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土砂降りの宿泊学習で「40分遅れ」スケジュール崩壊の危機も…教員の不安を覆した生徒たちに胸が熱くなった話

  • 2026.1.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。

学校行事は、どれだけ準備しても「想定外」が起こるもの。
特に宿泊学習は、天候ひとつでスケジュールが大きく揺れます。

今日は、私が引率した宿泊学習で起きた“誤算”と、そこで見た子どもたちの姿をお話しします。

待ちに待った宿泊学習。しかし天気は…

宿泊学習当日の朝。

子どもたちはいつも以上に早口で、いつも以上に落ち着きがなくて、でも心から楽しみにしているのが伝わってきました。

バスに乗り込むと、
「先生、寝られなかった!」「おやつ何持ってきた?」と弾む声。

子どもたちに笑顔で応えながら、胸の中では「どうか無事に終わりますように」と祈っていました。

…ところが。
バスが現地に近づくにつれて、窓を叩く雨音がどんどん大きくなっていきます。

天気予報では「くもり時々雨」だったはずが、到着する頃にはしっかりした土砂降り。
思わず隣の先生と顔を見合わせました。

「野外炊事、いけるかな…」
なぜなら、到着してすぐのプログラムが“野外炊事”だったからです。

到着が遅れ、予定は40分押し

本来なら到着後すぐに、班ごとに火起こしをして「肉焼きそば」を作る予定でした。

屋根のある場所とはいえ、雨が強いと移動だけでも一苦労。

さらに悪天候で道路状況も悪く、バスの到着が遅れてしまい、時程は40分押しになりました。

宿泊学習のスケジュールは何度も話し合い、確認を重ねた緻密なもの。

他の学校との兼ね合いもあるので、施設の利用時間は厳守が鉄則です。

そして野外炊事は、
・火がつかない
・調理に時間がかかる
・後片付けに手間取る
など、何かが起きると一気に時間が溶けていくプログラム。

「このあと、ハイキングもあるし、キャンプファイヤーもあるし……」
「炊事が長引いたら、全部ずれる…」

子どもたちの前では平静を装いながら、頭の中では計算が止まりませんでした。

引率の担任と教頭で、「きっと時間オーバーするから、どこかで調整しましょう」と決めて、炊事がスタートしました。

子どもたちは、驚くほど頼もしかった

ところが、いざ炊事が始まると…

「私、野菜切るね!」
「火起こしやる人、こっち来て!」
「先生、見て!火、ついた!」

雨で足元が悪い中でも、子どもたちは声を掛け合い、自然に役割を分担していました。

いつも教室では、少し甘えん坊だった子が手際よく包丁を握っている。
普段は周りを見て動くのが苦手だった子が、てきぱきと物を運んでいる。

その姿に、私は胸が熱くなりました。

もちろん途中で、いくつかの小さなトラブルはありましたが、励まし合いながら着々と作業を進めていきました。

“予定通り”に終わった野外炊事

どの班も順調に調理が進み、なんと、炊事はプログラム通りの終了時刻で片付きました。

湯気の立つ焼きそばを笑顔で頬張りながら、

「おいしい!自分たちで作ったの、最高!」
「雨でも全然いけたね!」

そんな声があちこちから聞こえてきました。

予定外の土砂降りをものともせず、一致団結して乗り越えた姿に、子どもの力の大きさを感じました。

子どもの力は、時々こちらの想像を超えてくる

宿泊学習は、子どもたちにとって“いつもと違う環境”です。

だからこそ、いつもの学校生活では見えなかった力がふっと顔を出すことがあります。

不測の事態があっても、自分たちで考え、助け合い、やり切った。
そんな経験が、子どもたちを一回り大きくしたように感じました。

大人はつい、先回りして「失敗させないように」と考えてしまいます。

でも、子どもは時々、大人の心配を軽々と越えていく。

あの日の野外炊事は、私にとっても「信じて見守ること」の大切さを思い出させてくれた出来事でした。

子どもたちの頼もしさに出会えたという意味では、あいにくの土砂降りも“うれしい誤算”だったのかもしれません。



ライター:みずいろ文具
関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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