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19年前、“パパン!”サビで一体化した“手拍子”の衝撃 サビで弾けた“最強キラーチューン”

  • 2025.12.22
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2022年、映画『TELL ME~hideと見た景色~』初日舞台挨拶に登壇した今井翼(C)SANKEI

「19年前の冬、あの“パパン!”って手拍子、みんな自然とやってたよね?」

2000年代半ば、街には新しい携帯電話やドラマの主題歌が溢れ、どこか“加速していく時代の匂い”が漂っていた。寒さの中にも、妙な活気があったあの頃。そんな空気の真ん中に、一瞬でテンションを跳ね上げる“情熱の一曲”が飛び込んできた。

タッキー&翼『Venus』(作詞・作曲:羽場仁志)――2006年1月18日発売

発売されるやいなやランキング初登場1位を記録し、セールスは30万枚以上。だが数字以上に鮮烈だったのは、サビの“パパン!”という手拍子で、日本中が一体化するあの高揚感だった。

情熱が弾ける、冬の空にラテンの風

2006年の年明け、空気はまだ冷たいはずなのに、『Venus』が流れると突然“温度”が上がったような錯覚があった。その理由は、リズムの奥にひそむラテンテイストの熱さだ。

羽場仁志によるメロディは明確に“踊らせる方向”へ向かっていて、CHOKKAKUの編曲がそこに色鮮やかな風を吹き込む。ホーンセクションの跳ねるような輝き、パーカッションが刻むタイトなビート、ピアノが刻むスピード感。

そのすべてが混ざり合って、まるで“真冬に突然現れた情熱の宴”のようなムードを作り上げていた。

そして極めつけは、あのサビだ。

「パパン!」と手を叩く瞬間、聴く側が“参加者”になる。

この参加型の高揚こそが、楽曲の熱量を一気に跳ね上げていた。

タキツバの声が導く、祝祭の時間

タッキー&翼はデビュー当初からダンスナンバーとの相性が抜群だったが、『Venus』ではそれがさらに研ぎ澄まされた。

ふたりの声はどちらも明るさと艶を持ちながら、ユニゾンになると“まっすぐ前へ進む推進力”が生まれる。その強さがラテンの熱をちょうどいい温度へと調整し、華やかさだけでなく“男っぽいかっこよさ”も際立たせていた。

サビに向かう瞬間のツッコミどころのない勢い、そこから手拍子とともに爆発する多幸感

ライブでの盛り上がりは言うまでもなく、MVを観ていても「これは盛り上がるに決まってる」と納得してしまう構成力だった。

“カラオケの魔法”を生んだサビの手拍子

『Venus』がいまもカラオケで愛される理由。それは“サビの手拍子が、歌う人と周りの人を一瞬でつなげる”ところにある。

歌が得意な人でも、苦手な人でも、サビになった途端に“同じ空間にいる仲間”になる。

「パパン!」の手拍子を合わせるだけで、照れも距離も一瞬でほどけていく。

この“みんなが入り込める余白”こそが、カラオケキラーチューンとしての真価だった。

当時の音楽番組でも、手拍子は半ば“お約束”だった。画面の中のファンも、テレビの前の視聴者も、カラオケボックスでも、誰もが同じリズムで手を叩き、同じ瞬間に盛り上がれた。その光景自体が、『Venus』という曲の魅力そのものだった。

製作者たちの“わかってる”音作り

『Venus』を語る上で忘れられないのが、CHOKKAKUの編曲だ。

ジャニーズのダンスナンバーに多く関わってきた彼の手腕は、ここでも存分に発揮されている。音が多いのに整理されていて、派手なのに雑然としない。情熱系リズムとクールなポップ性のバランスが絶妙なのだ。

さらに、羽場仁志のメロディは“踊りやすく歌いやすい”。ラテンのニュアンスを持ちながら、日本のポップとしてのキャッチーさをしっかり保っている。

この“日本のJ-POPとして成立するラテン曲”という絶妙なさじ加減が、異国情緒に偏りすぎず、多くのリスナーを巻き込む結果につながった。

あの手拍子は、19年経っても色褪せない

『Venus』は、時代を超えて“身体で覚えている曲”だ。サビが流れれば自然と手が動き、あの「パパン!」の気持ちよさが甦る。それは単なるノスタルジーではなく、曲そのものが持つ構造的な魅力だ。

19年経った今振り返ってみると、この曲はただのダンスナンバーではなかった。聴く人が参加し、声を合わせ、手拍子でつながる“祝祭”を内包した存在だったのだ。

寒い冬空の下でも情熱は灯せる。そんなシンプルで力強い事実を、タッキー&翼は『Venus』で証明してみせたのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。