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憧れのタワマンで迎えた初の正月…40代主婦を襲った“悪臭の落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2025.12.24
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「『ゴミ出しの日を気にしなくていい』。それが、このタワマンを選んだ一番の決め手でした。でも、その便利なシステムが、まさかお正月にあんな地獄絵図を生み出すなんて……」

そう語るのは、都内の湾岸エリアに建つタワーマンションを購入したSさん(40代女性・主婦)。

Sさんが入居したのは、各階に「ゴミステーション」が完備された高級タワーマンション。

わざわざ着替えて1階まで降りる必要もなく、24時間いつでもゴミが出せる生活は、まさにホテルライク。「生活感のない暮らし」に酔いしれていたといいます。

しかし、初めて迎えた年末年始、その幻想は悪臭と共に打ち砕かれました。

正月の朝、廊下に充満する“異臭”

異変が起きたのは、多くの住民が自宅で過ごしていた1月2日のことでした。

親戚を招く予定があったSさんは、溜まったゴミを捨てようと、フロアの共用廊下にあるゴミステーションへ向かいました。

「ドアに近づいた瞬間、今まで嗅いだことのないような生ゴミの酸っぱいにおいが漂ってきたんです。『あれ?』と思ってドアを開けようとしたら……開きませんでした」

鍵がかかっているわけではない。内側から何かがつっかえているのです。

隙間から覗き込むと、そこには天井近くまで積み上がったゴミ袋の山。入りきらなかった段ボールや発泡スチロールが、美しい内廊下にまで溢れ出していました。

「カニの殻やオードブルの容器、酒瓶……。高級タワマンの廊下が、まるで“スラム街”のような惨状になっていたんです」

「24時間ゴミ出し可」の落とし穴

Sさんを襲ったトラブルの原因は、「年末年始の管理体制」と「ゴミ量の激増」のミスマッチでした。

普段、このマンションでは清掃スタッフが毎日各階のゴミを回収し、地下の集積場へ運んでいました。しかし、年末年始(12/31〜1/3)はスタッフも休みで、回収業務がストップしていたのです。

一方で、住民はステイホーム。

通販の段ボール、おせちの容器、大量の空き缶。普段の3倍以上のゴミが排出された結果、狭い各階のゴミ置き場はわずか数日でキャパオーバーを迎えました。

「さらに最悪だったのが、タワマン特有の『内廊下』です。空調が効いていて暖かいので、生ゴミの腐敗が進んでしまって……。エレベーターホールまで悪臭が充満し、とてもお客様を呼べる状態ではありませんでした」

どうすればよかった?――後悔しない物件選び

Sさんはその後、管理組合に働きかけ、翌年から年末年始も特別料金で業者を入れることを検討していますが、その場合、管理費の値上げは避けられません。

「便利なサービスには、必ず人の手が掛かっている。それが止まった時のことを想像できていませんでした」

まだ実績のない「新築」を選ぶ際は、「24時間ゴミ出し可」の言葉だけで安心せず、以下の点を必ず営業担当者に確認してください。

1.ゴミ置き場の「容量」
各階ゴミ置き場の広さは、フロアの世帯数に見合っていますか? 図面を見て、明らかに狭すぎる場合は、連休中に溢れるリスクが高いです。

2.「脱臭・空調」設備
換気扇がついているだけでは不十分です。生ゴミの腐敗を抑える「ゴミ置き場専用のエアコン」や「オゾン脱臭機」が設置されているかを確認してください。内廊下物件ではこれが生命線です。

3.年末年始の「回収計画」
「管理委託契約(案)」において、年末年始の回収業務が「休み」になっていないか?

華やかな共用施設よりも、毎日の生活を支える“裏側の設備”にお金をかけているマンションこそが、本当に住み心地の良い物件なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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