1. トップ
  2. 新築購入も「庭に見知らぬ子どもが…」入居1ヶ月後、海外映画に憧れた30代主婦を襲った”大誤算”【一級建築士は見た】

新築購入も「庭に見知らぬ子どもが…」入居1ヶ月後、海外映画に憧れた30代主婦を襲った”大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.1.8
undefined
出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「海外の映画に出てくるような、芝生が道路まで続いている開放的な家。それに憧れたんです。でも、日本でそれをやると、自分の敷地が『公共スペース』だと勘違いされるなんて……」

そう語るのは、新興住宅地に家を建てたTさん(30代女性・主婦)。

Tさんの家は、道路との境界に塀やフェンスを一切設けない「オープン外構」です。

理由は2つ。「予算削減」と「敷地を広く見せるため」。完成当初は、遮るもののない広々とした芝生の庭に大満足でした。

しかし、入居して1ヶ月も経たないうちに、Tさんは「見えない境界線」の脆弱さを思い知ることになります。

庭に見知らぬ子どもが…無法地帯化した我が家

ある晴れた休日、リビングでくつろいでいたTさんは、庭からの話し声で窓の外を見ました。

すると、近所の小学生くらいの子どもたちが数人、Tさんの家の芝生の上で、鬼ごっこをして走り回っていたのです。

「えっ?ここ、人の家だよね?」

Tさんは目を疑いました。

しかし、子どもたちには悪気はありません。塀がないため、どこまでが道路で、どこからがTさんの敷地なのか、視覚的に区別がつかないのです。

「注意しようか迷いましたが、近所付き合いもあるし、子ども相手に目くじらを立てるのも……と躊躇してしまって。それが間違いでした」

一度許されたと思ったのか、Tさんの庭は格好の「遊び場」と化しました。

サッカーボールが壁にドンドン当たり、自転車で芝生を横切られ、庭は踏み荒らされる。さらに、犬の散歩中の人が、当たり前のようにTさんの敷地内でトイレをさせていく姿も目撃しました。

「ここは公園じゃない!私有地だ!」

そう叫びたい気持ちを抑え、Tさんは一日中、遮光カーテンを閉め切って生活するようになりました。開放感を求めたはずが、逆に「閉鎖的な生活」を強いられることになったのです。

一級建築士が見る“境界線”の意味

Tさんのようなトラブルは、オープン外構を採用した家で非常に多く発生します。

建築士の視点では、塀やフェンスには、防犯だけでなく「心理的な結界」としての重要な役割があります。

1.侵入のハードル
たとえ高さ50cmのメッシュフェンスや、低いチェーンポールがあるだけでも、人は「ここから先は入ってはいけない」と無意識に認識します。何もない状態は、心理的な侵入障壁が「ゼロ」に等しいのです。

2.責任の所在
車が敷地内でUターンしてタイルが割れた、子どもが怪我をしたといったトラブルが起きた際、境界が明確でないと責任の所在が曖昧になり、ご近所トラブルに発展しやすくなります。

後付け工事は3割高になる

「もう限界だ」と、Tさんはフェンスの設置工事を決意しました。

しかし、完成後の庭に後からフェンスを立てるには、植えた芝生を剥がし、コンクリートをハツり(壊し)、基礎を作り直す必要があります。

その見積もりは、新築時にやっていればかからなかった解体費などが上乗せされ、想定よりはるかに高額になりました。

「最初からやっておけばよかった。ケチった数十万円のせいで、こんなにストレスを溜めることになるなんて」

外構における「囲い」は、あなたの敷地を守る「城壁」です。

予算が厳しくても、「道路との境界だけは、何かしらのライン(フェンスや植栽)で明確にする」それを怠ると、あなたの安息の地が、見知らぬ誰かとの“共有財産”になってしまうという事態を招きかねません。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】