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病院の待ち時間はなぜ長い? 現役看護師が明かす、予約通りに進まない医療現場の“事情”

  • 2026.1.6
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

病院は、元気なときに来る場所ではありません。多くの人が不安や痛み、焦りを抱えながら足を運びます。だからこそ、そこで長く待たされることは、想像以上にストレスになります。

「予約しているのに、どうしてこんなに待つんですか」

「薬をもらうだけなのに、何十分も待たされる意味が分からない」

外来に立っていると、こうした声を一日に何度も耳にします。その訴えがもっともだと分かっているからこそ、看護師として胸が痛む場面でもあります。

しかし診察待ち時間の裏側には、患者さんにはどうしても伝えられない、そして私たちも言葉にできない様々な理由があるのです。

クレームの矢面に立って、私が飲み込んだ「本音」

外来勤務をしていた頃のことです。

診察までに1時間近く待たれ、不安と焦りが頂点に達した様子の患者さんが、受付カウンターで私たちに強く訴えかけました。

「こんな管理でよく病院を名乗れますね。私は時間を作って来ているんです」

私は頭を下げ、「お待たせして申し訳ありません」と繰り返しました。

その間も、患者さんの苛立ちは収まりませんでした。

しかし、そのとき私の視界の端で外来の奥が慌ただしく動いているのが見えていました。

救急車で運ばれてきた患者さんが、心停止寸前の状態で処置室に入っていたのです。

医師も看護師も全員がそこに集まり、点滴、酸素、心電図、指示の声が飛び交っていました。1分1秒が、生死を分ける時間でした。

誰が、どんな状態で運ばれてきたのか。どれほど危険な状況なのか。それはすべて、守られるべき個人情報です。

だから私たちは、本当の理由を飲み込んだまま、

「申し訳ありません」「順番にご案内しています」

という言葉だけで、怒りを受け止め続けるのです。

待ち時間は「不親切」ではない、命の「不確実性」

病院の待ち時間は、単なる段取りの悪さで生まれているわけではありません。

医療の現場では、予定通りに進まないことのほうが、むしろ当たり前です。

診察中に、医師が「念のため」と指示した検査で、思いがけない異常が見つかることがあります。

軽い症状だと思って来院した人が、実は緊急の処置を必要とする状態だった、ということも珍しくありません。

そうなれば、その患者さんの対応が最優先になります。結果として、その後ろに控えている人たちの待ち時間は、少しずつ延びていきます。

もちろん、すべての待ち時間が緊急対応によるものだと言うつもりはありません。

予約枠の取り方、人員不足、情報共有の仕組みなど、病院側が改善すべき課題が積み重なっていることも事実です。

しかし、そうした効率化の努力だけでは吸収しきれない『命の不確実性』が、医療現場には常に存在しているのです。

命を守る現場で、私たちが抱え続けているもの

患者さんが待ち時間に不満を感じるのは、決してわがままではありません。

貴重な時間を割いて予約し、体調の悪い中で来院しているのですから、その訴えはもっともです。

先の見えない時間は、病状への不安をさらに増幅させることでしょう。私たちもそのお気持ちは痛いほど分かっています。

クレームを受けるたびに、私たちは説明できない事情を胸に抱えながら、頭を下げています。

その裏で、「今この瞬間、最も危険な命はどれか」を見極め、対応し続けています。

病院での待ち時間は、不親切の結果ではありません。それは、目に見えない場所で行われている、命を守る選択の積み重ねです。

今日もどこかで、誰かの「待たされた時間」が、別の誰かの「生きる時間」につながっている。その現実を抱えながら、私たちはこの現場に立ち続けています。



ライター:精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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