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火星はかつて「北極海サイズの海」に覆われていた

  • 2026.1.26
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

現在の火星は、荒涼とした”赤い惑星”として知られています。

しかしスイス・ベルン大学(University of Bern)の最新研究は、30億年以上前の火星が、いまの地球の北極海に匹敵する巨大な海をたたえた「青い惑星」だった可能性を示しました。

決め手となったのは、火星最大の峡谷に残されていた意外にも“地球そっくり”な地形でした。

研究の詳細は2026年1月7日付で科学雑誌『NPJ Space Exploration』に掲載されています。

目次

  • 火星最大の峡谷で見つかった「河川デルタの痕跡」
  • 北半球を覆った「巨大な古代海」

火星最大の峡谷で見つかった「河川デルタの痕跡」

火星に水が存在したかどうかは、惑星科学における最重要テーマの一つです。

これまでにも、川の跡や水によって変質した鉱物などから、火星がかつて湿潤な環境だった可能性は指摘されてきました。

今回注目されたのは、赤道付近に広がる火星最大の峡谷群「マリネリス峡谷」です。

全長は地球のグランドキャニオンの約5倍にも達し、火星の地形史を読み解く重要な場所とされています。

マリネリス峡谷/ Credit: ja.wikipedia

ベルン大学を中心とする国際研究チームは、複数の火星周回機が撮影した高解像度画像を詳細に解析しました。

その結果、峡谷の縁に「地球の河川デルタと極めてよく似た堆積構造」を発見したのです。

これらは、川が海などの静かな水域に流れ込む際に、砂や礫が扇状にたまってできる「扇状デルタ」と解釈されました。

重要なのは、これらの堆積物が偶然できたものではなく、「水中でなければ形成できない構造」を持っている点です。

さらに、これらのデルタ状堆積物は、ほぼ同じ標高帯に揃って分布していました。

これは堆積当時に安定した水面、つまり「海岸線」が存在していたことを示唆します。

北半球を覆った「巨大な古代海」

チームは、これらの堆積物が約33億7000万年前に形成されたと推定しています。

この時期は、火星史の中でも水が最も豊富だったと考えられている時代にあたります。

注目すべき点は、デルタ状堆積物が見つかった標高が、火星北部低地と連続する高さに揃っていることです。

このことから研究者たちは、マリネリス峡谷に注いでいた川が、最終的に「北半球全体に広がる巨大な海」に流れ込んでいたと結論づけました。

その規模は、地球の現在の北極海と少なくとも同程度と推定されています。

しかも、この海は局所的な湖ではなく、火星北半球を覆うほど広大だった可能性があります。

これまでにも火星に海があったという説は存在しました。

しかし過去の研究は、地形の曖昧な特徴や間接的な証拠に依存していた面がありました。

今回の研究の特徴は、高解像度画像に基づき、実際の「海岸線」を地形として復元した点にあります。

現在、これらのデルタ地形は風によって削られ、砂丘に覆われています。

それでも、その輪郭ははっきりと残っており、火星がかつて水に満ちていた時代の“地形の化石”として、今も静かに語りかけているのです。

赤い惑星が「青かった」時代

私たちは火星を、乾燥し、生命とは無縁に見える赤い世界として思い描きがちです。

しかし今回の研究は、火星がかつて地球に近い「水の惑星」だった可能性を具体的な地形証拠で示しました。

川が流れ、海が広がり、安定した水面が長く存在していたとすれば、生命が生まれる条件が一時的にでも整っていた可能性は否定できません。

火星の過去を知ることは、生命が誕生し、そして失われていく条件を理解する手がかりにもなります。

赤い惑星に刻まれた青い記憶。

火星研究は、惑星の未来だけでなく、地球自身の行く末を考えるヒントも与えてくれているのかもしれません。

参考文献

An ocean the size of the Arctic once covered half of Mars, new images hint
https://www.livescience.com/space/mars/an-ocean-the-size-of-the-arctic-once-covered-half-of-mars-new-images-hint

Mars was half covered by an ocean
https://mediarelations.unibe.ch/media_releases/2026/media_releases_2026/mars_was_half_covered_by_an_ocean/index_eng.html

元論文

Scarp-fronted deposits record the highest water level in Mars’ Valles Marineris
https://doi.org/10.1038/s44453-025-00015-8

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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