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マンション管理の「未収金ゼロ」を死守した凄腕担当者→彼が異動した途端…理事会が直面した“思わぬ落とし穴”

  • 2026.3.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わってきたマンション管理士のライターS.Kです。

分譲マンションの運営において、管理費の滞納は多くの管理組合が直面する悩ましい問題の一つです。滞納を防ぐために熱心に対応してくれる管理会社の担当者は、居住者にとって非常に頼もしい存在といえるでしょう。

今回は「未収金ゼロ」を死守し、高く評価されていたある凄腕担当者の事例から、属人的な対応に依存するマンション管理の危うさを解説します。

未収金ゼロを死守する担当者と過剰な対応

分譲マンションにおける管理費滞納への督促は、会社によって順序は異なるものの一般的な流れが存在します。1ヶ月目で書面を送り、2ヶ月目で電話連絡を行い、3ヶ月を超えると訪問や内容証明郵便へ移行するケースが一般的です。

区分所有法(マンションのルールを定めた法律)上は、管理費の滞納を理由として競売を申し立てることは法的に認められた手段です。しかし実際には、費用対効果の問題から単独での競売に至るケースは稀です。他の住宅ローン滞納等による任意売却や競売の過程で、結果的に未収金が回収されるパターンが大半を占めます。

私の知る、あるフロント担当者は、口座引き落としエラーが判明した時点で即座に滞納者へ電話連絡を入れていました。そして翌月の理事会の収支報告までに必ず銀行振込をさせて、未収金ゼロを死守していたのです。

異動で浮き彫りになった属人化の限界

この徹底した対応により、理事会からは「最高の担当者だ」と非常に高く評価されていました。しかし会社視点で見れば、これは明らかに個人の自己犠牲と熱量に依存した過剰なサービスであったといえます。

この担当者が異動になる際、後任への引き継ぎにおいて過剰な督促業務が大きな壁となりました。個人の熱量に依存した特別運用は継続不可能と判断され、会社としてその対応を廃止することになったのです。

これは前任者が悪いわけでも、後任者が能力不足なわけでもなく、属人的な対応に依存して仕組み化を怠ったことが根本原因といえるでしょう。一人の優秀な担当者に甘えることは、中長期的に見れば組織の脆さに直結するという実態を示しています。

個人の努力に頼らない安定した管理体制の構築

理事会は個人の努力に依存するのではなく、誰が担当になっても未収金の発生が防げる仕組みづくりを行うべきです。近年広がりつつある管理費保証サービスの利用などを検討し、安定した回収体制を整えるのも有効な手段といえます。

また、管理規約に基づく遅延損害金の厳格な請求も、実際の運用には理事会等の合意が必要ですが、強い滞納抑止力になります。良いマンション管理とは、120点を出せる一人のエースがいることではありません。

誰が担当になっても、安定して70点の合格点が出せる標準化された体制が整っていることだと理解する必要があります。お住まいのマンションで管理担当者の異動があった際は、引き継ぎのタイミングで理事会として督促業務のルールを改めて確認し、担当者個人に依存しない体制が整っているかをチェックしてみてください。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


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