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プラごみの環境汚染、深刻さを増すも各国の足並み揃わず!?

  • 2025.11.26

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国際プラスチック条約」です。

削減は必須だが、各国の足並みを揃えるのは至難

8月にスイス・ジュネーブで「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(通称:国際プラスチック条約)」の策定に向けた政府間交渉委員会(INC)の再開会合であるINC5.2が開催され、決議がなされましたが、合意には至りませんでした。

プラごみによる環境汚染は深刻さを増しており、国際プラスチック条約策定に向けて2022年から5回にわたり交渉が進められてきました。プラスチックの生産、使用、廃棄、回収までのライフサイクルを管理することや、プラスチックの生産削減にも言及しており、なかなか足並みが揃いません。

そもそも「プラスチックの廃止」を求める国と、環境負荷を鑑みながら、今後も使用を維持していこうという国の溝が埋まらないんですね。プラスチックの使用禁止規制をかけている国はルワンダやケニア、インド、モロッコ、イギリスなど。サウジアラビアや中国は規制に反対しており、アメリカ、日本も後者の側にいます。

現在はイノベーションが進み、微生物の分解により、土に返ることのできる生分解性プラスチックや、植物由来のバイオマスプラスチックが開発されています。また、日本では、環境負荷を減らすためのプラスチックのリサイクルやリユースも進んでいます。もし今、日本が「プラスチックゼロ」を目指そうとすれば、工業製品にストップがかかり混乱に陥るでしょう。

2019年に開催されたG20大阪サミットでは日本は2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロまで削減を目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案し、他国に共有を呼びかけていました。

日本のプラスチック生産量は2000年の約1445万tをピークに減少、2019年まで概ね1000万t台を推移、以降は1000万tを切ることが多くなっています。ただ世界的にはプラスチック汚染は近年、急速に広がっています。先進国だけではなく、開発途上国も経済発展する中ではプラの工業製品を使わざるを得ません。プラごみ削減は喫緊のやらねばならないことですが、イノベーションを使い、現実的にできることを進めてほしいと思います。

五月女ケイ子解読員から一言

堀潤の社会のじかん。今回のテーマは「国際プラスチック条約」です。

「昔、CMでバゲットを袋に入れず裸で持ち歩くのを見て、いつかそんな世の中にならないかなと憧れてましたが、日本人の便利好き、綺麗好きな面はエコには結び付きづらそうですよね。イノベーションと同時にある意味、雑さも平気になることも必要かも」

解説員

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

五月女ケイ子

そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2470号(2025年11月5日発売)より

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