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新築購入も「南向きなのにカーテンは閉めてる」入居後、30代夫妻を襲った“予想外の誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.2.11
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「せっかく高いお金を払って南向きの土地を買ったのに、まさかこんな生活になるとは思いませんでした…」

そう語るのは、住宅街に新築したMさん(30代)夫妻。

相場より10%以上高い坪単価を払い、日当たりの良い南向きの土地を手に入れました。リビングには光がたっぷり入るよう、大きな窓を壁一面に配置したのです。

しかし入居後、待っていたのは「道路を行き交う人々からの視線」でした。リビングが道に面しているため、外からの目が気になり、結局一日中厚手のカーテンを閉め切ることに。

日当たりを求めて買ったはずの土地で、日中も照明をつけて暮らすという状況に直面してしまったのです。

プライバシーを守るための予定外の出費

視線を遮るため、Mさんは後付けで高さ2mの目隠しフェンスを設置することにしました。しかし、南側一面を覆うフェンスにかかった費用は、工事費込みで約50万円にものぼりました。

さらに、フェンスを立てたことで今度はリビングに圧迫感が生まれ、開放感に影響が出てしまいました。「高い土地代」に「高い外構費用」を上乗せした結果、フェンスに囲まれた少し窮屈な空間になってしまったのです。

南向きの窓と室温の上昇

気になる点は視線だけではありません。南側に設けた大きな窓は、夏場には室温を上昇させる要因になることもあります。

昨今の暑さにおいて、南からの強い直射日光は室温を急上昇させかねません。遮熱性能の高いガラスを使っていても、窓の面積が大きければ限界があるのです。

Mさんの家では夏場のエアコンがフル稼働となり、電気代は予想の1.5倍にまで膨らんでしまいました。

冬の暖かさを求めて作った南向きの窓が、夏の冷房効率を下げてしまうこともあるという、設計上のバランスの難しさを感じる事例といえます。

そこで出てくる「あえて北向き」という選択肢

最近は、あえて北向きや北道路の土地を選ぶ人もいます。

理由は、南向きの「光の強さ」が、必ずしも暮らしの快適さに直結しない場面があるからです。

ただし、北向きにも弱点はあります。大切なのは「北向きが一番」「南向きは良くない」と決めつけるのではなく、メリットとデメリットをセットで理解して選ぶことです。

北向き特有のメリット・デメリット

メリット

・視線と外構コストを抑えやすい
北道路は南側に庭やLDKを取りやすく、道路からの視線を外しやすい傾向があります。結果として、南向きで起きがちな「目隠しフェンスの高額化」を避けられることもあります。

・光が安定し、室内が落ち着きやすい
北側の光は直射ではなく拡散光(反射して届く柔らかい光のこと)で、影が強く出にくいのが特徴です。アトリエや書斎のような「均質な明るさ」が作りやすいといえます。

・土地の価格差を性能や内装に回しやすい
条件によりますが、南向きより価格が抑えられるケースがあり、その分を断熱や窓、外構などに投資できる余地が生まれます。

デメリット

・冬の暖かさは設計で補う必要がある
南面からの日光を取り入れにくくなるため、断熱性能や暖房計画の重要度が上がります。

・採光計画が甘いと室内が暗く感じやすい
北向きでも明るい家は作れますが、窓の配置などが適切でないと、日中でも照明に頼ることになりかねません。

・湿気対策に配慮が必要な面がある
北側の壁や部屋は乾きにくい条件になりやすいため、通風や換気、外壁材などの計画を丁寧に行う必要があります。

「土地の向き」と「明るさ・快適さ」は比例しない

Mさん夫妻の事例が教えてくれるのは、「南向きだから安心」という固定観念にとらわれすぎないことの大切さです。

住みやすさを決めるのは方位そのものではなく、周囲の環境を読み解いた配置計画といえるのではないでしょうか。

道路からの視線、隣家の窓の位置、季節ごとの太陽の高さ。これらを総合的に見て初めて、窓の大きさや場所、外構の必要性が決まります。

「日当たりが良い」という言葉の表面だけを信じる前に、一度立ち止まって考えてみてください。本当に欲しいのは「南向き」という条件ではなく、カーテンを開けてのびのびと過ごせる自由なのかもしれません。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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