1. トップ
  2. 「明日12月30日に、指定席4人分ありませんか?」年末年始、元駅員が目撃した乗客の“苦渋の決断”

「明日12月30日に、指定席4人分ありませんか?」年末年始、元駅員が目撃した乗客の“苦渋の決断”

  • 2025.12.29
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今日は、私が駅員時代に経験した「年末年始の苦悩」をご紹介します。ウェブ会員になりたくないというお客さま向けに、せめて少しでも「予約を取りやすくする方法」とその注意点もあわせて紹介していますので、ぜひご覧ください。

最近のトレンド「指定席」

最近、鉄道会社では指定席が増えています。これは自由席がネットなどで事前に予約できないためでしょう。ゴールデンウィークやお盆、年末年始にのみ自由席を取りやめ、全車指定席とする列車もあります。

多くのお客さまが見込まれる繁忙期に自由席を取りやめる試みは最近始まり、肌感覚では賛否両論でした。否定的な意見が多かったような印象もありますが、得てして肯定的な意見はわざわざ口に出して駅員には言わないものです。

ネットニュースやSNSでは、予約なしで気軽に飛び乗れる点が鉄道の利点だったのに、と全席指定化を嘆く声も見られます。

と嘆く声も見られます。意見は人それぞれあるでしょうが、ネット予約のシェアを拡大させて効率化を図るつもりなら、今後もこの流れは続くのかもしれません。

窓口に子連れのお客さま

「明日の12月30日なんですけど、4人分ありませんか?」

きっぷ売り場の私にそう申告したのは、小さな赤ちゃんを抱えた女性でした。4人の内訳は大人2人、お子さま2人。ご家族で帰省するのだろうと思いました。

「まずいぞ。4人固まって座れる指定席は残っているか?」

このとき、お客さまがご希望の区間を直通する列車は全車指定席でした。「自由席を買って早めにホームで並んでください」とは案内できません。

空席があるのは早朝か深夜の2択でした。それ以外の時間帯は完全に満席です。別れて座ることもできません。乗るとすれば、と別の方法を提案しました。

「途中の駅で乗り換えるなら、日中に指定席を取れます。ただし、2人ずつバラバラです」

立つか、別れるか、早朝・深夜か

お客さまの顔に絶望が広がります。

「乗り換えなきゃいけないんですか?」

指定席が埋まっている以上、直通列車には乗れません。ただし「原則」という言葉がつきます。

実はこの時、『全車指定席の列車であっても、自由席特急券などでデッキに立って乗車することを認める』という、非常に例外的な特別ルールが運用されていました。ただし、これはあくまで繁忙期の混乱を避けるための特例です。通常、全車指定席の列車には有効な指定席券がなければ乗車できませんのでご注意ください。

当然、お客さまは難色を示します。独身の私から見ても「このお客さまが立ちっぱなしは、さすがにきついだろう」と感じられました。

直通列車のデッキに立つか、2人ずつに分かれて途中で乗り換えるか、または早朝や深夜に乗車するか。いずれにしても小さなお子さまをお連れのお客さまには負担の大きい旅程です。お客さまは決めかね、スマートフォンを取り出しました。どうやら駅ビルでお買い物をしている旦那さまにかけたようです。

決断

ほどなくして、旦那さまと小学生くらいのお子さまが窓口に到着しました。

「指定席は途中で乗り換えるぶんしか空いてないんだって。それでもいい?」

「空いてないんだったら、仕方ないんじゃない?」旦那さまはあっさりと答えました。

こうして、2人ずつに分かれて座り、しかも途中駅で乗り換えるルートを購入されました。もちろん、確実に座れる保証があるため、自由席よりは指定席のほうが良かったのかもしれません。ですが、ご家族が離れた席で移動することになったため、もし4人固まって座れていれば、より楽しい帰省の思い出になったのかもしれません。

直前になって予定が変更になったのかもしれませんが、多くの場合、帰省のようにある程度のスケジュールが事前にわかっているイベントであれば、もう少し早く指定席の予約ができたかもしれません。

繁忙期の指定席を確実に取るには?

このお客さまは、どうすればご希望の指定席を取れたのでしょうか?ネット予約促進のために指定席が増えている側面もあるので、ウェブ会員に登録してネットで予約するのが最も確実だったでしょう。

しかしながら

「いくら入会費も年会費も無料とはいえ、盆と正月くらいしか鉄道を利用しないのにウェブ会員になるのは…」

という方もいると思います。

どうしてもネット予約をしたくないのであれば、発売開始当日に駅のきっぷ売り場で予約を取るのがベストです。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】