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老後資金『足りる人』『不足する人』には違いがあった…お金に困らないために、「見直すべき固定費」とは【プロが解説】

  • 2025.12.28
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「老後は貯金もあるから安心」と考えていませんか?しかし、実は貯金額以上に重要なのは、そのお金がどのくらいの速度で減っていくかを把握すること。

現役時代とは異なり、収入が大きく減る老後には、支出の管理がいっそう重要になります。

この記事では、老後資金が不足しやすい理由と、つい見落としがちな固定費のポイントをお金のプロの視点で明らかにし、無理なく支出を見直すヒントをお伝えします。先送りしてしまいがちな「お金の減り方」を実態に即して考えるきっかけにしてください。

「貯金があっても安心できない」老後の資金ショートのワケ

---『今は貯金があるから大丈夫』と考えている人ほど、なぜ老後資金が不足してしまうのでしょうか? その典型的な失敗パターンや、陥りやすい心理的トラップについて教えてください。

石坂貴史さん:

「「今は貯金があるから大丈夫」と考えている人ほど、老後資金が不足しやすい理由は、貯金額そのものではなく、お金の減り方を正しく把握していない点にあります。多くの人は、現在の預貯金残高を見て安心しますが、「そのお金がどの速度で減っていくか」を計算していません。

現役時代は収入があり、多少の無駄があっても帳尻が合っていました。しかし老後は、基本的に入ってくるお金が限られて、減る一方になります。ここで、はじめて毎月の固定的な支出の重さが表面化します。

典型的な失敗パターンは、「今の生活水準を老後も維持できる」と無意識に思い込むことです。住宅費、保険料、車の維持費、交際費などが、現役時代とほぼ同じ水準のまま残り、そこに医療費や介護費用が上乗せされていきます。貯金があることで「多少赤字でも大丈夫」という心理が働き、赤字に慣れてしまうのも危険なポイントです。

心理的なトラップとして多いのは、「まだ先の話だから考えなくていい」「足りなければその時に削ればいい」という先送りです。しかし、老後に入ってから支出を削るのは、体力的にも精神的にも難しくなります。

業務上の視点から「貯金が多い人ほど支出管理が甘く、減り始めてから慌てる」というケースを見てきました。老後資金で本当に重要なのは、貯金額よりも、毎月いくら減る構造になっているかを早めに知ることです。」

見落としがちな「実は固定費」の支出を把握しよう

---多くの人が見落としている『固定費の盲点』とは具体的に何でしょうか? 住居費や保険料といった一般的な項目以外で、プロだからこそ気づく『実は家計を蝕んでいる意外な出費(サブスク、使途不明金、孫への出費など)』はありますか?

石坂貴史さん:

「多くの人が見落としがちな固定費の盲点は、『固定費だと認識されていない固定費』です。住居費や保険料は意識しやすい一方で、金額が小さく見える支出ほど、長期間にわたって家計を静かに圧迫します。

その代表例が、使っていない、もしくは使用頻度の低い『サブスクリプション』です。動画配信、音楽、クラウド保存、アプリの有料機能など、月千円前後のものが複数重なると、年では数万円になりますが、多くの人は把握していません。

FPの立場で特に注意するのが『使途不明金』です。コンビニ、ネット通販、ちょっとした外食など、家計簿では『雑費』としてまとめられがちな支出です。これが毎月一定額出ている場合、実質的には固定費と同じです。本人に自覚がないため、見直しの対象から外れやすい点が問題になります。

また、意外に見落とされるのが、子どもや孫への支援です。学費の補助、習い事の月謝、誕生日やイベント時の出費など、『家族のためだから仕方ない』と考えますが、定期的であれば家計にとっては固定費です。金額が徐々に増えても、関係性の問題から見直しにくくなります。

固定費かどうかは『金額』ではなく『繰り返し発生しているのか』で判断しましょう。この視点を持たない限り、家計の出費はいつまでも見えないままになります。」

悪い固定費を見抜き、感情に流されず見直すポイント

---老後破産を防ぐために、今すぐ自分の家計にある『悪い固定費』を見分けるチェックポイントを教えてください。また、それを見直す際、最初に手をつけるべき項目は何でしょうか?

石坂貴史さん:

「老後破産を防ぐために大切なのは、「悪い固定費」を早めに見分けることです。

悪い固定費とは、生活の満足度をほとんど高めていないのに、当たり前のように払い続けている支出です。その見分け方はシンプルで、「今この支出がなくなったら、生活は本当に困るのか」を一つずつ確認することです。少し不便になる程度なら、それは見直し候補になります。

次にチェックすべきは、「金額を即答できない支出」です。月いくら払っているのか分からないものは、管理されていない証拠です。保険料、通信費、サブスク、車関連費用などは、特に注意しなければなりません。金額を把握したうえで、年額に直してみると、思った以上の負担になっていることが分かります。

見直しの際に最初に手をつけるべきなのは、「感情が絡みにくい支出」です。たとえば、使っていないサービス、過剰なオプション、目的が曖昧な契約などです。家族関係や安心感が絡む支出は後回しにして、まずは判断しやすいものから減らすことで、家計改善は進みやすくなります。

FPとして強調したいのは、完璧な家計にする必要はないという点です。重要なのは、悪い固定費を放置しない仕組みを作ることです。これができれば、老後資金は「足りるのか足りないのか」ではなく、「持続できるかどうか」という健全な判断に変わっていきます。」

老後資金の安心は「支出の見える化」と「固定費の見直し」から

老後の資金不足リスクは、単に貯金額の多さだけで判断できるものではありません。

石坂さんの話から分かるように、重要なのは「お金がどのように減っていくか」を早い段階で把握すること。そして、日々の生活の中で固定費として無意識に払い続けている支出をひとつずつ見直していくことです。使っていないサブスクや雑費、家族支援など一見小さな支出も、積み重なれば家計の重荷になります。

感情的なハードルが低い支出から手を付ければ、家計改善は着実に進みます。完璧を求めず、悪い固定費を放置しない仕組みを作ること。それが「老後資金を持続可能にする」道です。今日から支出の見える化に取り組み、無理のない見直しを始めることをおすすめします。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。