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セルフレジで『精算忘れ』した人の“末路”…→うっかりだったとしても「窃盗罪」になる?弁護士「書類送検される可能性」

  • 2026.2.13
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

近年、スーパーやドラッグストアで当たり前になったセルフレジ。自分のペースで会計ができ、レジ待ちのストレスも軽減される便利なシステムとして、私たちの生活にすっかり溶け込みました。

しかし、「スキャンしたつもりが反応していなかった」「家に帰ってから未精算の商品に気づいた」――そんな「うっかりミス」が、もしも「窃盗罪」と疑われたらどうなるのでしょうか?「まさか自分に限って」と思うかもしれませんが、一歩間違えれば思わぬ事態に発展する可能性もゼロではありません。

今回は、弁護士の寺林智栄先生に、セルフレジでの未精算が発覚した場合の警察・検察の判断基準から、その後の手続き、さらには帰宅後に精算漏れに気づいた際の正しい初動対応まで詳しく解説していただきました。

セルフレジで「うっかり未精算」、これって窃盗罪? 

---セルフレジで精算漏れがあった場合、「うっかりだった」と主張しても、窃盗罪に問われることはあるのでしょうか? 警察や検察は、何を基準に「盗むつもり」を判断するのですか?

寺林智栄さん:

「セルフレジで『スキャンしたつもりが反応していなかった』と供述した場合でも、警察・検察が『不法領得の意思(盗むつもり)』があったかどうかを判断する基準は、単なる本人の申告だけではなく、客観的な状況証拠と行動の不自然さです。

まず刑法上、窃盗罪成立の要件には(1)他人の財物であること、(2)その占有移転を侵害する意思、(3)不法領得の意思が必要とされています。つまり『他人の物を自己の支配下に置き、利用・処分する意思(=盗む意思)』が認められなければ窃盗罪は成立しません。

具体的な判断ポイントとしては次のようなものが挙げられます。

1 精算漏れ商品の状況・割合
未精算の商品がごく少数であるのに他の商品は適切にスキャンされている場合、故意に特定商品だけを通さなかった可能性が疑われやすくなります。逆に買い物点数が多く、長時間かけて操作していたにもかかわらず一部の商品の精算漏れを見落とした可能性があるような特殊事情では、故意が否定され無罪判断例もあります(奈良地裁判決など)。

2 バッグやカートへの商品の入れ方
未精算商品が他の精算済み商品と混ざっておらず、明らかに意図的に他の商品とは別に扱われていたり、防犯カメラ映像でスキャン動作をせず直接バッグに入れる動作があると、故意の推認材料になります。単に誤ってバーコードを読み取れていなかったという説明との整合性が重要です。

3 行動の不自然性・一貫性
『スキャンしたつもり』供述の合理性を裏付ける要素(たとえば、バーコードの状態や操作ログ、レシート内容、防犯カメラ映像)は重視されます。説明が不合理、不自然、または矛盾する場合、捜査機関は『意図的だった』と推認しやすくなります。例えば、バッグやカゴの配置、別の商品との差異、店内の行動の流れなどです。

4 常習性・前科前歴
過去に同様の行為がある場合や、同一人物が複数回同様の未精算を繰り返している事実が判明した場合、不法領得の意思があったと評価されやすくなります。

これらの客観的事情を総合して、検察官は『うっかりを装った故意かどうか』を評価します。単なる申告だけでなく、行動や状況全体が故意説と合理的に一致するか否かが大きな判断基準となります。過去の判例でも、具体的事情の合理性を重視し、『本当に精算漏れである可能性が社会通念上あり得る』と認められれば、故意(不法領得の意思)は否定される方向で判断された例もあります。」

未精算が発覚したらどうなる? 逮捕・前科は避けられるのか

---もしセルフレジで未精算が発覚して店員に声をかけられた場合、その後の手続きはどう進むのでしょうか? 逮捕されたり、前科がついたりする可能性はありますか?

