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「細部までリアル」「ナチュラルな演技」第2話の終盤で“言いかけた言葉”…タイトルの続きを待ちたくなる【水曜ドラマ】

  • 2026.2.4
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『冬のなんかさ、春のなんかね』第2話(C)日本テレビ

『冬のなんかさ、春のなんかね』第2話を見て、公式サイトに載っている“普段着の恋の物語”というキャッチコピーがより愛おしく感じられた。それは、第1話だけでは見えなかった主人公・土田文菜(杉咲花)の恋愛観とそれにまつわる悩みの輪郭がくっきりとしたからかもしれない。本作は文菜の恋愛観に触れることで、自分の恋愛観について考えるドラマになりそうだ。

※以下本文には放送内容が含まれます。

必ずしも一致しない恋愛感情と身体のつながり

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『冬のなんかさ、春のなんかね』第2話(C)日本テレビ

第2話では文菜の恋愛だけでなく、“ロマンティック・アセクシャル”で他者に恋愛感情は抱くが身体のつながりは求めない古着屋の同僚であるエンちゃん(野内まる)、行きつけの喫茶店『イスニキャク』の店員であり、彼女に振られてしまった和地くん(水沢林太郎)の恋愛の悩みが描かれた。

第1話で描かれたように、文菜は彼氏がいたとしても、他の男性と寝ることに躊躇しない倫理観を持っている。文菜は、他者にそういった欲求を抱かないエンちゃんのことも、彼女に振られて絶望を漂わせる和地くんのことも、心から理解することができないのが本音だろう。

とくに、文菜とエンちゃんの恋愛観は対照的だ。好きであっても寝たくないエンちゃんと特別に好きでなくても寝れてしまう文菜。文菜は、エンちゃんとは逆の意味で恋愛感情と本能的な欲が一致していないのだ。

第2話では、文菜が小説の打ち合わせを通して、エンちゃんへの思いを吐露する場面があった。文菜は簡単に人を好きになってしまううえに、関係を持ててしまうからこそ、相手に真剣に向き合っていないのではないかと、自分を疑っていると語っていた。文菜はエンちゃんが羨ましいのだ。しかし、身体の関係を持てないことに悩んでいるエンちゃんの苦労も知っているからこそ、羨ましいという感情を抱くことに罪悪感を覚えている。

恋愛感情を持つもの同士が関係を持つことはある種当たり前の価値観とされてしまっている。だからこそ、そうではない性質が“ロマンティック・アセクシャル”という言葉でラベリングされているところがあるだろう。では、特別な恋愛感情がなくても一夜を共にできてしまう文菜はどんな言葉を拠り所にすればいいのか。また、関係を持たなくても好きでいられることはなんだか清廉な印象がある一方で、文菜のような価値観は一般的に忌避されがちな傾向がある。文菜自身もそれに自覚的だからこそ、自己否定しているところがありそうだ。文菜が和地くんにキレてしまったのも、別れを前に絶望してしまうほど、人をきちんと好きになる感覚がわからなくなってしまっているからかもしれない。

文菜が人に好きを返せない理由は?

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『冬のなんかさ、春のなんかね』第2話(C)日本テレビ

第2話で注目したいのは、文菜とゆきお(成田凌)の関係だ。第1話の冒頭で出会い、付き合い始めた2人は交際1年になる。クリスマスにはおしゃれなディナーを食べ、ゆきおからキラキラ光るイヤリングをもらう文菜。鏡として使えるようにスマートフォンの内カメラを見せてくれて、喜んでいる姿を写真に収めてくれるゆきお。ゆきおが文菜を見つめる視線には、愛おしくて仕方がないという感情が詰め込まれていた。そんなゆきおにとって、文菜に同棲を申し入れるのは、自然な流れだっただろう。ただ、ゆきおからの特別な好きに対して同じくらいの好きを返せない文菜にとって、ゆきおの思いは重荷になっているようだ。そして、ゆきおからの思いを重荷に感じてしまっていることに、罪悪感を持っているように見える。

文菜は人に同じくらいの好きを返せない理由を、自分のことが一番好きだからなのではないかと思いをめぐらせていた。ただ、身体のつながりを含めない恋愛感情を羨ましく感じたり、好きを返せない自分に罪悪感を感じたりしている文菜を見ていると、自分が一番好きなようには見えない。むしろ、自分の恋愛観を否定しながら、変わることができない自分に苛立ちを覚えているように見える。恋愛観を変えられないのに、そんな自分を受け入れられない。だから文菜は考えすぎてしまうのだろう。

文菜はなぜあのような恋愛観を身につけたのか。過去の恋愛で傷ついた経験があるのか、親や友人との関係によって身についた価値観なのか。第3話では、文菜の高校時代の彼氏・柴咲秀(倉悠貴)が登場するようだ。文菜についてもっと知ることができる回になるかもしれない。

ただ、本作の描きすぎない美徳を踏まえると、とくに原因が明かされないこともありえる。理由がないからこそ変えられず、だからこそ悩み考えすぎてしまう。そんな状態を描くほうが、実際に恋愛に悩む人からの共感を集めるだろう。

SNSでは、「人それぞれの恋愛を細部までリアルに描いてる」「文菜の満たされなさの正体は?ナチュラルな演技がうまい」など、多様な恋愛観が詩的に描かれていることを楽しんでいる人が多いようだ。

本作は、文菜の恋愛観を観察しながら、なかなか変えられない“普段着の恋”とはなんなのかを見つめる物語になるのかもしれない。第2話の終盤では、文菜がタイトルを回収するように、「なんかさ……。なんかね……」と口にした。文菜が自分の恋愛へのモヤモヤを言語化できるようになるには、もう少し時間がかかりそうだ。物語が終わる頃には、"なんかさ”と"なんかね”の後ろに続く言葉が聞けるのだろうか。


日本テレビ系 新水曜ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』毎週水曜よる10時~

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202