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22年前、社会現象を巻き起こしたグループエースの“卒業ソング” 新しい一歩を照らした“魔法の合言葉”

  • 2026.2.1

2004年1月。街の至るところに大型のCDショップが立ち並び、最新のヒットチャートが時代を牽引していたあの頃。冬の乾いた風が吹く街角で、私たちの耳に飛び込んできたのは、驚くほど明るく、そしてどこまでも前向きなメロディだった。

モーニング娘。『愛あらば IT'S ALL RIGHT』(作詞・作曲:つんく)――2004年1月21日発売

モーニング娘。が国民的な社会現象を巻き起こし、時代を象徴するアイコンとして走り続けていた中でリリースされたこの楽曲。それは、ある一人の少女が「グループのエース」としての役割を終え、新たな旅立ちを迎える瞬間に贈られた、最高にハッピーで、少しだけ切ないギフトのような作品だった。

永遠のエースが残した、眩しすぎる季節

この曲を語る上で欠かせないのが、初期メンバーとしてグループを支え続けてきた「なっち」こと安倍なつみの存在だ。彼女にとって、モーニング娘。としてのラストを飾るシングルとなった。

当時の彼女たちは大所帯。テレビを点ければ姿を見ない日はなく、彼女たちが歌い踊る姿は、当時の少女たちの憧れそのものだった。安倍なつみという唯一無二の太陽が、グループの真ん中で輝いていた最後の季節。

別れを予感させる冬のリリースでありながら、楽曲のトーンは不思議なほどに晴れやかだ。それは、去り行く者への悲しみよりも、これから始まる新しい未来への祝福を優先した、グループらしい潔さの表れだったのかもしれない。

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2004年、舞台『おかえり』でミュージカル初主演をつとめた安倍なつみ(C)SANKEI

「上手い」よりも大切な、不器用な情熱のカタチ

この楽曲のプロデューサーであるつんくは、この曲を書いている最中にメンバーたちの姿を見つめ、ある確信を抱いたという。それは、「得意なこと」をそつなくこなすよりも、たとえ不慣れであっても「好きなこと」に全力でぶつかっていく姿こそが、何よりも美しいということだ。

大人になるにつれて、私たちはいつの間にか、効率や周囲の評価を気にして「得意なこと」ばかりを選んでしまうようになる。けれど、本当に心を揺さぶるのは、不器用ながらも真っ直ぐに大好きなものへと手を伸ばす、あの初恋のような情熱なのだ。

モーニング娘。のメンバーたちが、ステージの上で汗を流し、懸命に声を張り上げて歌う姿。その一途な美しさが、この曲のポジティブなエネルギーと見事に共鳴している。「愛あらば、大丈夫」というシンプルなメッセージが、単なる綺麗事ではなく、確かな手触りを持って届いてくるのは、彼女たちのひたむきな日々がそこに重なっているからだろう。

凍てつく街に響いた、背中を押す祈りの旋律

編曲を担当した小西貴雄によるサウンドメイクは、ホーンセクションの華やかさと、軽快なリズムが心地よく混ざり合っている。イントロが流れた瞬間に、どんよりとした冬の空がパッと晴れ渡るような、魔法のような高揚感。

そこに重なるのは、メンバーたちが織りなす力強い歌声だ。安倍なつみの卒業という大きな転換点を前に、グループ全体が一丸となって放ったエネルギー。その音の塊は、聴く者の心に潜む「未来への不安」を、そっと溶かしていくような優しさを秘めていた。

リリースから数日後、横浜アリーナで行われた彼女の卒業式。そのステージでこの曲が披露されたとき、会場を包んだのは涙だけではなかった。それは、「これから先も、きっと大丈夫」と互いに信じ合うような、温かな確信だった。

20年以上が経過した今、当時の熱狂を知る人も、新しく彼女たちの音楽に触れる人も、この曲のサビを聴けば自然と口角が上がる。

時代は変わり、音楽の聴き方も、アイドルという存在の形も変化した。それでも、「愛があれば、すべてはうまくいく」と信じることの尊さは、決して色褪せることはない。

寒い冬の夜、ふとこの旋律を思い出すとき、私たちの心にはあの頃のまっすぐな情熱が、小さく、けれど確かに灯るはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。