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居住者「夜中でも休日でも電話に出て」たった一人の“過剰要求”で破滅…マンション管理担当が語るクレーマーの末路

  • 2026.2.12
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産管理会社で10年以上の現場経験を持つ、ライターのS.Kです。

一般的な接客業であれば、理不尽な要求を繰り返す客に対して「お引き取りください」と拒絶する選択肢があります。しかし、私が身を置いていたマンション管理の現場では、その「伝家の宝刀」を抜くことが許されない構造的な問題が存在しました。

今回は、たった一人の過剰な要求によって現場担当者が疲弊し、静かに潰れていく業界のリアルな実情についてお話しします。

「お客様は神様」の呪縛と逃げ場のない構造

マンション管理業が他のサービス業と決定的に異なるのは、契約相手が「管理組合(区分所有者全員)」であるにもかかわらず、たった一人の居住者の感情が「契約解除の引き金」になり得る点です。

もしその一人が、理事会で「あそこの担当者は態度が悪い」と声を上げ、管理会社変更の方向に話が進んでしまえば、何十、何百戸分もの契約がまとめて白紙になります。実際に担当者に不満を持った一人の居住者が、理事長に立候補して理事会を主導し、本当に管理会社を変更してしまった事例もあります。

さらにマンション管理業は、一度契約すれば長く収益が続く「ストックビジネス」です。裏を返せば一人の機嫌を損ねるだけで、向こう十数年に入ってくるはずだった莫大な安定収益を一瞬で失うリスクと隣り合わせなのです。

会社からは契約の維持を求められ、居住者からは「管理会社を変えるぞ」というキラーワードを突きつけられる。その結果、解決の糸口が見えずに担当者がひたすら耐え忍ぶという、逃げ場のない消耗戦が常態化していたのです。

「弱み」を突かれる過剰要求への苦悩と現場の疲弊

現場スタッフを精神的に追い詰めたのが、居住者や理事会からの度重なるクレーム対応や過剰な要求です。「こっちは管理費を払っているんだぞ」という意識が強い居住者の中には、以下のような管理会社の業務範囲を大きく超えた要求を突きつける方もいます。

「地震でエレベーターが止まったので、今すぐに動くようにしてくれ」
「上の階からの騒音がうるさいから静かにさせてくれ」
「夜中でも休日でも電話に出るように」

もちろん、要求を言う側が常に一方的で理不尽なわけではありません。担当者の「手配ミス」や管理会社の対応の不手際などが引き金となり、居住者の不信感を招いてしまうケースがあるのも事実です。

しかし、ひとたびクレームが発生すると「金を払っている客」という立場から「不誠実な対応をしたお前が悪いんだろう」と長時間拘束され、人格否定に近い罵倒を受ける事態に発展することもありました。

終わりのない謝罪と過剰な要求の板挟みになり、静かに心を折られていく担当者が後を絶ちません。その結果、一部の対応に時間を奪われ、本当にケアすべき大多数の良識ある居住者への業務に、支障をきたしてしまうのが実情なのです。

「社員を守る」へ潮目は変わった。契約解除のリスク

しかし近年、業界の潮目は劇的に変わりつつあります。深刻な人手不足と「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への意識の高まりにより、多くの管理会社は「契約維持」よりも「社員の保護」を優先する経営方針へと舵を切っています。

過度な要求や威圧的な言動が続くマンションに対しては、管理会社側から「契約更新のお断り」を通告する事例が急増しています。「お客様は神様」の時代は終わり「社員が辞めるくらいなら、そのマンションとの契約を切る」という合理的な経営判断が当たり前になりつつあるのです。

「うちは客だぞ」とふんぞり返っていると、ある日突然、管理会社から三行半を突きつけられるかもしれません。次の委託先が見つからない「管理難民」にならないためにも、私たち居住者は「選ばれる側」でもあるという自覚を持つ必要があります。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


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