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新築購入も…たった3年で「デッキ全壊」雪解けを迎えた30代男性が絶望したワケ「足が床を突き破った」【一級建築士は見た】

  • 2025.12.26
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「『やっぱり本物の木は質感が違うね』なんて、最初は自慢げに話していたんです。でも、たった3年で、あんな無残な姿になるなんて……。自然素材を甘く見ていました」

そう後悔するのは、庭付き一戸建てを購入したAさん(30代男性)。

Aさんは、リビングと庭をつなぐウッドデッキにこだわり、風合いの良い「天然木のソフトウッド(針葉樹)」を選びました。

「年に1回塗装すれば大丈夫」と聞いていましたが、仕事と育児に追われ、2年目からはメンテナンスをサボり気味に。

そして迎えた3回目の冬。記録的な大雪が降り、デッキの上に50cmもの雪が積もりましたが、「春になれば溶けるだろう」と放置しました。

春、踏み抜いた床板

3月になり、ようやく雪が溶けたある日。

Aさんが洗濯物を干そうとデッキに出た瞬間、「バキッ!」という嫌な音と共に、足が床板を突き破りました。

「え? と思って足元を見たら、木がボロボロに崩れていて。表面は形を保っていましたが、中はスカスカのスポンジ状に腐っていたんです」

原因は、「雪による長期間の湿潤状態」でした。

塗装が剥げて無防備になった木材の上に、数ヶ月間も雪が乗っていたことで、木材はずっと濡れたままの状態になりました。

これは、木材を腐らせる「木材腐朽菌」にとって最高の繁殖環境です。

特にAさんが選んだソフトウッドは、腐りにくさにおいてはハードウッドや人工木に劣るため、メンテナンス不足が致命傷となりました。

天然木ソフトウッドの「本当の魅力」

ソフトウッドが「悪い素材」なわけではありません。むしろ、メンテナンスさえしっかりできる人にとっては、非常に魅力的な素材です。

  • 肌触りの良さと温かみ:樹脂製の人工木とは違い、夏は熱くなりにくく、冬は冷たくなりにくいのが特徴です。裸足で歩いた時の柔らかさは天然木ならでは。
  • 心地よい香り:ヒノキや杉、レッドシダーなどの天然木は、リラックス効果のある豊かな香りを楽しめます。
  • コストパフォーマンスと加工性:初期費用が安く、DIYでの補修や色の塗り替えも容易です。自分の手で家を育てたい方には最適の素材と言えます。

しかし、これらのメリットを維持するためには、「定期的な塗装」と「こまめな除雪」という手間を惜しまないことが絶対条件となります。

一級建築士が見る“素材選びのミス”

Aさんの失敗は、自分の性格(メンテナンス頻度)と素材の相性を見誤った点にあります。

建築士の視点では、ズボラな性格を自覚している場合、以下の選択肢を推奨します。

1.人工木(樹脂木)を選ぶ
木粉と樹脂を混ぜた素材で、腐ることはありません。質感もリアルになってきており、メンテナンスフリーを望むなら最適解です。

2.ハードウッドを選ぶ
どうしても天然木が良いなら、ウリンやイペなどの「ハードウッド(広葉樹)」を選ぶべきです。鉄のように硬く、塗装なしでも腐りません(ただし高価で施工が大変)。

憧れだけでは維持できない

Aさんは結局、腐ったデッキを全て撤去し、メンテナンス不要のタイルデッキに作り変えました。解体費と新設費で、痛い出費となりました。

「『経年変化を楽しむ』なんて格好いいこと言ってましたが、ただの『経年劣化』でした。手入れできない自分には、天然木は高嶺の花でした」

「本物志向」は素敵ですが、そこには「本気の手入れ」がセットで求められます。

「毎年、塗装できますか? 雪かきできますか?」その問いに自信を持ってYESと言えないなら、耐久性のある素材を選ぶこと。それが、家の美観と安全を守るための策なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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