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妻「本当に、ごめんなさい…」42歳夫の大型SUVを擦ってしまい…夫は許したが、彼女が告げた“残酷な真実”

  • 2026.2.3

 

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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

友人のKさん(男性)が「少し前の話だけど……」と語ってくれたのは、約1年半前に購入した大型SUVを巡る事件でした。購入して間もない頃、妻が子どもの通院時に車をこすってしまったのです。すぐに修理できる傷でしたが、妻は「もう運転しない」と宣言。

その真意は、事故への恐怖ではなく、夫への深い罪悪感でした。車選びで見落としがちな「心のサイズ感」について考えさせられる実体験エピソードです。

夫婦間の「ボタンの掛け違い」

「あの時の妻の顔、今でも忘れられないんだよね」

先日、友人のKさん(42歳男性・会社員)と久しぶりに車談義をしていた時、彼が「もう1年くらい前の話になるんだけどさ」と、少し懐かしむように語り始めました。彼が話してくれたのは、1年半前に購入した念願の大型SUVを巡って起きた、夫婦間の「ボタンの掛け違い」についてのエピソードです。

事の発端は、車が納車されて数ヶ月が経った頃のこと。Kさんが仕事から帰宅すると、家の中が異様に静まり返っていました。いつもなら子どもたちの声で賑やかな時間帯です。不思議に思いながらリビングに入ると、そこには青ざめた顔で立ち尽くす妻の姿がありました。彼女は消え入りそうな声で、こう告げたそうです。

「本当に、ごめんなさい……。病院の駐車場で、車、こすっちゃったの」

慌ててKさんが確認すると、左リアのバンパーに白い線傷が入っていました。しかし、ボディ自体が大きく凹んでいるわけではなく、コンパウンドで磨けば目立たなくなる程度のものです。

「子どもの看病で慌てていたんだから仕方ないよ。怪我がなくてよかった、すぐ直るから」と、Kさんは友人の私にも話すような軽い口調で、妻を慰めたそうです。

ところが、妻の表情は晴れません。それどころか、俯いたまま震える声でこう言ったのです。

「もう、運転するのは無理。怖くて乗れない」

あれほど日常の足として車を必要としていた妻が、なぜ一度の軽微なミスで「運転拒否」を宣言したのか。Kさんは当初、妻が事故のショックで臆病になっているだけだと思いました。しかし、その言葉の裏には、夫であるKさんが想像もしなかった切実な理由が隠されていたのです。

「沈黙」が招いた誤算

話を掘り下げていくと、そもそも車を購入した時点で、すでに「予兆」があったことが分かりました。

Kさんにとって、その大型SUVは独身時代からの強い憧れでした。国産のファミリーカーよりもひと回りほど大きく、頑丈なボディ。子どもが小学生になり、家族でキャンプに行く機会が増えたことを理由に、Kさんは購入を決意しました。

「これだけ大きければ安全性も最強だし、荷物も積み放題だ。家族にとっても最高の車になるはずだよ」

ショールームで熱弁するKさんに、妻は「あなたがそこまで言うなら」と同意してくれたそうです。Kさんはその言葉を「妻も気に入ってくれた」と解釈し、契約書に判を押しました。

「でも、今思えばあれは同意じゃなかったんだよな……」とKさんは当時を振り返ります。

妻は内心、「こんなに大きな車、私に運転できるの?」という強烈な不安を抱えていました。それでも反対しなかったのは、Kさんが少年のように目を輝かせていたから。「私の不安で、夫の夢に水を差したくない」という、彼女なりの配慮だったのです。

その優しさに甘え、Kさんは「慣れれば大丈夫」という根拠のない楽観で、妻の不安を見過ごしてしまっていました。その結果が、納車から数ヶ月後の「事件」へと繋がっていくのです。

「早く診てもらわないと」焦りが生んだ悲劇

事件が起きたのは、雨の降る平日夕方のことでした。子どもが高熱を出し、妻が急いで小児科へ連れて行くことになりました。Kさんによれば、子どもの苦しむ顔を見て、「一刻も早く病院へ」と妻の心には焦りが生じていたといいます。

