永遠のアンセムに押し上げた大きな要因だ。特にサビ頭の「Welcome ようこそ日本へ」は強烈なインパクトを残した。彼は、誰にでもわかる平易な言葉を使いながら、誰もが心のどこかで求めていた「自己肯定」というテーマを鮮明に描き出した。

「君はとても美しい」という呼びかけ。それは、容姿の美しさだけを指すのではない。日本という国に生まれ、日々の生活を懸命に、そしてしなやかに生きるすべての女性たちへの敬意。当時、鏡に向かう女性たちが、自分の髪を慈しみ、自分自身を愛おしく思えるような魔法を、この歌詞はかけていた。

「今日も君が君らしく」というメッセージは、それまでのJ-POPにおける恋愛ソングの常識を心地よく塗り替えた。他者との比較ではなく、自身のルーツや存在そのものを誇りに思うこと。その視点の転換こそが、2006年という時代の空気にフィットし、多くの共感を呼んだのである。当時、通勤や通学の電車の中で、あるいは深夜の部屋で、このフレーズに救われ、明日を信じる力を得た人は少なくないはずだ。

今も瑞々しく響き続ける理由

リリースから20年。音楽をとりまく環境も、私たちのライフスタイルも劇的に変化した。情報のスピードはさらに加速し、何が「正解」であるかを見失いそうになる瞬間も増えたかもしれない。しかし、この曲が持つ「曇りのない肯定」を思い出して欲しい。

あの春、日本中の街角で鳴り響いていたイントロは、今も私たちの記憶の中で色褪せることなく、黄金色の輝きを放っている。ふとした瞬間にこの曲を聴けば、あの頃の自分が抱いていた希望や、少しだけ背伸びをして歩いた街の感触が、昨日のことのように蘇ってくるだろう。

平田祥一郎が設計した緻密な音の壁と、麻生哲朗が綴った真っ直ぐな言葉。それらがSMAPという唯一無二のフィルターを通ることで、時代を越えて愛される普遍的なエネルギーへと昇華された『Dear WOMAN 。

すべての女性たちへ。そして、すべての生きる人々へ。この曲が放つ光は、これからも変わることなく、私たちの日常を優しく、そして力強く照らし続けていくはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。