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20年前、世界的ギタリストと人気バンドがコラボした“異次元の衝突” ジャンルの壁を破壊した“本気の遊び心”

  • 2026.2.8

2006年1月。デジタル化が加速し、音楽の楽しみ方が多様な広がりを見せ始めていた頃。ロック界のレジェンドと、日本のヒップホップシーンを牽引していたカリスマたちが、ひとつの「実験」に挑んだ。それは、単なるコラボレーションという言葉では片づけられない、互いの魂をぶつけ合うような衝撃的な出会いだった。

HOTEI vs RIP SLYME『BATTLE FUNKASTIC』(作詞:RYO-Z,ILMARI,PES and SU・作曲:布袋寅泰 & DJ FUMIYA)――2006年1月25日発売

誰も予想しなかった“鋭利なギター”と“軽快なラップ”の融合

「この組み合わせ、一体どうなるんだ?」と、当時の音楽ファンが色めき立ったのを今でも鮮明に覚えている。日本が世界に誇るギタリスト・布袋寅泰と、自由奔放なスタイルでポップシーンを席巻していたRIP SLYME。一見すると対極に位置するような両者が、ひとつの楽曲の中で真っ向から対峙した。

この曲の核となっているのは、布袋寅泰の代名詞とも言える映画『新・仁義なき戦い。』のメインテーマ曲『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY』と、RIP SLYMEの代表曲『FUNKASTIC』だ。これらを「マッシュアップ」という手法で合成し、全く新しい息吹を吹き込む。それは大人の本気の遊び心が生んだ、スリリングな音楽体験だった

布袋寅泰が刻む、あまりにも鋭く、重厚なギターサウンド。そこにDJ FUMIYAが編み出すファンキーなトラックが絡み合い、4人のMCが代わる代わる言葉を叩き込んでいく。「カッコいい」という感情が、ジャンルという境界線を軽々と飛び越えていくような、圧倒的な高揚感がそこにはあった。

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2005年、トヨタ自動車新車発表会に登場した布袋寅泰とRIP SLYME(C)SANKEI

漆黒の闇を駆け抜ける、音と映像のシンクロニシティ

この楽曲を語る上で欠かせないのが、当時テレビから流れていたトヨタ「bB」のCMだ。漆黒のボディを揺らし、音楽と連動するようにイルミネーションを光らせながら夜の街を駆ける車の姿。その背景で鳴り響いていたのが、この『BATTLE FUNKASTIC』だった。

MTV JAPANとTOYOTAの企画によって生まれたこの作品は、単なるタイアップを超えた存在感を放っていた。音楽が映像を引き立て、映像が音の鋭さを視覚化する。まるで真夜中のドライブで感じる、あの独特の静けさと興奮が、そのままパッケージされているようだった

当時、この曲を聴きながら夜の街を見つめていた人たちにとって、日常を少しだけドラマチックに変えてくれる魔法の音だったのかもしれない。鋭いギターの音色が耳に飛び込んでくるたび、私たちは何かが始まるような予感に胸を躍らせていた。

鏡合わせのように存在する、ふたつの「対戦」の記録

面白いのは、この「戦い」にはもうひとつの側面が存在することだ。本作は“HOTEI vs RIP SLYME”名義で布袋側の作品としてリリースされたが、同日にはRIP SLYME側のシングル『Hot chocolate』のカップリングとして、タイトルを入れ替えた「FUNKASTIC BATTLE」が収録されている。

名義も“RIP SLYME vs HOTEI”となり、アプローチの異なるふたつのバージョンが同時に世に放たれた。これは、アーティスト同士が互いの才能を認め合い、徹底的にリスペクトを捧げながら競い合った証でもある。

どちらが主導権を握るかではなく、混ざり合うことでしか生まれない新しい輝きを追求する。そのストイックなまでの制作姿勢が、リリースから20年が経過した今聴いても、全く色褪せない鮮烈さを保っている理由なのだろう。時代を超えて響くのは、いつだって作り手の情熱が純粋に投影された音なのだ。

冬の冷たい空気さえも熱くさせた、永遠のアンセム

今、改めてこの曲を聴き返すと、当時の熱狂が昨日のことのように蘇ってくる。2006年という時代が持っていた、どこか強気で、それでいて新しいものに対して貪欲だった空気感。

それは、スマホの画面越しに全てを把握できる現代とは少し違う、もっと生々しくて、体温を感じるような興奮だった。『BATTLE FUNKASTIC』が鳴り響いた瞬間、冬の凍てつく空気は一変し、フロアのような熱気を帯びた。20年という月日は多くのものを変えてしまったけれど、この曲が持つ「予定調和をぶち壊す力」は、今も私たちの心に深く突き刺さったままだ。

あのギターリフが聞こえてくれば、いつだってあの頃の自分が目を覚ます。本気で遊び、本気で戦っていた大人たちの背中を追いかけていた、あの冬の夜へ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。