向かった先の小児科の駐車場は、昔ながらの狭い区画です。普段乗っていたコンパクトカーなら何の問題もない場所ですが、Kさんが選んだ車は、全幅が1,900mmを超える大きなサイズ。日本の一般的な駐車枠は幅2,500mm程度が多いため、この車を停めると、左右にはドアを開ける余裕もほとんどありません。

しかも、雨で視界は最悪です。「ぶつけないように、でも早く停めないと」と、後部座席でぐったりする子どもを気遣いながら、妻は必死にバックモニターとサイドミラーを確認しました。しかし、焦れば焦るほど、枠いっぱいに膨らんだ車体の感覚は掴めなくなります。

「ここなら入るはず……」そう信じてハンドルを切った瞬間でした。

「ガリッ」

鈍い音が車内に響きました。確認すると、死角にあった低いブロック塀にバンパーが接触していました。傷自体は浅いものでしたが、購入直後から抱えていた「いつかぶつけるかもしれない」という不安が現実になった瞬間、妻の心は完全に折れてしまったのです。

「もう乗らない」の本当の意味

「誰でも失敗はあるよ。気にしなくていい」

あの夜、帰宅した妻の報告を聞いて、Kさんはそう優しく声をかけました。しかし、妻の目から溢れ出した涙の意味は、彼の予想とはまったく違うものでした。

「違うの。事故そのものが怖いんじゃないの」

Kさんの慰めに対し、彼女は涙を拭いながらようやく胸の内を明かしてくれたそうです。

「これは、あなたが一生懸命働いて買った『宝物』でしょう?私が乗ると、あなたの大切なものを傷つけてしまう気がして怖いの。そのプレッシャーに、もう耐えられない」

その言葉を聞いた瞬間、Kさんはハッとしたと言います。妻を追い詰めていたのは、運転技術への不安や狭い道への恐怖だけではありませんでした。「夫が大切にしている車を、自分のミスで台無しにしてしまう」という、愛情ゆえの重圧(プレッシャー)だったのです。

良かれと思って選んだ「安全で頑丈な車」が、皮肉にも妻の心をすり減らす原因になっていた。Kさんは自分の想像力の欠如を痛感し、深く反省したと語ってくれました。

「僕の車」から「二人の車」へ

「ごめん。僕の配慮が足りなかった」

妻の本音を知ったKさんは、素直に謝りました。そして、車をすぐに手放すのではなく、まずは妻の心の負担を取り除くことを提案したそうです。

「この車は僕だけの宝物じゃなくて、家族のための道具だよ。傷ついたら直せばいい。だから、二人が安心して乗れるように練習しよう」

それからの週末、Kさんは助手席に座り、徹底してサポート役に回りました。以前のように「感覚で慣れて」とは言いません。「この車は幅が広いから、ミラーがここに来たらハンドルを切ろう」「内輪差が大きいから、大回りで」と、具体的な目安を共有し続けました。

そうして二人でコミュニケーションを取りながらハンドルを握るうちに、妻の表情も少しずつ和らいでいったといいます。「失敗しても大丈夫」という安心感が、彼女の罪悪感をゆっくりと溶かしていったのでしょう。

憧れも大切だけど、家族の「足」だから

「そんな特訓から1年以上が経って、今はどうなっているかというと……」

Kさんはコーヒーを一口飲むと、嬉しそうに後日談を語ってくれました。

現在では奥様も、近所のスーパーや子どもの送迎に日常的に車を使えるようになり、平穏なカーライフを取り戻しているそうです。しかし、この一件を経て、ご夫婦の間にはある共通認識が生まれました。

先日、奥様が洗車をしながら、笑ってこう言ったそうです。

「だいぶ慣れたけど、やっぱり次はもう少し小さい車がいいな」

その言葉に、Kさんも苦笑いしながら頷くしかありませんでした。「そうだね、次は二人で試乗して決めよう」と。

車は単なる移動手段でもあり、時には所有する人の「夢」や「趣味」でもあります。しかし、パートナーと共有する以上、そこには「相手の気持ち」への想像力が不可欠です。スペックやデザインといったカタログの数値だけでなく、「運転席に座るパートナーのプレッシャー」まで想像できていたか。

友人のKさんが語ってくれたこのエピソードは、車選びにおいて、私たちがつい忘れがちな「大切な視点」を教えてくれている気がします。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。