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「冷蔵庫を見えない位置に隠したら…」図面では見た目◎も、後悔する人が続出する落とし穴【一級建築士は見た】

  • 2026.3.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「キッチンの生活感をなくしたくて、冷蔵庫を見えない位置に隠す設計にしました。最初は満足していたのですが、住み始めてから思った以上に使いづらくて……」

注文住宅では、キッチンをすっきり見せたいという理由で、冷蔵庫を壁の裏やパントリーの奥、袖壁の内側などに配置することがあります。たしかに来客時の見た目は整いやすく、LDK全体も洗練された印象になりやすいでしょう。

ただ、冷蔵庫は毎日何度も開け閉めする設備です。見た目を優先した配置が、日々の動作の小さなストレスにつながることがあります。

家事動線が長くなってしまった

冷蔵庫を隠す設計で起こりやすいのが、家事動線の遠回りです。料理中は、冷蔵庫から食材を出し、シンクで洗い、調理台で切り、加熱するという流れが何度も繰り返されます。

このとき、冷蔵庫だけが少し離れた場所にあると、たった数歩の差でも往復が増え、使いづらさを感じやすくなります。特に、朝食やお弁当づくりのように短時間で複数の作業を進める場面では、その差が大きくなりやすいものです。

図面上ではすっきり見えても、実際の暮らしでは「毎日何度も歩かされるキッチン」になってしまうことがあります。

料理中の人と動線がぶつかりやすくなる

冷蔵庫の位置は、料理をする人だけの問題ではありません。飲み物を取りに行く家族、作り置きをしまう人、子どものおやつを出す人など、意外と多くの人が使います。

そのため、冷蔵庫を通路の奥や狭い位置に隠すと、キッチンで作業している人と家族の動線が交差しやすくなります。結果として、「人が通るたびに少し避ける」「扉を開けると通れない」といった小さな不便が積み重なります。

生活感を隠したつもりが、家族みんなにとって使いにくい配置になってしまうのは、注文住宅で起こりやすい誤算の一つです。

冷蔵庫は“使いやすく置く設備”

キッチンを美しく見せたいという考え方自体は、もちろん自然なことです。ただ、冷蔵庫は電子レンジや炊飯器以上に使用頻度が高く、動線への影響が大きい設備です。

そのため、完全に隠すことだけを優先するよりも、「ダイニングから見えにくいが、キッチンからは取り出しやすい位置」を探るほうが、暮らしやすさにつながりやすいといえます。

たとえば袖壁で視線を切る、奥まった位置でも通路幅をしっかり確保する、といった工夫です。

見た目を整えることと、使いやすさを確保することは、必ずしも両立できないわけではありません。

キッチンは“見え方”より、“毎日どう動くか”で考える

注文住宅では、完成前のイメージが美しく見えるほど、その印象に引っ張られやすくなります。ですが、キッチンは写真映えよりも、日々の動きとの相性が重要です。

冷蔵庫を隠す設計で後悔しにくくするには、料理中の動きだけでなく、家族が同時に使う場面まで想定しておくことが大切です。来客時にきれいに見えることも魅力ですが、毎日使うのは住む人自身です。

「生活感をなくしたい」と思って選んだ設計が、結果として生活しにくさにつながることもあります。冷蔵庫は隠すべき存在として考えるのではなく、毎日無理なく使える場所にあるかどうかを、まず優先して考えたいところです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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