寺林智栄さん:

「セルフレジで未精算商品が発覚した場合、声をかけられるタイミングによって手続の流れは異なります。

まず、店外に出た直後に店員から声をかけられたケースでは、現行犯性が問題となります。多くは店舗内の事務所で事情聴取が行われ、警察が呼ばれますが、被害額が少額で、犯行態様が軽微、身元が確認でき、逃亡や証拠隠滅のおそれが低い場合には、逮捕されずに任意同行・任意取調べとなるのが通常です。その後、被害店舗と示談が成立し、警察判断で微罪処分(検察送致なし)となるケースも少なくありません。

一方、防犯カメラ映像をもとに後日警察が自宅を訪問するケースでは、すでに証拠が整理されているため、任意での事情聴取を経て書類送検される可能性が比較的高くなります。ただし、この場合でも多くは在宅事件として処理され、被害額が少額・初犯・反省や弁償がなされていれば、検察官が不起訴処分(起訴猶予)とすることが一般的です。よほど悪質で反復性がない限り、後日訪問だからといって直ちに逮捕されるケースは多くありません。

前科がつくかどうかは『起訴され有罪判決を受けたか』で決まります。不起訴や微罪処分であれば前科はつきません。ただし、前歴(捜査歴)は残ります。

示談金の相場感については、商品代金の弁償に加え、迷惑料として数千円〜数万円程度が多く、被害額が数百円〜数千円の軽微事案では、1万円前後で収まる例も珍しくありません。ただし、金額は店舗の対応方針や事案の悪質性により幅があります。」

帰宅後に「未精算」に気づいたら? 最もリスクの低い初動対応とは

---自宅に帰ってからセルフレジでの未精算に気づいた場合、どのような対応を取るのが最も良いのでしょうか?「黙っておく」のは危険ですか?

寺林智栄さん:

「セルフレジ利用後、帰宅してから未精算の商品に気付いた場合、『黙っておく』ことは最もリスクの高い対応です。

結果として、防犯カメラ映像などから後日発覚すれば、『気付いたのに返さなかった』と評価され、不法領得の意思を補強する事情として扱われかねません。重要なのは、気付いた時点で、占有を継続する意思がなかったことを客観的に示す初動対応です。

まず原則として有効なのは、できるだけ早く店舗に連絡することです。電話で『帰宅後に未精算商品があったことに気付いた』『すぐ返却・精算したい』と伝え、店側の指示を仰ぐのが無難です。連絡日時や担当者名は控えておき、通話履歴など客観的証拠が残る形が望ましいでしょう。

次に、商品を無断で持参して店に行く行為は注意が必要です。誠意の表れではありますが、店側の判断次第では、その場で警察を呼ばれる可能性も否定できません。事前連絡なしに訪問するよりも、必ず連絡を入れたうえで指示に従う方が、トラブル回避の観点から安全です。

また、状況が不安な場合や、既に店舗側が強硬な対応を示している場合には、早期に弁護士へ相談することも有効です。弁護士を通じた連絡や返却・弁償は、『隠す意思がなかった』『法的に適切な対応を取ろうとしていた』ことを示す有力な材料になります。」

「うっかり」でも知らんぷりはNG! もしもの時は「早期の客観的な対応」が鍵

キャッシュレス決済の普及とともに、セルフレジの利用は私たちの日常に欠かせないものとなりました。その便利さの裏には、「スキャン漏れ」という思わぬ落とし穴が潜んでいることも。そして、「うっかり」と「故意」の線引きは、本人の主張だけでなく、客観的な状況証拠によって判断されることが、寺林先生のお話から分かりました。

もしセルフレジで未精算の商品が発覚した時、あるいは自宅に帰ってから気づいた時、最も重要なのは「知らんぷりをしないこと」。慌てず、誠実かつ客観的な証拠を残す形で対応することが、疑いを晴らし、事態を悪化させないための鍵となります。

不安に感じた場合は、早めに店舗に連絡し指示を仰ぐ、あるいは専門家である弁護士に相談するなど、適切な初動対応を心がけましょう。そうすることで、私たち自身を不本意なトラブルから守ることができます。


監修者:寺林智栄
2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・解説を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位を獲得。読んだ方にとってわかりやすい解説を心がけています。


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