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22年前、ヒットメーカーが放った“素朴なCMソング” ジブリ制作CMと共鳴した“懐かしくて新しい一曲”

  • 2026.2.20
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

2004年2月。携帯電話の着信メロディが進化し、誰もが手元の小さな画面に夢中になり始めていた頃。便利さと引き換えに、私たちはどこか「かつてあった温もり」を無意識に探していたのかもしれない。

そんな折、テレビからふと流れてきた、どこか懐かしく、けれど瑞々しい響き。それは、あるクリエイティブな才能が結びついた、宝石のような一曲だった。

capsule『レトロメモリー』(作詞・作曲:中田ヤスタカ)――2004年2月4日発売

capsule(現・CAPSULE)によるこの楽曲は、単なる音楽作品という枠を超え、当時のリスナーの心に「日常の美しさ」を再発見させる特別な役割を担っていた。

削ぎ落とされた音色が映し出す「記憶の原風景」

『レトロメモリー』が持つ最大の魅力は、そのタイトルが示す通り、聴く者の記憶の蓋をそっと開けるような、抑制された美しさに集約されている。

中田ヤスタカが生み出すサウンドといえば、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅに見られるような、エッジの効いたデジタルサウンドを想像する者も多いだろう。しかし、この曲でcapsuleが提示していたのは、ラウンジ・ミュージックやボサノヴァの要素を巧みに取り込んだ、極めてオーガニックでラフな質感のポップスであった。

心地よいオーガニック調なサウンドと、跳ねるようなリズム。そこにボーカル・こしじまとしこの、体温を感じさせるフラットな歌声が重なる。

派手な装飾をあえて削ぎ落とすことで、メロディそのものが持つ「切なさと多幸感」が、より鮮明に浮かび上がっている。それはまるで、古いアルバムを開いたときに立ち上る埃の匂いや、冬の午後の柔らかな日差しをそのまま音にしたかのような、不思議な実感を伴う響きであった。

スタジオジブリが描き出した「おうち」という聖域

この楽曲を語る上で欠かせないのが、映像との深い結びつきである。『レトロメモリー』は、スタジオジブリが制作したハウス食品『おうちで食べよう。』シリーズのCMソングとしてテレビから流れてきた。

このCMアニメーションは、素朴なタッチで描かれた家族の日常が、見る者の心を温かく包み込んだ。「おうち」という、もっとも身近で、もっとも大切な場所。その普遍的な風景に、capsuleの描く「懐かしくて、どこか新しい」サウンドが見事に合致したのである。

アニメーションの中で描かれる何気ない生活。そこにこの旋律が重なった瞬間、私たちは自分自身の子供時代や、守るべき日常の尊さを、言葉ではなく感覚として受け取っていた。

映像と音楽が、互いの体温を分け合うようにして成立したこのコラボレーションは、当時の広告表現としても非常に高い完成度を誇っていた。

冬の終わりの空気に溶け出す、透明な祈り

『レトロメモリー』がリリースされた2月という季節。厳しい寒さと、春の気配をどこかに予感させる時期に、この曲の持つ「透明感のある温かさ」は驚くほど馴染んだ。

私たちは日々、多くの情報や喧騒の中で自分を見失いそうになる。けれど、ふとした瞬間に流れてくるこうした音楽が、散らかった心を整えてくれることがある。

「頑張れ」と背中を押すわけではない。ただ、隣に座って一緒に景色を眺めてくれるような、そんな距離感の優しさ。この曲を聴き終えた後に残る、微かな胸の痛みと充足感は、私たちが大切にしまっておくべき「心の記憶」そのものである。

時代は移ろい、街の景色も、音楽を聴く道具もすっかり変わってしまった。それでも、夕暮れ時のキッチンや、帰り道の冷たい空気の中でこの曲を聴けば、あの頃の自分が感じていた「確かな幸せ」を、いつでも昨日のことのように思い出すことができるだろう。

そんなふうに、誰かの人生にそっと寄り添い続ける一曲が、22年前の冬に確かに生まれていた。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。