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300万円の日産『サクラ』、走行2,000kmの“ほぼ未使用”が半額に…中古車サイトの「異様な光景」なぜ?

  • 2026.1.8
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

日産の軽EV『サクラ』。静粛性や加速力は軽自動車の常識を大きく上回りますが、オプションを含めると新車価格は300万円に迫るモデルです。しかし現在、走行距離わずか数千キロの「使用感の少ない」車両が、150万円台で中古市場に並んでいます。新車の半額近いこの価格は、連日報じられる経営危機のせいなのか?

実はそこには、全く別の「市場のカラクリ」がありました。今回は、この異常な価格差の謎と、賢い買い方に迫ります。

ピカピカの車両が、総額150万円程度で…

「軽自動車のEVに総額300万円」この価格を見て、あなたはどう思うでしょうか。サクラは非常に完成度の高いEVですが、ナビや運転支援システムなどのオプションを追加していくと、価格は300万円を超えることも珍しくありません。たとえ国の補助金を使ったとしても、乗り出し価格は200万円後半になることが多く、かなり勇気のいる出費と言えるでしょう。

しかし、ふと中古車サイトを開いてみると、そこには目を疑うような光景が広がっています。走行距離はわずか2,000km〜4,000km。ようやく慣らし運転が終わった程度のピカピカの車両が、総額150万円程度でずらりと並んでいるのです。

新車で購入する場合の実質価格と比較しても、およそ100万円以上もの差。この衝撃的な安さを見て、昨今のニュースが頭をよぎる方も多いかもしれません。「日産の経営危機が原因で、投げ売りされているのでは?」と。

ですが、実態はそう単純な話ではないようです。そこには、企業の経営状態とは無関係な、中古車市場特有のある事情が隠されていました。

『会社がピンチ』報道とリンクする“怪現象”。ピカピカの最新モデルが、市場に溢れる理由

人員削減や業績悪化が報じられる中、タイミングを合わせたかのように起きている「150万円程度のサクラが急増している現象」。しかし、この価格崩壊の正体を紐解いていくと、経営危機というよりも、もっと構造的な「販売現場のめぐり合わせ」に行き着きます。

現在、市場に多く供給されているこの「お買い得車」たちの正体、それは「ディーラーのデモカー(試乗車)上がり」である可能性が高いと考えられます。

通常、自動車はイヤーモデルのように定期的な仕様変更が行われます。サクラも発売から数年が経ち、細かな改良や仕様変更が行われるタイミングを迎えました。販売店としては最新の仕様を顧客に見せる必要があるため、それまで活躍していたデモカーを手放し、新しい車両に入れ替える動きが出ます。

つまり、車に欠陥があるわけでも、会社が危機だから安く売っているわけでもありません。単に「状態の良い高年式車の供給が、需要を上回ってしまった」という、需給バランスの一時的なバグといえるでしょう。しかし、この在庫こそが、私たち消費者にとってのチャンスとなっているのです。

わずか1年で価値が半減?データが示す「EV残価」のシビアな現実

ただ、デモカーが放出されただけで、ここまで価格が下がるものでしょうか。実はもう一つ、価格を押し下げている決定的な要因があります。それが、電気自動車特有の「残価率のシビアさ」です。

一般的にガソリン車であれば、数千キロ走った程度ではこれほど値落ちしません。しかしEVの場合、その下落幅が急激になる傾向が見られます。

これには、中古EV特有の事情が大きく影響しています。統計的にも、バッテリー劣化への不安や充電インフラの不足、さらには技術進歩の速さから需要が伸びにくく、エンジン車よりも価格下落が速い傾向にあります。特に、購入後の性能に直結する「バッテリー劣化のリスク」は消費者にとって切実な問題であり、これが相場を押し下げる大きな要因となっている可能性があります。

加えてサクラは「軽自動車×EV」という、割り切ったコンセプトの車です。地方で長距離を走るユーザーには不向きなため、どうしても需要は短距離を走る都市部などの限定的な層に留まってしまいます。「需要は限定的なのに、供給は過多」。このアンバランスさが重なった結果、150万円台という驚異的な価格帯が形成されていると考えられます。

それでも「買い」と断言できるワケ。捨て値で手に入れる“高級車の走り”

「残価が低い」「需要が限定的」と聞くとネガティブに感じるかもしれません。しかし、視点を変えてみてください。これは裏を返せば、最初のオーナー(ディーラーなど)が、最も激しい値落ち部分を肩代わりしてくれた状態から乗り出せる、ということでもあります。

150万円という予算で手に入るのは、ただの軽自動車ではありません。最大トルク195Nmという、2.0Lクラスのクルマに匹敵する加速力を持ったマシンです。アクセルを踏んだ瞬間、音もなく滑るように加速していく感覚は、ガソリンエンジンの唸り声が響く同価格帯の軽自動車とは別次元の体験といえるでしょう。

「安く買い叩かれた車」ではなく、「本来なら300万円近い価値がある商品を、市場の歪みを利用して半値近くで手に入れた」。そう捉え直すと、これほど満足度の高い買い物はなかなかないはずです。

リセールを気にせず乗り潰す。「都市型コミューター」としての賢い使い道

もちろん、180km(カタログ値)という航続距離は、一台ですべてを賄おうとするなら心もとない数字です。また、これだけ値落ちが早い車ですから、数年乗って高く売ろうという「リセール重視」の考え方も捨てるべきでしょう。

しかし、この車を「生活圏内を快適に移動するための専用車」として割り切り、乗り潰すつもりで買うならどうでしょうか。

ガソリンスタンドに行く手間はなくなり、自宅でスマホのように充電する毎日。メンテナンス費用も抑えられ、維持費という面でも家計を助けてくれるはずです。「遠出はレンタカーか別の車で」と割り切れるライフスタイルの持ち主にとって、これほどコストパフォーマンスに優れた選択肢はありません。

市場の歪みを突く「賢い大人の選択」

「日産経営危機」という報道の裏でひっそりと起きていた、大量のデモカー放出とEV相場の下落。この二つが偶然重なった今こそが、サクラの本当の買い時といえるのかもしれません。

世間のニュースや「EVは損」という一般的な評判に惑わされず、目の前にある「150万円の極上車」という事実だけに目を向けてみてください。そして、300万円の新車を検討する前に、一度この賢い選択肢について考えてみてはいかがでしょうか。それは単なる節約ではなく、あなたの生活の質を確実に上げてくれる投資になるはずです。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析などを手がけ、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。


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