1. トップ
  2. 14年前、メロディに込めた“無償の愛” “献血ソング”が今も特別に響くワケ

14年前、メロディに込めた“無償の愛” “献血ソング”が今も特別に響くワケ

  • 2025.12.22

「14年前、どんな“声”があなたの背中を押していた?」

2011年の冬。都会の空気は澄み切っていて、街を歩く若者たちの息が白くほどけていく。まだスマホよりも音楽プレイヤーを手にする人が多かった頃、ふとイヤホンから流れてきた曲に、胸の奥がじんわりあたたまるような感覚を覚えた人もいたはずだ。

そんな記憶の入り口で静かに佇んでいた曲がある。

ゆず『Hey和』(作詞・作曲:北川悠仁)――2011年1月19日発売

ゆずにとって33枚目のシングルとなるこの曲は、日本赤十字社「はたちの献血」キャンペーンソングとして制作された。“誰かのために”という想いが社会全体にやわらかく広がっていた、あの時代の空気にそっと寄り添うように生まれた楽曲だった。

あの日の街に漂っていた“やさしい光”

リリース当時、ゆずはすでに国民的デュオとしての地位を確立していた。だが『Hey和』には、それまでのヒットソングとは少し違う、特別な温度があった。合唱とともに広がるサウンドや、まっすぐなメロディラインが印象的で、聴くたびに心の奥がふっと軽くなるような、そんな安らぎを放っていた。

この“やさしさ”は偶然ではない。もともと北川悠仁が書く楽曲には人の温度を感じさせるものが多いが、『Hey和』は“誰にでも届く”普遍性と“誰かを励ます”メッセージ性が丁寧に織り込まれている。

undefined
2014年、「LIVE TALK on MTV」に出演したゆず(C)SANKEI

ゆずのハーモニーが描く“あたたかい円”

『Hey和』を聴いて真っ先に心に残るのは、二人の声が自然と溶け合って生まれる大きな広がりだ。特にサビ部分では、北川と岩沢の歌声が並列ではなく、寄り添いながら上へ昇っていく。派手に盛り上げるのではなく、そっと手を差し出すような優しさがそこにある。

サウンド面では、アコースティックの質感を軸に、ピアノやストリングスが包み込むように配置され、さらにコーラス隊の合唱で丸い響きが広がっている。

「はたちの献血」が後押しした、時代との共鳴

キャンペーンソングとしての『Hey和』は、テレビCMや街頭のイベントでも繰り返し流れ、多くの若者の耳に届いた。

2011年は、日本にとって忘れられない一年。社会全体が不安や葛藤を抱えていた中で、この曲の“やわらかい祈りのような声”は、結果的により多くの人の心を支える存在になった。

ゆずといえば『夏色』のような勢いのある楽曲や、『栄光の架橋』のような強いメッセージソングも代表作として知られている。その中で『Hey和』は、決して派手ではないが、ゆずの魅力を最も“素直な形”で映し出した一曲だ。

人が誰かを想うとき、言葉は必要以上に飾らない。声はまっすぐ、旋律は優しく、音はあたたかく。ゆずがデビュー当時から大切にしてきた“真心”のようなものが、この曲には強く宿っている。

今もそっと寄り添い続ける“声の輪”

『Hey和』は、ゆずの楽曲の中で“あたたかい余韻”を求められる時に選ばれ続けている。疲れた日、少しだけ希望が欲しい時。誰かの優しさを思い出したい夜。そんな瞬間に、そっと寄り添ってくれる1曲。

14年前に生まれた優しいハーモニーは、時代を越えて、今も変わらず耳元で微笑んでいる、


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。