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「電球1個変えるのに3万円?」新築購入から8年後、40代夫婦を襲った“維持費の大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.1.6
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「『LEDなら10年は持ちますから、交換なんて忘れた頃ですよ』。その言葉を信じていました。でも、まさかたった1個の電球を変えるために、業者を呼んで、足場を組んで、何万円も払うことになるなんて……」

そう嘆くのは、築8年の注文住宅に住むNさん(40代男性)。

Nさんの自慢は、リビングの天井高5メートルを超える「巨大な吹き抜け」です。

南側の高窓から光が降り注ぎ、開放感は抜群。「モデルハウスみたいですね」と友人たちに褒められるのが何よりの喜びでした。

しかし、新築から8年が過ぎたある夜、その自慢の空間が「金食い虫」へと豹変します。

脚立が届かない…暗闇のリビング

リビングを照らしていた天井付近のダウンライトの一つが、パチッという音と共に切れました。

「あれ、切れちゃったか。週末に変えるか」

Nさんは気軽に考え、ホームセンターで長い脚立を買おうとしました。しかし、天井を見上げて愕然とします。高さは5メートル以上。市販の脚立では到底届きません。

しかも、階段の途中にある微妙な位置で、ハシゴをかけるスペースもありません。

「これ、どうやって変えるんだ?」

嫌な予感がして、家を建てたハウスメーカーのアフターサービスに電話をしました。返ってきた答えは、Nさんを絶句させるものでした。

「高所のため足場が必要です。その高さですと、安全のために室内足場を組むため出張費と作業費合わせて、概算で3万円〜5万円ほどかかります」
「えっ、電球1個ですよ? 電球代なんて数百円ですよね?」

Nさんが食い下がっても、答えは同じでした。

技術料の問題ではなく、「そこに到達するためのコスト」がかかるのです。Nさんの家には、吹き抜けの天井に6個のダウンライトが埋め込まれています。

「もし、来月また別の1個が切れたら?そのたびに3万円払うのか?」

Nさんは、天井の明かりを見上げるたびに、溜息が出るようになってしまいました。

一級建築士が指摘する“照明計画の盲点”

吹き抜けは人気の間取りですが、Nさんのような失敗は非常に多いケースです。

建築士の視点で見ると、これは「メンテナンス計画」の欠如が招いた結果です。

照明器具、シーリングファン、高窓のロールスクリーン。これらは必ず「壊れる」し「汚れる」ものです。しかし、設計段階で「どうやって交換するか」までシミュレーションできている施主は稀です。

特にダウンライトは、埋め込み式でスッキリ見えますが、交換には電気工事士の資格が必要な場合も多く、素人が手出しできない「開かずの間」ならぬ「届かずの明かり」になりがちです。

どうすればよかった?――賢い吹き抜けの作り方

Nさんは結局、切れた電球を放置し、間接照明を増やして凌いでいますが、薄暗いリビングを見るたびに後悔しています。

吹き抜けを採用する場合、維持費で泣かないための鉄則があります。

1.天井に照明を付けない
吹き抜けの天井(一番高い所)には照明を設置せず、メンテナンスが可能な壁面に「ブラケットライト」や「スポットライト」を設置して、壁や天井を照らす手法をとる。これなら脚立で交換可能です。

2.キャットウォーク(点検通路)を作る
デザインの一部として、高所の作業ができる通路(キャットウォーク)を設ける。

3.電動昇降機付きを選ぶ
シャンデリアなどの場合、スイッチ一つで手元まで降りてくる昇降装置を付ける(初期費用はかかります)。

「手の届かない空間」をどうするか

「開放感」は素晴らしいですが、そこには「手の届かない空間」ができるというリスクも潜んでいます。

これから吹き抜けを作る方は、図面を見ながら、「この電球が切れた時、私は自分で交換できますか?」と担当者に聞いてみてください。その答えが「NO」なら、維持費の覚悟を決めるか、照明計画を見直すべきです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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