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『部下に慕われる上司』は“頑張れ”と言わない。プロが明かす、部下が自ら動き出す「たった一言」の魔法のフレーズとは?

  • 2026.3.8
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

「良かれと思ってかけた『頑張れ』の一言で、部下が急に黙り込んでしまった……」。そんな経験はありませんか?

励ましのつもりが、なぜか相手を追い詰めてしまう。そこには、言葉そのものの意味以上に、受け手の心理状態が深く関わっているようです。

では、上司としてどんな言葉を選べば、部下の心に寄り添い、モチベーションを引き出せるのでしょうか?

人事やキャリア支援の現場で多くの相談を受けてきた、あゆ実社労士事務所さんに、部下との信頼関係を深める「声かけの正解」を詳しく解説していただきました。

励ましのつもりが「まだ足りない」に? すれ違いの背景

---部下のためを思って言った言葉が、なぜ逆効果になってしまうのでしょうか? 言葉選びの難しさを感じている上司も多いようです。

あゆ実社労士事務所さん:

「『頑張れ』という言葉は本来、励ましのつもりで使われるものですが、受け手の状況によっては響き方が大きく変わります。特に仕事の場面では、すでに本人が十分努力しているときほど、『まだ足りないと言われている』と感じてしまうことがあります。言葉そのものというより、『自分の状況が理解されていないのではないか』という感覚が生まれることが、違和感の背景にあるケースが少なくありません。

実際の職場でも、残業が続きながら案件対応に追われている部下に対し、上司が会議の最後に『もう少し頑張ろう』と声をかけたところ、本人は『これ以上どう頑張ればいいのだろう』と沈黙してしまうことがあります。あるいは、トラブル対応で気持ちが落ちているときに『次は頑張れ』と言われ、『結果だけを見られている』と感じてしまうこともあります。

人事の現場で相談を受ける中でも感じるのは、部下が求めているのは必ずしも励ましの言葉ではなく、『状況を理解してもらえている』という実感であることが多いという点です。努力の途中にいる人ほど、評価よりもまず共感や状況理解を求めていることがあります。

そのため企業側としては、励ましの言葉を選ぶ前に、まず『今どんな状態なのか』を知ろうとする姿勢が重要になります。『最近かなり忙しそうだけど大丈夫?』と一言添えるだけでも、受け止め方は大きく変わります。言葉の強さよりも、相手の状況を理解しようとする関係性そのものが、結果的にモチベーションを支える土台になるのだと思います。」

その「頑張れ」は危険信号! 注意すべき2つの状態

---特にこの言葉を使ってはいけないタイミングや、相手の状態はあるのでしょうか?

あゆ実社労士事務所さん:

「『頑張れ』という一言が、部下の表情をすっと曇らせる瞬間があります。

この言葉が逆効果になりやすいのは、主に二つの状態のときだと感じています。一つは、すでに限界近くまで消耗しているとき。もう一つは、何をどう頑張ればよいかが自分でもわかっていないときです。前者は努力量の問題ではなく、方向性や優先度の整理が必要な状態。後者は具体的な行動指針を求めている状態です。どちらに対しても、『頑張れ』という言葉は答えになりません。

また、失敗やミスの直後というタイミングも要注意です。本人がすでに自分を責めているところに『次は頑張れ』と言われると、励ましではなく追い打ちに感じられることがあります。

人事面談で、営業数字が出せずに落ち込んでいた中堅社員が『上司に『もっと頑張れ』と言われるたびに、自分が否定されているような気持ちになる』と話してくれたことがありました。その上司に悪意はなく、どう声をかければいいかわからなかったというのが実情でした。

企業側や管理職層が意識したいのは、『言葉の内容』だけでなく『タイミングと相手の状態』です。声かけの前に、相手が今『走れる状態』なのか、『立ち止まっている状態』なのかを見極める一手間が、信頼関係を大きく左右すると思っています。」

「頑張れ」の代わりに何と言う? 今日から使える魔法のフレーズ

---「頑張れ」を封印した場合、具体的にどんな言葉をかければよいのでしょうか? つい言葉に詰まってしまいそうです。

あゆ実社労士事務所さん:

「『頑張れ』という言葉を封印したとき、上司が最初に感じるのは『では何と言えばいいのか』という戸惑いです。その戸惑いを解消するために、私が実務の中で効果的だと感じてきた声かけの型をご紹介します。

最もシンプルで効果的なのは、『見ていた』ことを伝える一言です。『あの件、大変だったね』『先週のプレゼン、準備していたの伝わっていたよ』といった言葉は、結果ではなくプロセスを承認するメッセージになります。人は『見てもらえている』と感じるとき、自然と次の一歩を踏み出せることが多いと感じています。

もう一つは、『一緒に考える姿勢』を見せる声かけです。『何か引っかかっていることある?』『今、何が一番しんどい?』と問いかけることで、部下は『解決を押し付けられている』ではなく『一緒に向き合ってもらえる』と感じやすくなります。

あるチームリーダーが、口癖のように『頑張れ』を言っていた習慣を変えて『今週どうだった?』という問いかけに切り替えたところ、部下から『初めてちゃんと話を聞いてもらえた気がした』という言葉が返ってきたという話を聞いたことがあります。

声かけは技術ではなく、『相手への関心』が言葉に乗るかどうかだと思っています。企業側には、管理職がそうした関心を持てる余裕を作ることも、組織づくりの一部として意識してほしいと感じています。」

「言葉」を変えれば「関係」が変わる

つい口癖のように使ってしまう「頑張れ」という言葉ですが、部下が本当に求めているのは、もっと手前の「理解」や「共感」であるという指摘には、ハッとさせられるものがあります。

大切なのは言葉巧みなテクニックではなく、「あなたのことを見ているよ」という関心を伝えること。明日からのコミュニケーションでは、まず「今週どうだった?」と、相手の話に耳を傾けるところから始めてみてはいかがでしょうか。


監修者:あゆ実社労士事務所

人材育成・キャリア支援を軸に約10年の実務経験を持つ、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント。 IT企業の人事として、新卒・若手育成、研修設計、評価・キャリア支援の仕組みづくりに携わる一方、個人では企業や個人に向けたキャリア相談・人事支援を行っている。 これまでに累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1制度設計や面談シートの設計、育成施策の言語化を支援。 近年は生成AIを活用した業務設計・人事業務の効率化にも注力し、「現場で使えること」を前提にしたAI活用の伴走支援を行っている。