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20年前、“熱血ドラマ”の主題歌を彩った“まっすぐな歌声” 「自分らしく」を貫く勇気をくれた“不屈の応援ソング”

  • 2026.2.13

2006年2月。トリノ冬季五輪の熱狂が日本中を包み込み、銀盤の上で舞う選手たちの姿に誰もが胸を熱くしていた。一方で、街のテレビからは、荒々しくも温かい「教育の現場」を描いたドラマの鼓動が聞こえていた。そんな、冷たい風と熱い情熱が同居していた季節にリリースされたのがこの一曲だ。

倉木麻衣『ベスト オブ ヒーロー』(作詞:倉木麻衣・作曲:徳永暁人)――2006年2月8日発売

曇り空を切り裂くような、まっすぐな歌声

1999年の鮮烈なデビュー以来、繊細なR&Bの歌姫として日本中を魅了してきた彼女。この楽曲を耳にしたとき、それまでの「ウィスパーボイス」のイメージを心地よく裏切る、芯の強さと躍動感に驚かされた人も多かったはずだ。

この曲は、高橋克典が主演を務めたTBS系ドラマ『ガチバカ!』の主題歌として書き下ろされた。かつてプロボクサーだった新人教師が、荒廃した高校を舞台に生徒たちと「ガチ」でぶつかり合う。そんな物語の温度感に、彼女のまっすぐな歌声は見事なまでに共鳴していた。

ドラマの舞台となった高校の屋上で、あるいは夕暮れの校庭で、葛藤を抱えた少年少女たちが走り出す。その背景に流れるこのメロディは、単なる劇伴を超えて、視聴者の心に火を灯す着火剤のような役割を果たしていた。

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2014年、TOKYO FM『Skyrocket Company』の公開生放送に出演した倉木麻衣(C)SANKEI

泥臭い情熱を包み込む「職人」のサウンド

楽曲の熱量を支えているのは、作曲・編曲を手がけた徳永暁人の手腕に他ならない。数々の伝説的なアーティストを支えてきた彼が提示したのは、極上のロック・ポップスだった。

1990年代から続く「Beingサウンド」の王道を継承しつつも、2006年という時代の空気に合わせて洗練されたアレンジ。そこには、ただ明るいだけではない、どこか切なさと隣り合わせの力強さが宿っている。

彼女がこれまで得意としてきた内省的なR&Bとは対照的に、外の世界へと力強く手を伸ばすようなサウンド。アーティストとしての彼女がさらなる成長を遂げ、より広い層へとその想いを届けるための進化だったとも言えるだろう。

ドラマには、NEWSの手越祐也(当時)や増田貴久らが出演しており、彼らが演じる瑞々しくも危うい若者たちの心情に、このサウンドが重なる瞬間は、今思い返しても胸に迫るものがある。

時代を越えて響き続ける、静かなる鼓動

今、私たちは当時よりもさらに複雑な社会を生きている。ドラマのような劇的な解決が難しい現実の中で、ふとこの曲が流れてくると、あの頃の自分が抱いていた純粋な衝動が蘇ってくる。

冬の厳しい寒さを突き抜けて、春の兆しを探し求めていた2006年の景色。そこには、彼女の歌声があった。たとえ世界がどれほど変わっても、自分の中にある「正解」を信じて走り続けることの大切さ。この曲が教えてくれたのは、完璧ではないヒーローの美しさだったのかもしれない。

冷たい風が吹く夜、ふと足を止めたとき。耳の奥で鳴り止まないこの旋律は、今も変わらず私たちの背中を、そっと、けれど力強く押し続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。