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「3列目が荷物置き場」年1回の帰省ならレンタカーでいい?500万のミニバン購入で後悔しないための“見極めライン”

  • 2025.12.28
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

「3列シートのミニバンなら安心」というイメージだけで購入していませんか?

利用シーンを明確にしないまま選ぶと、実際には3列目が“ただの荷物置き場”になってしまい、無駄なコストを払い続けることになりかねません。

本記事では、3列シートの必要性を「家族の人数」と「子どもの年齢」から分析。ミドルクラスが必要な家庭と、コンパクトや2列シートで十分な家庭の違いを整理し、ライフスタイルに合わせた賢いクルマ選びのヒントを解説します。

大きく変わりつつあるミニバンの「常識」

かつては「家族が増えたら、とりあえずミドルクラスのミニバン」というのが、車選びの鉄板の正解でした。しかし、その「常識」は今、大きく変わりつつあるようです。

その大きな理由の一つに、昨今の車両価格の高騰が挙げられます。かつては「定番のファミリーカー」だったミドルクラスのミニバンも、今や乗り出し価格で400万〜500万円に達することは珍しくなくなりました。その一方で、シエンタやフリードといったコンパクトな車種は機能や質感が向上しており、「あえて小さいほうを選ぶ」という判断も、十分に現実的で賢い選択肢となってきています。

このような状況を踏まえると、「大は小を兼ねる」という感覚だけで高価なミドルクラスを選ぶことには、以前よりも慎重さが求められる時代になったと言えるかもしれません。だからこそ、後悔しない車選びのためには、カタログのスペック表を眺めるその前に、まずはご自身の家庭の「現在の生活シーン」と「少し先の未来」を具体的にシミュレーションしてみることが、何よりの近道となるはずです。

その3列目、乗せるのは「人」ですか?「荷物」ですか?

まず目を向けたいのが、子どもがまだ「乳幼児期(0〜3歳)」というご家庭です。この時期の移動スタイルを振り返ってみると、チャイルドシートを装着した2列目に子どもを乗せ、助手席や2列目の隣に保護者の方が座るという形が多いのではないでしょうか。

実のところ、この時期に3列目シートへ人を乗せる機会は、それほど多くないかもしれません。むしろ、日々の買い物や通院において優先したくなるのは、「狭い道での小回りの良さ」や「狭い駐車場でのドアの開け閉め」、そして「ベビーカーを楽に積めるか」といった、実用面というケースもよくあります。

特に、後ろの席で泣いている子どもの様子を気にしながらの運転は、思った以上に神経を使うものです。そう考えると、3列目を格納して荷室を確保しつつ、車体が小さく取り回しが楽なコンパクトミニバンのほうが、運転の負担を減らせる分、この時期の生活リズムには馴染みやすい可能性もあります

3列目の出番は年何回?「所有」と「レンタル」の分岐点

子どもが成長し、園児から小学校低学年になると、いよいよ「3列目の是非」が問われるタイミングがやってきます。習い事の送迎でお友達を乗せたり、祖父母と一緒にレジャーへ出かけたりと、乗車人数が増えるシーンが出てくるからです。

ここで一度、冷静に見積もってみたいのが「3列目を使う頻度」です。もし、6人以上での乗車が「お盆と正月の帰省時だけ」であれば、その数日のために、残り300日以上を空席のまま走らせるのは、コストパフォーマンスの観点で少しもったいないと感じることもあるでしょう。

最近ではレンタカーやカーシェアも非常に使いやすくなっています。「必要な時だけアルファードのような大型ミニバンを借りる」と割り切ってしまえば、普段は維持費の安い車に乗り続けることができます。

逆に、「毎週末のように祖父母と買い物に行く」「部活動の遠征で頻繁に配車当番がある」といったライフスタイルであれば、常設の3列シートを持つ車を選ぶメリットは大きいはずです。この「頻度」の見極めこそが、満足度を左右するポイントになるかもしれません。

「しっかり3列」が必要になる条件とは

では、どんなご家庭ならミドルクラス以上の「ゆとりある3列シート」が適していると言えるのでしょうか。

一つの目安として考えられるのが、「子どもが3人以上」、あるいは「たくさんの荷物と人を同時に乗せる機会が多い」というケースです。

3人きょうだいの場合、チャイルドシートやジュニアシートの配置上、誰か一人が3列目に座るケースが増えてくる傾向にあります。コンパクトミニバンの3列目はあくまで「緊急用」として設計されていることが多く、長時間のドライブでは足元の狭さや座面の薄さが気になってくることもあるでしょう。

日常的に3列目を使うのであれば、大人でも座れるスペースを確保したミドルクラスの空間設計が、家族全員の疲労軽減につながりやすいと言えるかもしれません。

また、キャンプや旅行で大量の荷物を積む機会が多いご家庭も、ミドルクラスを検討するポイントになるでしょう。「人は乗れたけれど、荷物が載りきらない」というのは、コンパクトミニバンで悩みやすい部分の一つかもしれません。

3列目を使用しつつ、その後ろにクーラーボックスや宿泊セットを積みたいのであれば、やはりボディサイズに余裕のあるミドルクラスが、頼もしい相棒となってくれるのではないでしょうか。

ライフステージの変化で「不要」になる日も

最後に見据えておきたいのが、子どもが10歳以上(小学校高学年〜)になった後のカーライフです。

親としては少し寂しいことですが、この頃になると子どもたちは部活や塾、友人関係で忙しくなり、家族全員が揃って車で出かける機会は減少していく傾向にあります。かつては「あってよかった」と感じた3列シートも、気づけば何カ月も畳まれたままの「荷物置き場」になっている……というご家庭も珍しくないかもしれません。

もし「ここ1年、3列目を開いていない」という状態になれば、それは今の車がライフスタイルに合わなくなってきたサインの可能性もあります。燃費の良いSUVや、走行性能の高いステーションワゴンなど、あえて2列シート車へ「ダウンサイジング」することで、維持費を抑えつつ、再び「走る楽しさ」を取り戻すのも、選択肢の一つとして検討してみても良いかもしれません。

5年先より「直近1〜2年」の最適解を

車選びにおいて、「5年後、10年後はどうなっているかわからない」という不安から、必要以上に大きなサイズを選んでしまうことは珍しくありません。しかし、その「いつか」のために、毎日の使い勝手を犠牲にしてしまうのは、少しもったいないことではないでしょうか。

最後に改めて、今回シミュレーションした「現在から少し先の未来」の選び方を振り返ってみましょう。

  • 乳幼児期・少人数移動がメイン: コンパクトミニバン等の取り回しが便利かもしれません。
  • 頻繁に6人以上乗る・荷物が多い: ミドルクラスならではの空間と積載量が大いに役立つでしょう。
  • 子どもが成長し、家族移動が減った: 2列シート車への乗り換えも、賢い選択肢の一つです。

大切なのは、予測できない5年先まで完璧に見通すことよりも、「現在の家族構成と、向こう1〜2年の生活に一番フィットするサイズはどれか」という視点を持つことです。

「今と少し先の未来」にジャストフィットする一台を選ぶことが、結果として、家族との時間をより豊かなものにしてくれるきっかけになるはずです。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析などを手がけ、実務に基づいた視点での解説を行っている。


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