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「返事は0.2秒」遅れるとアウト。新卒保育士が絶望した、職員室の“軍隊ルール”

  • 2025.12.31
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

こんにちは。今年で保育士歴13年になる、現役保育士のめじです。

今回は、新卒で入職した幼稚園で体験した、今思い返しても忘れられない“体育会系すぎる園ルール”のお話です。

「子どもが好き」「先生になるのが夢だった」

そんなキラキラした気持ちで入職した私を待っていたのは、

まるで“部活動”に入部したかのような、規律を重んじる職場環でした。

期待とは違った、想像以上に厳しい園のルール

新卒で採用が決まり、いよいよ憧れの幼稚園の先生に。

その園では学生時代に実習もしていたため、園の雰囲気も先生方の様子も「だいたい分かっているつもり」でした。

……が、それは完全なる油断。

まず衝撃だったのが、職員室への入室ルール。

扉を開ける前に姿勢を正し、大きな声で

「おはようございます!!」

声が小さいと、まさかのやり直し。

返事は0.2秒以内。考えてから返すのはアウト。

脳より先に声帯が反応することを求められました。

朝礼では、全員で保育方針を唱和。

声量・抑揚・息継ぎのタイミングまで細かく指導が入り、内心「これは一体何の時間だっけ?」と思ったのはここだけの話です。

それでも当時は、「最初はこんなものなのかな」と自分に言い聞かせていました。

他にもルールは色々とあり、髪色は黒一択。

先生同士がすれ違う時も、一度立ち止まり大きな声で挨拶。

園内は常に見えないホイッスルが鳴っているような空気でした。

保育よりも“ルール”に追われていた1年目

1年目は、とにかくついていくことに必死でした。

保育の準備よりも、「挨拶は合格か」「決まりと違っていないか」が気になる日々。

正直、「私、保育をしに来たんだよね?部活しに来たんだっけ?」

と、何度も自問自答しました。

職員室に入るだけで緊張し、やり直しを指示されては、再び深呼吸して再入室。

保育以前に心身のエネルギーを削られていく毎日でした。

家に帰るとどっと疲れが出て、翌日の保育のことよりも「明日は怒られないで済むかな」と考えてしまう自分がいました。

新人だからこそ頑張らなきゃ、という気持ちと、何かが違う気がする、という小さな違和感が常に同居していました。

年数を重ねて芽生えた違和感

2年目、3年目と経験を重ねるうちに、少しずつ疑問が芽生えてきました。

自分が怒られないように、決まりを守るようにと必死になるほど、子どもの小さな変化や気持ちに目を向ける余裕が減っていく感覚もありました。

「ちゃんとする先生」と「子どもに向き合える先生」は、必ずしも同じではないのかもしれない、と感じ始めたのです。

挨拶や礼儀が大切なのは分かります。

でも、それが行き過ぎると、“ちゃんとすること”が目的になってしまうのでは…と感じる場面が増えていきました。

転職して気づいた、本当に大切なこと

結婚を機に転職し、別の園で働くようになってから、あの頃の違和感がはっきりしました。

あの頃は必死でしたが、今振り返ると「少し独特なルールだったのかもしれないな」と感じます。

もちろん、全てが無駄だったわけではなく、声を出すこと、姿勢を正すこと、気持ちを切り替えること。

社会人としての基礎や集団の中での立ち振る舞いを叩き込まれたのも事実です。

でも、それで先生が疲れ切ってしまっては本末転倒。

一番大切なのは、子どものことを一番に考えられる余裕があるかどうか。

保育の質は、知識だけでなく先生自身の余裕や安心感に直結しているのです。

園のルールや方針は、その園の色でもあり、文化でもあります。

だからこそ、新卒で入る園がどんな価値観を大切にしているのかはとても重要です。

「合う・合わない」があることを、あの経験が教えてくれました。

これから保育の世界に入る人には、“厳しさ”だけでなく、“安心して失敗できる環境”があるかどうかにも、ぜひ目を向けてほしいと思います。

声を張り上げなくても、子どもと向き合える場所は、ちゃんとあります。



ライター:めじ

幼稚園、保育園と保育経験を重ね、今年で13年目に突入しました。保育の仕事の中で感じた思いや子どもたちとのやりとり、育児と仕事の両立の事など経験をもとに言葉にしています。


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