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22年前、孤独な夜に寄り添った歌声 10年という歳月が生んだ“美しき一曲”

  • 2026.2.7

2004年1月。デジタル化の波が静かに、でも確実に人々の生活を塗り替えていた頃。音楽を享受するスタイルも少しずつ形を変え始めていたが、それでも冬の街角には、誰かの心に寄り添うような温かいメロディがいつも流れていた。

GLAY『時の雫』(作詞・作曲:TAKURO)――2004年1月28日発売

この楽曲は、彼らにとって記念すべきデビュー10周年イヤーの第1弾シングルとしてリリースされた。1994年に『RAIN』でデビューしてから、日本の音楽シーンの最前線を走り続けてきた彼らが、その節目に選んだのは、激しいロックナンバーではなく、どこまでも深く、静かに心に染み渡る壮大なバラードであった。

10年の月日が醸し出す「成熟」という名の響き

『時の雫』を耳にしたとき、まず印象に残るのは、繊細かつ重厚に編み上げられたストリングスの音色である。それまでの彼らが持っていたエネルギッシュなバンドサウンドの魅力に加え、オーケストレーションがもたらす広がりが、楽曲に深い奥行きを与えている。

一音一音が丁寧に置かれていくような感覚は、まさにキャリアを重ねたアーティストだけが表現できる「静かなる説得力」に満ちていた

特に、ヴォーカル・TERUの歌声には、それまでの力強さに加えて、包み込むような優しさと切なさが同居している。10年という歳月の中で、数え切れないほどのステージに立ち、多くのファンと想いを共有してきたからこそ出せる、温かみのある響き。

その歌声が、流麗な旋律と溶け合う瞬間に生まれる感情の波は、聴く者の心をゆっくりと、でも確実に解き放ってくれるような感覚を覚えさせる。

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2014年、「MTV VMAJ 2014」のレッドカーペットに登場したGLAY(C)SANKEI

ドラマの情景と重なり合う“記憶と再生”の物語

この楽曲は、釈由美子が主演を務めたテレビ朝日系ドラマ『スカイハイ2』の主題歌としても、多くの人の記憶に刻まれている。「おいきなさい」という印象的なフレーズとともに、生と死、そして残された者の想いを描いたドラマの世界観。

『時の雫』が持つ、失ったものへの愛惜と、それでも続いていく時間への希望。そのテーマ性がドラマの物語と見事に共鳴し、視聴者の涙を誘った。

当時、ランキングで初登場1位を記録したという事実は、単なる人気の証明ではない。この曲が持つ普遍的なメッセージが、いかに多くの人の「今」に必要とされていたかを物語っている。

時代が変わっても色褪せない“心の栞”のような存在

2004年当時は、まだCDショップへ足を運び、手に入れたばかりの歌詞カードを眺めながら音楽に没頭する時間が当たり前のように存在した。

そんな中で、この楽曲に込められたTAKUROによる繊細な言葉とメロディは、リスナー一人ひとりにとって、人生の特別な場面でそっと挟み込む「栞」のような役割を果たしていたのではないだろうか

あれから22年という月日が流れた。街の景色は変わり、連絡手段も、音楽の聴き方も様変わりした。

それでも、ふとした瞬間にこの曲を聴くと、あの頃の冬の空気感や、自分自身が抱いていた迷い、そして誰かを強く想った気持ちが、昨日のことのように鮮やかに蘇る。

降り積もる時間の果てに、今も輝き続ける雫

『時の雫』というタイトルが示す通り、時間は絶え間なく流れ、雫のようにこぼれ落ちていく。しかし、その一滴一滴の中には、確かに私たちが生きた証や、誰かと分かち合った温もりが封じ込められている。

派手な演出や一時的な流行に左右されることなく、ただ真っ直ぐに「心」を描き出したこの一曲。それは、デビュー10周年という通過点にいた彼らが、未来の私たちへと贈ってくれた、色褪せることのないギフトであったと感じる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。