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『まだ来ないの?』実は配達員が“正確な到着時間”を答えられないワケ。元ドライバーが明かす現場のリアル

  • 2026.1.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

時間指定の荷物がなかなか届かないと、待っている側は時間がゆっくり流れているように感じてしまいます。
楽しみにしている荷物なら、なおさら気持ちは落ち着かないものです。一分一秒でも早く手元に来てほしいのに、時計ばかり気になってしまう。そんな経験がある方も多いと思います。

指定した時間が終わるまであと少しという場面では、そわそわしたり、荷物が今どこにあるのか気になったり、不安やいら立ちが出てくるのは自然なことです。
私自身も、再配達の電話をいただいたときに「何時ごろ来られますかあ」「この時間帯の中でも少し早めに来てほしい」とお願いされることがよくありました。

お客様にもご都合があるのは理解しています。だからこそ、できるだけ具体的にお伝えしたい気持ちがあるのですが、現場ではどうしても答えられないことが多いのが実情です。
私たち宅配員にも、毎日の流れやエリアの事情、予測できない出来事など、時間に関わるさまざまな制約があります。
全てのお客様のご希望に合わせたいと思っていても、現実には難しい場合が少なくありません。

細かい時間をお伝えできない理由には、実はさまざまな背景があるのです。

宅配ルートが毎日変わる理由

宅配員は、毎日同じ順番で配達しているように見えるかもしれません。
しかし実際は、日によってルートが大きく変わります。荷物の件数や優先したいお客様の場所、集荷の時間など、さまざまな要素が変わるため、その都度ルートを組み直して出発しています。平日と週末、祝日、長期連休では荷物量もまったく違います。

私が担当していたのは、山間部が中心のエリアでした。住宅が密集している地域とは違い、家と家の距離がかなり離れていることも多く、お隣のお宅へ向かうのに車で数分かかることも珍しくありません。

できるだけ無駄なく走れるように、今日は南から東に向かって回るのか、西から走るのか。どのお客様からスタートして、どの方角に進むのが一番効率的なのかを毎朝考えていました。

理想は、地図を一筆書きするように順番に回っていくことです。
しかし現実には、時間指定のお客様が点々と離れた位置にいたり、配達や集荷の時間が決まっている会社もあったりと、思い通りのルートが組めない日も多くありました。

中には「バスのように決まった周回ルートを作ればいいのに」と言われたこともあります。けれど、私が担当していた地域ではこの方法は合いませんでした。畑や田んぼ、木々に囲まれた場所も多く、主要道路沿いに家が並んでいるわけでもありません。少し入り組んだ道の先に家があることも多く、細い道を抜けなければたどり着けないお宅もありました。

そして、毎日必ず同じ家に荷物が届くわけではありません。固定ルートにしてしまうと、かえって効率が落ちてしまうのです。

その日の荷物の状況や時間指定の場所を確認して、どの方向から回るのが一番早くて安全なのか。
この判断を毎回出発前に決めるため、宅配ルートがいつでも同じということは全くありませんでした。

お客様によってかかる時間がまったく違うこともある

宅配の現場では、一件ごとにかかる時間がまったく違います。
玄関先で数秒で受け取ってくださるお客様もいれば、状況によって数分、時にはもっと時間がかかることもあります。

チャイムを鳴らして「はーい」と返事が聞こえたのに、玄関がなかなか開かないこともありました。ほとんどのお客様はすぐに出てきてくださいますが、足が不自由だったり、赤ちゃんのお世話をしていたり、着替えの途中だったりと、すぐに玄関まで来られない理由はさまざまです。

中には、返事をした時点で「玄関はあなたが開けて入ってきてほしい」という独自ルールのお宅もありました。何度かお伺いしていて関係性ができていれば判断できますが、初めてのお宅ではそうはいきません。返事をいただいたからといって勝手に扉を開けることはできず、お互いに玄関が開くのを待つばかりで、外で不安になることもありました。

また、ハンコが見つからず家の中を探されるお客様もいらっしゃいます。こちらがペンを用意していても、他人のペンを使いたくないというお客様もいて、数分お待ちすることもあります。どれもお客様が真剣に対応してくださっている証拠ですが、忙しい時間帯には予想外のタイムロスになってしまうこともありました。

ときには、こんな場面に出会うこともあります。ごみ袋を持ったまま「ちょっと捨ててくるから待ってて」と言われ、そのまま数分戻らないお客様もいました。戻ってきたと思ったら今度は家に入り手を洗い、出てきたかと思ったらさらにペンを探してまた家の中へ戻る。気がつけば5分以上その場を離れられなくなり、時間が止まってほしいと願ったこともありました。

このように、一件一件にかかる時間は本当に読めません。数秒で終わるお客様もいれば、数分かかる場合もあり、状況によっては十数分必要になることもあります。どのお宅でどんな対応が待っているかは、その日になってみないと分からないのです。

予想外の対応が続くと予定がどんどんズレていく

配達の途中では、思いがけない対応に時間を取られることがあります。
その一つが、破損して届いた荷物の確認です。

荷物の外装に明らかな破損がある場合は、配達員が勝手に持ち出すことはできず、まず営業所で確認が必要になります。
その中でも、営業所の判断を経て配達員がお預かりし、最終的にお客様に受け取るかどうかを判断していただくケースもあります。

