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「家に居たのに不在票?」元宅配員が明かす、「チャイムは鳴らなかった」の“すれ違い”

  • 2025.12.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さんこんにちは、元宅配員のmiakoです。

不在票をめぐるクレームの中には「家にいたのに」「チャイムは鳴らなかった」というお声があります。
私自身、何度か同じようなご連絡をいただき、そのたびに訪問したときの動きに不備がなかったかなどを思い返していました。
決して手を抜いているわけではなく、不在票を入れるまでには、ルールに沿ってチャイムを押し、声をかけ、それでも応答がなかったので行ったことです。
けれど、その事情はお客様からは見えません。

現場で働く中で、こうしたすれ違いの背景には、お客様にも宅配員にも気づきにくい理由が積み重なっているということが少しずつ分かってきました。
今回は、実際の体験をもとにそのリアルをお伝えします。

チャイムの種類や設置場所で生まれるすれ違い

訪問すると、まず行うのはチャイムの位置探しです。

皆さんも心当たりがあると思いますが、チャイムは必ずしも玄関ドアの横にあるとは限りません。
門扉の側や門柱など、玄関へ向かう途中の場所に設置されている家もあれば、ドアノッカーがある家、そしてチャイムそのものがない古い家屋もありました。

さらに、チャイムを押しても必ず鳴るとは限りません。
無線式チャイムでは電池切れ、有線式では経年劣化による接触不良などが原因で、音が鳴らないこともあります。

チャイムを押した瞬間に「今、家の中で鳴っているのか」を外から判断できない場合があるのです。

押しても聞こえないことから生まれるすれ違い

チャイムの種類によっては、外からは音が聞こえない家もあります。
家の中だけで鳴るタイプや、音量が小さく設定されている場合、押している側には音がしていないように感じられるのです。

宅配の仕事を始めたばかりの頃、チャイムを押しても外では音が聞こえず、再度押した瞬間にドアが開き「聞こえているから何度も押さないで」と強く言われたことがありました。

この経験から、外では聞こえなくても実際には鳴っていることがあると学び、むやみに何度も押さず、家の中の気配や音に意識を向けるようになりました。

「チャイムが見つからない」家もある

いろんなタイプのチャイムや家を訪問してきましたが、中でも印象に残っているのは、チャイムを探しても見つからなかった家です。

初めての訪問では玄関周辺にチャイムが見つからず、チャイムがない家だと思い、声をかけてもお返事がなかったのでその場は不在だと判断しました。

その後、再配達で伺ったときのことです。

二度目の訪問でもチャイムが見つからなかったので、伝票の電話番号からお呼びし、玄関から姿を見せたお客様を見た瞬間、その奥にもう一枚、玄関ドアと同じ扉があるのに気付きました。
そして二枚の玄関ドアの間の壁にチャイムがありました。

いわゆる「二重扉」のお宅に遭遇して初めてその構造を知ったとき、思わず「こちらにチャイムがあったのに気付きませんでした」と謝罪しましたが、地域柄もあり、このような二重扉の家は少なく「うちのチャイムは知ってる人じゃないと気付かないよね」と納得していただきました。

それ以来、そのお宅を訪問するときは、外側の扉を開ける前に必ず声をかけ、慎重に扉を開けてからチャイムを押していました。

「家にいても出られない」時間は誰にでもある

訪れた際に不在だと思った家が、実際は在宅だったというお客様もいらっしゃいます。
ですが、生活音や状況によって、チャイムや声掛けに気づけないことは珍しくありません。

テレビの音や掃除機、洗い物の水音などにかき消されてしまったり、お風呂やトイレに入っていて、出られない状況だったりすることもあります。

小さなお子様がいるお宅では寝かしつけなどで音量を下げている場合もありました。

お客様は「家にいた」という事実を大切にします。
しかし一方で、宅配員は「応答があるかどうか」で在宅を判断します。

この認識のずれが、不在クレームの一因になっていました。

「押したくても押せない」不在の瞬間

ある夜の時間帯指定で伺ったとき、家の明かりもつき、駐車スペースには車が並んでいて、在宅だと感じた家がありました。
しかし、いざお伺いしようと門扉に手をかけると、鍵がかかっていました。

チャイムは門扉より先、玄関ドアの隣にあります。

外からはチャイムを押すことができず、伝票にも電話番号の記載がなく、声をかけても返事がありません。

このような状況では、訪問していても、訪問したことを伝える手段がないのです。
やむなく不在票を入れたとしても、再配達で伺うと「家にいたんだけどね」と言われることがあります。

宅配員も本望ではありませんが、どうにもできない不在が存在するのも事実でした。

「宅配員の本音」は一度で届けたいという願い

不在票を入れることは、宅配員にとっても望んでしているわけではありません。
一度でお届けが出来れば、お客様にも宅配員にも負担がありません。

対面でお届けする際、私自身が心がけていた言葉があります。
「お忙しいところ、ありがとうございました。」

必ずしも全てのお客様にお伝えできたわけではありませんが、対応していただく裏には、お客様の貴重な時間をわずかでも使って受け取ってくださったという行動があります。
そして、私たち宅配員は、お客様にお荷物を受け取っていただくことで仕事が成り立っています。

この言葉をお伝えすると、笑顔を返してくださるお客様もいました。
忙しい中でも「受け取ってよかった」と思っていただけるなら、その一言が小さな負担を和らげる力になると感じていました。

お客様に安心して受け取っていただき、宅配員への信頼につながるように。
その思いは、ずっと変わらず心に置いていたものでした。

クレームの本音と、宅配員のリアル

ある日、ポストの中にあった不在票を見て、それが家にいたはずの時間だったとしたら、なぜ気づかなかったのだろうと不安になったり戸惑ったりするのは自然な感情です。

「家にいたのに」といったクレームの裏には、「気づいたら受け取っていたのに」といった思いから、お客様がご自身を責めてしまうような、やるせなさがあるのだと感じていました。

しかし、いったん冷静になってその状況を振り返ってみてください。
そのときは、どうしても受け取れない理由があったのだと思います。

そして、受け取れなかった状況が、お客様にとってはたとえ些細な理由であったとしても、少なくとも私は、配達員としてお客様を責めるようなことは決してありませんでした。
生活をしている以上、タイミングが合わないことが生まれてしまうのは承知の上です。

もしもまた、家に居たのに不在票を見つけることがあった場合、宅配員の小さな気遣いがそこに隠れていることに気づいていただけると、誤解や不安も少し和らぐかもしれません。

宅配員もまた、お客様とのすれ違いを減らしたいと願いながら毎日訪問しています。
この記事が、その小さな距離を埋めるきっかけになれば嬉しく思います。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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