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不倫スキャンダルに隠された大きな事件……週刊誌記者・川口春奈“奏”が芸能界の裏の一面を暴く!?【スキャンダルイブレビュー/3~4話】

  • 2025.12.19

※本コラムは『スキャンダルイブ』第4話までのネタバレを含みます。

俳優・藤原玖生(浅香航大)の不倫スキャンダルから幕を開けた、ABEMAのオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』。主人公の咲(柴咲コウ)が代表取締役を務める芸能事務所・Rafaleには、記事を差し止められるような財力も、圧力をかけられるほどのパワーもない。

正攻法では勝てないことを悟った咲たちは、記事の“価値”を下げ、世の中を味方につけることに奔走する。たとえ不倫記事が出ようとも、世間が許してくれればいい。芸能事務所vs週刊誌の攻防戦は、いわば、世の中の空気を味方につけたら“勝ち”なのだ。

第1話と第2話では、画面越しにドラマを眺めている私たちのような“世間”が、勝敗の鍵を握っていたといっても過言ではない。

ところが第3話では、人気俳優の一介の不倫スキャンダルが、大物俳優の性加害疑惑と結びついていたことが明らかに。私たち“世間”の知らない、水面下で行われている権力争いや歪んだ構造を、『スキャンダルイブ』は詳らかにしてゆく。

玖生の不倫スキャンダルを『週刊文潮』にリークした人物は、咲が独立した大手芸能事務所・KODAMAプロダクションの明石(横山裕)だった。 かつて玖生の担当マネージャーだった明石は、萌香(齊藤なぎさ)をアテンドした岡田(駿河太郎)から写真を買取り、5年前に一度スキャンダルをもみ消していたのである。

それにもかかわらず、ふたたび玖生を売った背景には、咲たちの独立を快く思っていないKODAMAプロが、癒着関係にある『週刊文潮』を利用し、Rafaleを貶めようとしているのではないか。ひとたび世に出れば“内部告発”と受け取られかねない記事だが、芸能事務所と週刊誌の歪んだ関係性を問いただすため、奏(川口春奈)は裏取り取材に奔走する。

一方、玖生のスキャンダルは沈静化し、スペシャルドラマの降板や億単位の賠償金は、ひとまず回避された。しかしその裏で、玖生の続投を後押ししていたKODAMAプロダクション会長・児玉茂(柄本明)が死去する。

社長である蓉子(鈴木保奈美)の一強体制が完成したことで、業界の均衡は一気に崩れた。その結果、玖生はスペシャルドラマを降板。Rafale所属の他タレントたちの仕事も、次々とキャンセルされてしまった。

――このままでは事務所が潰されてしまう。 そう判断した咲は、蓉子との確執を認め、奏の取材に協力する。第1話冒頭で、舞台挨拶用の新しい衣装を届けるため、副社長の香川(橋本淳)にブレーカーを落とすように命じ、強引に時間稼ぎをした場面から感じていたが、なりふり構わずミッションを遂行する咲の仕事人ぶりは、やはりすさまじい!

記事公開後の初手として、世間を納得させるために玖生夫妻そろっての記者会見を提案。相手が未成年だったと報じられた際には、年齢を偽って飲み会に参加した萌香の居場所を突き止め、玖生に過失がなかったことを証言してほしいと交渉していた。そして今回は、事務所を圧力から守るため、最大の敵だった『文潮』の奏と手を組むのだ。

たった一つの記事で、芸能人や関係者の人生を狂わせかねない『文潮』、ひいては週刊誌という存在は、本作において明確に“悪”として描かれている。編集長の橋本(ユースケ・サンタマリア)が、セクシーな衣装をまとった女性のポールダンスを肴に酒を煽る場面は、その象徴的な演出と言っていいだろう。

しかし、RafaleとKODAMAプロの戦いで勝敗を分けるのは、その“悪”であるはずの週刊誌なのがおもしろい。絶大な影響力を持つ『文潮』を味方につけて有利な記事を出し、いかに世間を味方につけられるかが焦点となる。

そして明らかになったのは、KODAMAプロ所属の大物俳優・麻生秀人(鈴木一真)にかけられた性加害疑惑である。つまり、玖生の不倫スキャンダルは、麻生の疑惑を隠蔽するため、明石に利用されたのだ。

その事実を知った咲は、麻生の告発を決意。事件の被害者であり、「平山梨沙」という芸名でタレント活動をしていた莉子(茅島みずき)に接触する。だが皮肉にも、彼女は疎遠になっていた奏の妹だったのだ。

華やかな芸能界の裏側を描く『スキャンダルイブ』が、業界に蔓延る性加害事件を扱うのは、宿命とも言えるだろう。残念ながら、芸能界における性加害被害は、もはやドラマの中だけの話……と割り切れるものではなくなった。昔からテレビ越しに見ていたタレントたちが告発を受け、表舞台から姿を消していく例も後を絶たない。

そして、こうした問題が取り沙汰されるたびに、世間の関心はどうしても「加害者側の芸能人」に向きがちである。しかし忘れてはならないのは、その裏に、莉子のような被害者が確かに存在することだ。

「ネットでもテレビでも、嫌でもあいつの顔が目に入る」「私にあんなことをしておいて、何もなかったみたいにスポットライトを浴びて笑っている。納得できるわけがないじゃないですか」泣きながら訴えかけた彼女の言葉は、これまで黙殺されてきた無数の声を代弁しているようにも感じられた。

「確かに芸能界には汚れた一面もある。でもほとんどのタレントは必死に努力をして、マネジメントサイドも全力を尽くしています」 「それでも、認められない。その孤独を私は理解しているつもりです」

絶縁状態だった莉子が被害者だと知り、麻生の件から手を引こうとする奏を、咲が説得する第4話。「芸能人=商品」という前提を踏まえつつも、世の中に容易く消費されてしまいがちなタレント一人ひとりの人生に、責任を持って伴走しようとする咲の覚悟に胸を打たれた。

その姿は、第1話で「私生活も含めてイメージを売る芸能人が、汚いことをして糾弾されるのは当然の報い」と言い放っていた奏のセリフと、どこか対をなしているようにも感じられるのだ。現実のほうが、ドラマよりもはるかに過酷な世界だろう。それでも、咲のように芯を持った業界人がいることを、願わずにはいられない。

『スキャンダルイブ』が真正面から向き合うのは、現実とも地続きのきわめて難しいテーマだ。いよいよ物語は最終局面へと入るが、どのような着地を迎えるのかは想像がつかない。それでも、エンターテインメントを享受する一人として、彼女たちの覚悟から、目を逸らしてはいけない気がする。

ABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』番組概要

トップページURL:https://abema.tv/video/title/90-2042 2025年11月19日から毎週水曜夜10時~無料配信

(明日菜子)

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