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新築購入も「電気代が+2万5千円」入居1ヶ月後、30代夫婦が地獄を見たワケ「膝から崩れ落ちた」【一級建築士は見た】

  • 2025.12.24
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「『エアコンの風が苦手なんです』と伝えたら、営業さんが『床暖房なら風が出ないので快適ですよ』と勧めてくれて。30畳のLDK全面に設置しました。でも、冬の電気代の請求書を見て、膝から崩れ落ちました」

そう語るのは、オール電化の戸建て住宅を購入したTさん(30代女性)。

Tさん夫婦の理想は、床暖房だけで過ごす「エアコンのない冬」。

初期費用を抑えるため、床下のパネルに電気を通して温める「電気ヒーター式」の床暖房を採用しました。

入居した12月。「足元からポカポカして最高だね」と、一日中つけっぱなしにして過ごしていましたが、その快適さは長くは続きませんでした。

1ヶ月で“2万5千円”増えた電気代

1月の電気料金のお知らせを見たTさんは目を疑いました。

普段の月より、なんと2万5千円以上も高くなっていたのです。

「漏電かと思いました。でも調べてみたら、原因は明らかに床暖房。毎日美味しいランチを食べに行っているようなものですよ……」

Tさんが採用した「電気ヒーター式」は、初期費用が安い反面、電気を直接熱に変えるため、ランニングコストが非常に高いのが特徴です。

一方、エアコンやエコキュート(ヒートポンプ式)は、空気中の熱を利用するため、同じ熱量を生むのに電気代は約1/2で済みます。

Tさんは、「暖かさの質」ばかりに気を取られ、「ランニングコスト」を試算していませんでした。

一級建築士が教える“床暖房の選び方”

床暖房には大きく分けて「電気式」と「温水式」があります。

Tさんのように、メイン暖房として長時間広範囲で使うなら、「温水式」を選ぶべきでした。

また、床暖房の効き目は「家の断熱性能」に直結します。Tさんの家は断熱性能が低かったため、熱が床下や窓から逃げてしまい、床暖房が常にフルパワーで稼働し続ける「燃費の悪い状態」でした。

1、長時間使うなら温水式
初期費用はかかりますが、ランニングコストが安いため、数年でトータルコストが逆転します。

2、電気式はスポット使い
キッチンや脱衣所など、短時間しか使わない場所に限定するなら電気式も有効です。

3、「基礎断熱」の採用
床暖房の効果を最大化するには、床下に冷気が入り込む「床断熱」では不十分です。床下空間ごと断熱して熱を逃さない「基礎断熱」を採用することが、本当の省エネへの近道です。

高い授業料を払って学んだこと

Tさんは現在、床暖房のスイッチを「封印」し、苦手だったエアコンと厚手の靴下で冬を凌いでいます。

「床に寝転がってゴロゴロする夢は、電気代の恐怖に負けました。設備選びでケチってはいけないことを学びました」

「床暖房」という言葉の響きだけで選ぶと、家計を直撃する大誤算を招きます。

「その暖かさ、1時間いくらですか?」導入前に必ずランニングコストの試算をすること。それが、冬の家計を守る防波堤となります。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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