1. トップ
  2. 実家売却で“400万ダウン”「3,200万円は固い」その言葉を信じた50代男性の末路

実家売却で“400万ダウン”「3,200万円は固い」その言葉を信じた50代男性の末路

  • 2026.1.3
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々土地や建物の売却相談に向き合っている岩井です。

何かを売るとき、「まずは無料で見てもらおう」「とりあえず相場だけ知りたい」と考えたことはありませんか。車やブランド品など、身近なものならそれでも大きな問題にならないかもしれません。

ただ、不動産だけは話が別です。

なぜなら、売却価格がその後の人生設計に直結するケースが少なくないからです。

今日は、「無料査定で出た金額」をそのまま信じて動き出した結果、住み替え計画も老後設計も大きく狂ってしまった、ある売主様のエピソードをご紹介します。

最初は「順調そのもの」に見えた計画が、どこで、どうして崩れていったのか。その過程を、現場で実際に起きた出来事としてお伝えします。

相続した空き家を「住み替え資金」にするはずだった

今から3年ほど前のことです。私のもとに相談に来られたのは、50代の会社員男性Aさん。Aさんは、地方郊外にあるご実家を相続したばかりでした。

すでに空き家になっており、管理も負担になってきたため、売却を決意されたそうです。

「この家を売って、そのお金で都市部のマンションに住み替えたいんです。残った分は老後資金に回せたらと思っていて」

売却と住み替え、そして老後資金の確保。Aさんにとって、この不動産売却は人生の大きな節目でした。

「このエリアなら3,200万円は固いですよ」

Aさんが最初に相談したのは、大手不動産ポータルサイト経由で紹介された不動産会社でした。そこで担当者から言われたのが、こんな言葉だったそうです。

「このエリアなら、3,200万円はいけるでしょう。特に大きな問題もなさそうですし、この金額を前提に考えて大丈夫ですよ」

提示された金額は、Aさんの想定よりも高めでした。正直、少し不安もあったそうですが、「大手だし」「無料査定だし」という安心感もあり、その金額をほぼ確定価格として受け止めてしまいました。

そしてAさんは、その査定額を前提に動き始めます。

  • 住み替え先マンションに購入の申込み
  • 住宅ローンの事前審査を申込み
  • 売却益を自己資金として組み込んだ資金計画を金融機関に提出

すべてが、同時進行で進み出しました。

内見は入るのに、申込みはゼロ

販売が始まってから、最初の1ヶ月。内見(実際に現地を見ること)は、ぽつぽつと入ったそうです。ただ、購入申込みは1件も入りませんでした。

2ヶ月目に入る頃、Aさんのもとに、別の仲介会社からこんな指摘が入り始めます。

「正直、相場よりかなり高いです」「この条件だと、買い手はかなり慎重になりますね」

詳しく調べていく中で、Aさんはある事実に気づきます。最初に相談した大手不動産会社では、物件調査が十分に行われていなかったのです。

実際には、以下の点が査定時にほとんど考慮されていませんでした。

  • 接道条件(道路にどのように接しているか)が不利
  • 再建築時にかかる制限
  • 周辺の成約事例との価格乖離

本来であれば、事前に丁寧に説明されるべき内容でした。

200万円下げても、流れは変わらなかった

3ヶ月が経過しても、成約には至らず。Aさんは決断し、価格を200万円下げて再募集します。ところが、それでも反響は思ったほど戻りません。

一方で、住み替え先のマンションはすでに売買契約済み。引き渡し期限は、刻一刻と迫っていました。

「この金額のままだと、住み替えに回すお金が足りなくなってしまいます…」

資金計画のズレが、次々に連鎖する

最終的に、想定していた売却額には届かず自己資金が不足する結果となりました。当初、Aさんが前提としていた売却価格は、最初に査定を行った不動産会社から提示された3,200万円。

しかし実際に成約した金額は、当初査定より約400万円低い2,800万円でした。

この差額が、そのまま資金計画のズレとして表面化します。不足分を補うため、Aさんは追加での借入を検討しましたが、ここで新たな問題が生じます。

金融機関に最初に提出していた資金計画と、実際の売却額との間に大きな乖離が生じ、当初の前提条件では融資を進められないと判断されたのです。その結果、融資内容そのものを見直すことに。

具体的には、次のような調整が行われました。

  • ローン条件の見直し
  • 借入額の再調整
  • 返済年数の変更

これらの見直しを経て、Aさんに提示された条件は、当初想定していたものよりも明らかに厳しい内容となりました。毎月の返済額は、当初の想定よりも数万円単位で増加。さらに、老後資金に回す予定だった売却益も、ほとんど残らない結果となったのです。

Aさんは後悔した様子でこう話されました。

「無料査定を“相場”だと思い込んでいました」「複数の不動産会社に聞いて、根拠を確認していれば…」「先に下限価格を把握してから動いていれば…」

後悔の言葉は尽きなかったのをはっきりと覚えています。

無料査定は「目安」であって「保証」ではない

このケースの無料査定は、あくまでも最高値の目安にすぎません。「その金額で必ず売れる」という保証額ではないという点は、事前に理解しておく必要があります。

特に、以下のような要素をセットで考える売却ほど、先に正確な相場を把握しておくことが、あとから重く効いてきます。

  • 住み替え
  • 資金計画
  • 老後設計

「無料だから」「高く言ってくれるから」

その一言を信じて判断した結果、人生設計そのものが揺らいでしまうことも、決して珍しくありません。

もし今、空き家を売却して住み替えを検討されているのであれば、次の点だけは必ず確認してほしいと思います。

  • 無料査定は1社だけで判断せず、複数の不動産会社から見積もりを取る
  • 提示された売却額について、成約事例など具体的な根拠を確認する
  • 「いくらで売れるか」だけでなく、住み替え資金との兼ね合いで、最低いくらで売る必要があるかという下限価格を把握する

不動産は、金額そのもの以上に、その後の暮らしや人生に影響を与える資産です。だからこそ売り出す前の確認と準備が、何よりも大切なのだと感じています。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】