雨などの湿気で箱が大きく潰れてしまったものの中身に問題がない場合や、外箱の汚れや破れが目立つものなど、開封して確認することができない荷物は、お客様自身に実物を見て受け取るかどうか判断していただく必要があります。
外箱の損傷も含めて荷物の一部と考えるため、この確認にはどうしても時間がかかります。どのくらい時間が必要になるかは、実際にお伺いしてみないと分かりません。

また、代金引換のコレクト便や着払いの荷物は、金銭を扱う分、他の荷物より手間がかかります。
特にコレクト便は、お伺い前に在宅の確認と金額のご案内をする電話が基本ルールで、この時点で数分取られることがあります。

決済方法によってもかかる時間に差が出ます。
現金ならお釣りの準備に時間が取られますし、クレジットカード決済になると専用端末での操作が必要になったりと、細かい作業が求められます。
このとき、端末の通信は携帯電話の電波を使うため、通信状況によっては決済に時間がかかることもあり、電波が届きにくい場所では特に避けたい作業でした。

私が担当していたエリアでは、クレジットカードや電子マネーでの支払いは少なく、現金払いが多かったものの、それでも細かい手間は積み重なります。毎回きっちり金額を準備してくださるお客様のときは、本当にありがたかったです。

これらの対応はどれも必要な仕事ですが、少しずつ積み重なると、次のお客様へ向かう時間に大きく影響します。
一つ一つは数分でも、それが何件も続くと全体のペースが崩れ、時間帯ぎりぎりまで走る日も珍しくありません。

予測が崩れる瞬間は心が折れそうになることもある

時間指定の荷物は、できる限り早く届けたいという気持ちで動いています。
特に時間指定の荷物を預かっているときに、指定の時間帯が終わるまで残り一時間を切ると、私自身も緊張しながら一軒一軒を急ぎ足で回っていました。

そんな中、指定時間が残り30分というときに「まだ届かないんですけど」とお電話をいただいたことがありました。
もちろん、お客様の不安や気持ちも分かっています。待っている間は時間が長く感じるものですし、早く受け取りたい気持ちは痛いほど理解できます。

けれど、こちらも時間に間に合わせようと必死に走っている最中でした。
その電話を受けている数分のあいだにも、本来なら一件でも配達を進めたい。焦りと申し訳なさの間で胸がぎゅっと縮みます。

「時間内にはお届けする予定で、あと数件のところまで来ています。今しばらくお待ちください」とお伝えしたものの、電話を切ったあとは、それまで張ってきた意気込みが一気にしぼんでしまうような、もの悲しい気持ちになりました。

遅れているわけではないのにお客様の不安な気持ちも痛いほど分かるからこそ、その期待に応えきれていない現状がもどかしく、胸が締め付けられる思いでした。

早く受け取りたいお客様の気持ちは分かる。でも、こちらもできる限り急いでいる。
私たちが必死で届けようと全力を尽くしている状況など、お客様がモニター越しに見ているわけではありません。こちらの思いが届かないのは当然のことです。

しかし、その板挟みになる瞬間は、宅配員をしていて本当に心が折れそうになる場面でした。それ以来、指定時間の残り時間が迫ったときに電話が鳴るたび、緊張が高まるようになったのです。

細かい時間がお伝えできないのには理由があります

宅配員が「何時ごろになりますか」と聞かれても、はっきり答えられないのは不親切にしたいわけではありません。
荷物の内容やお客様ごとの対応、想定外の出来事がその日によって変わるため、細かい到着時間を予測するのが難しいのです。前回お届けできた時間と同じ時刻に伺えるとは限りません。

状況によっては、お客様のご希望に添える対応ができることもあります。
ただ、それはあくまで偶然が重なった結果で、狙って再現できるものではありません。プロであっても、すべてのご希望に必ず応えられるわけではないのです。
宅配員たちは皆、それぞれに時間をやりくりしながら一日を組み立てています。

私たちも、お客様が早く受け取りたい気持ちは理解していますし、できる限り早めにお届けしたいと思っています。
それでも、予測通りに進めない場面がどうしてもあり、そのたびに時間と気持ちのバランスを取りながら配達をしているのです。

宅配便の時間指定サービスは、特定の時刻を確約する「時刻指定」ではなく、ご指定いただいた時間「帯」の中でお届けするための目安として設定されています。そのため、日々の交通事情や配達状況によっては、時間帯の比較的早い時間にお伺いできる日もあれば、終了間際になることもございます。私たち配達員は、その時間内に間に合わせるべく日々全力で努めています。

細かい時間をお伝えできない背景を少しでも知っていただけると、宅配員としてもとても救われます。
お互いが少しずつ事情を理解し合えるだけで、受け取りがもっとスムーズになり、気持ちよくやり取りができるようになります。

宅配員自身も荷物が届かない不安をよく知っているからこそ、時間に追われながらも誠意を忘れずにお届けに走っているのです。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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