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25年前、インディーズの曲が1位を獲った奇跡 タイアップなしで40万枚ヒットしたワケ

  • 2025.11.23

「25年前の冬、どんな音が君の心を温めていた?」

2000年の街には、CDショップのウィンドウに並ぶジャケットたちと、乾いた空気を切るようなバンドサウンドが溢れていた。ミレニアムの喧噪が過ぎ、どこか“静かな新世紀”の気配を感じ始めた頃、彼らの一曲が冬空にぽつんと浮かび上がる。

ポルノグラフィティ『サボテン』(作詞:ハルイチ・作曲:シラタマ)――2000年12月6日発売

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2012年、TOKYO FM「DHC COUNTDOWN.jp」に出演したポルノグラフィティ(C)SANKEI

冬の雨のように、そっと染みていく歌

ポルノグラフィティの5枚目のシングルとしてリリースされた『サボテン』は、メンバー自身の手による作詞・作曲であり、タイアップを持たない“純粋な音”だけで勝負した初めてのメジャーシングルだった。

それでも、この曲はランキング初登場1位を記録し、40万枚以上を売り上げている。つまり、“音そのものの力”で人々を惹きつけた証でもあった。

作曲を担当したのは、ベースのシラタマ(Tama)。彼らが大阪でインディーズ活動をしていた頃に『小さな鉢のサボテン』として生まれた楽曲を、時を経てメジャー仕様に磨き上げたものだ。インディーズ時代、彼が多くの楽曲を生み出していたという事実は、ポルノグラフィティの多彩な音楽性を裏付けている。

“湿度のある優しさ”が包み込む

イントロから鳴るアコースティック・ギターの音色は、まるで窓ガラスを伝う雨のように穏やかだ。そこにアキヒト(岡野昭仁)のボーカルが重なると、冷たさよりも先に、静かな温もりが広がっていく。

派手な展開や高揚感ではなく、胸の奥でゆっくり息づくような歌。聴くほどに、雨の午後のような“しっとりとした切なさ”が心を満たしていく。この曲でのアキヒトの声は、力強いシャウトではなく、あくまで語りかけるように優しい。

ハルイチ(新藤晴一)による歌詞とともに、それは“届かない恋”を嘆く声ではなく、“相手を想い続ける優しさ”のようにも聴こえる。ポルノグラフィティのロックに潜む“人肌のあたたかさ”が、ここで初めて明確に表現された。

インディーズの記憶が息づく原点

『サボテン』は、彼らがまだ無名だった頃の想いをそのままに残している。シラタマが中心になって作っていたインディーズ時代の楽曲群の中でも、この曲は特に人気が高く、ライブでもたびたび演奏されていたという。それをメジャーで再録し世に放ったことは、単なる再利用ではなく、“自分たちのルーツを証明する行為”でもあったように思う。

歌詞に描かれるのは、別れの痛みではなく、共に過ごした日々への穏やかな愛情。それは冬の雨のように冷たく見えて、実はとてもあたたかい。悲しみを抱きしめながらも前を向く、そんな“大人の愛”がそこにはある

25年経っても、まだ心に咲いている

『サボテン』というタイトルは、乾いた世界で生き抜く植物を指している。けれど、この曲のサボテンは“孤独”の象徴ではない。むしろ、雨を受けてゆっくり花を咲かせる、人の心の強さと優しさのメタファーなのだ。

今聴いても、あの日の空気が蘇る。冬の窓辺に置かれた鉢の中で、小さな花が静かに咲くように『サボテン』は25年経った今も、変わらず心のどこかで灯り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。