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選び抜いた古物のひとつとして存在する家。ギャラリー『kankakari』主宰の鈴木良さんが暮らす、築100年の京町家。

  • 2026.1.26

豊かな暮らしを追求する人々を訪ねた&Premium147号(2026年3月号)「部屋を心地よく、整える」より、『kankakari』主宰の鈴木良さんの住まいを紹介します。

鈴木良さん、真実さんが暮らすキッチンから見るリビングの眺め。ソファは譲り受けたのち草木染の生地に張り替えている。床暖房を考慮し強さのあるオークを床材に。

時代を紡ぐ、家と人との懸け橋として住まう。

現代作家による器やオブジェから、土地の精神性や時代を感じる古物まで。古代から現代へとつながる、美を宿したものが集うギャラリー『カンカカリ』。主宰する鈴木良さん、真実さん夫妻が暮らすのは、100年の時を重ねてきた京町家だ。

良さんはパリで美術を学んだ後、長く現地で暮らしてきた。

「古い建造物に惹かれ、各地の建築を丹念に見て回りながら、古物を蒐集してきました。そんななかで出合ったのが、雑穀問屋だったこの建物でした」

京都への移住を決断し、改装計画は良さん自らが手がけた。2つの和室をつなげ、天井を抜くことで開放感のある居住空間を家の中心に。キッチンが壁づけとなったのは、換気扇が壁面にしか設置できなかったことから。良さんがコーヒーを淹れているのは可動式のカウンターだ。和紙を使った照明は、光の質と空間の相性のよさからセレクト。屋根裏部屋の入り口には梁を残し、茶室のにじり口ならぬ〝またぎ口〞に仕立てた。

「民家のノイズを消しすぎず、この家に調和するように改修しました。元々田舎に住みたかったので、梁や中塗りの土壁を露出にし、心身ともに落ち着く空間に。建具はほぼオリジナル。この家では不完全でミスマッチな部分も楽しんでいます」という。

家具は18世紀前後のフランスのダイニングテーブルに、古いウィンザーチェアやチャーチチェア。日本の水屋箪笥、インドの棚、そして真実さんの実家から譲り受けたソファなど、時間をかけて自然と集まったものがほとんど。保存食材や猫の餌、コード類など、見せたくないものは〈ライト アンド ウィル〉の樹皮籠や古い大工の道具箱などに収納。常に眺めていたい古物や現代作家の作品が、日常にそっと寄り添い、互いを引き立て合う。

「ヨーロッパでも築100年を超える家に住んでいましたが、古い家であるがゆえの制約を受け入れ、不便さが暮らしに馴染んでくるのも心地いいもの。ここに住み、その感覚がより明確になりました。今回改修したこの家に自分の個性は必要なくて、作品でもない。古物や作品のように、この家をいっとき守り、次世代へと引き継げればと思います」

インスピレーションの源になるアートブックなどが置かれた屋根裏部屋。「冬は暖かくなるこの部屋で過ごす時間も増えます」
水屋箪笥を上下に分けた本棚。双体道祖神や石斧、ローマ時代の残欠などが飾られている。
弥生土器、フランスの農具、朝鮮の古い壺、中国陶器、作家から贈られた作品など、大切なものが並ぶ棚はリビングの一角に。
「猫がいるため花ではなく果物で空間に色を」と真実さん。土鍋は石井直人の作。
ウォールナットを染めたカウンターが空間を緩やかに分けている。左手前が収納として活躍する〈ライト アンド ウィル〉の樹皮籠。グラス類はフランスと日本のものが中心。
籠や盆、箱に収まる姿も美しい。矢野義憲の箱には茶道具。中沢学の角盆に古い茶壺など(右下)、渡辺隆之の銀彩茶器(左下)、あけび蔓細工職人、中川原信一の籠に入った森岡成好の杯(中央下)。
ベッドルームとして使用している和室の改装はまだこれからのため、今回は紹介していない。水回りなどは離れにある。
出典 andpremium.jp
鈴木良/鈴木真実『kankakari』主宰/ギャラリー運営

東京、パリ、広島を経て、2022年京都市北区に『カンカカリ』開業。良さんは2025年開業の料理店『ムベ』改修設計も手がけている。

photo : Yoshiko Watanabe edit & text : Mako Yamato

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