1. トップ
  2. 親「誠意を見せろ」「土下座しろ」教師への“過激な要求”…保護者を訴えることはできる?→教育現場の“驚きの実態”とは

親「誠意を見せろ」「土下座しろ」教師への“過激な要求”…保護者を訴えることはできる?→教育現場の“驚きの実態”とは

  • 2025.10.20
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「うちの子だけ贔屓しろ」「誠意を見せろ、土下座しろ」といった理不尽な要求、深夜にまで及ぶ長電話、SNSでの執拗な誹謗中傷……。一部の保護者による過度なクレームやハラスメント、いわゆる「モンスターペアレント」問題が深刻化し、教員の精神的負担は限界に達しています。

これまで「聖職」として耐えることを強いられがちだった教師たち。しかし、その人権が脅かされるほどの状況で、法的な対抗策を取ることはできないのでしょうか。

今回は、教師が保護者に対して取りうる法的措置の可能性と、その現実的な課題について、じょうばん法律事務所 鬼沢健士 弁護士に詳しく解説していただきます。

教師も一人の人間。度を越した言動には法的措置が可能

まず大前提として、教師が保護者の度を越した言動に対して、法的に訴えることは可能です。

鬼沢弁護士は、「教師だから訴えることはできないということは全くなく、教師個人の権利が不当に侵害されれば、そのことを理由に賠償請求することができる」と明かします。

保護者には、子どもの教育に関して学校に要望を伝え、批判する正当な権利があります。しかし、それが教師の人格を攻撃するような内容であったり、教育という本来の目的から逸脱した要求であったりする場合には、話は別です。教師も法的に保護されるべき一人の人間であり、その権利は守られなければなりません。

SNSでの誹謗中傷は「侮辱罪」、脅しは「脅迫罪」に

保護者の行為が悪質な場合、犯罪として刑事告訴の対象となり得ます。

具体的にどのような行為が問われるのでしょうか。

侮辱罪(刑法231条) 
「事実を摘示せず、公然と人を侮辱した場合」に成立します。例えば、SNSや第三者がいる前で「○○(教師)は無能だ。」などと発言する行為がこれにあたります。

脅迫罪(刑法222条1項)
相手やその親族の「生命、身体、自由、名誉または財産」に対して害を加える旨を告知した場合に成立します。「うちの子をひいきにしないと、○○するぞ。」といった言動は脅迫罪にあたる可能性があります。

このほかにも、学校に押しかけて「帰れ」と言われても居座り続ける「不退去罪(刑法130条)」、胸ぐらを掴むなどの暴力をふるう「暴行罪(刑法208条)」、それによって怪我をさせれば「傷害罪(刑法204条)」など、保護者の行為によって様々な犯罪が成立し得ます。

精神的苦痛には「慰謝料」を請求

刑事罰を求める刑事告訴とは別に、民事訴訟を通じて、受けた損害の賠償を求めることも可能です。

請求内容の中心となるのは、精神的苦痛に対する「慰謝料」です。度重なる理不尽な要求や誹謗中傷によってうつ病などの精神疾患を患ってしまった場合、慰謝料請求が考えられます。

また、保護者から暴行を受けて怪我をした場合には、慰謝料に加えて治療費などを請求することもできます。

訴訟の現実的な壁と、それでも闘う意味

法的措置という選択肢がある一方で、教師が個人で訴訟を起こすことには現実的な課題も存在します。

1. 費用倒れのリスク
現状、仮に裁判で勝訴して賠償責任が認められたとしても、その金額は高額になるとは限りません。パワハラなど類似の事案では数十万円から100万円程度が相場となるケースも多く、訴訟にかかる弁護士費用などを考えると、費用倒れになってしまう可能性がありえます。

2. 心理的なハードル 
「生徒本人に非はないのに、その保護者を訴えることへの抵抗感」も、教師が訴訟をためらう大きな要因です。子どもへの影響を考え、事を荒立てたくないと考えるのは自然な感情でしょう。

しかし、これらの課題があるとしても、勇気をもって毅然とした対応をとることは、その保護者の異常な行為に対する強力な抑止力となり得ます。

教師を孤立させないために。学校・教育委員会がすべきこと

モンスターペアレント問題は、決して教師一人が抱え込むべきではありません。

まずは、教師が対応するべき範囲を明確にしておき、「それ以外の対応はできない」ということをきっぱり述べることが重要です。

さらに、過剰な要求が繰り返された場合には、保護者に対して損害賠償請求をすることや警察に通報することの警告をためらわず行うことです。

特に長時間学校に居座ることや、電話を続けるなどの行為は、教師の業務に支障が生じます。繰り返される前に対処するべきです。

毅然とした対応が、教師と子どもたちの未来を守る

これまで「聖職」という言葉のもとに、多くの教師が理不尽な要求にも耐えなければならないという風潮がありました。しかし、教師も一人の人間として、法によって守られるべき権利を持っています。度を越した言動に対しては、刑事告訴や民事訴訟といった法的な対抗手段が確かに存在するのです。

もちろん、個人で訴訟に踏み切ることには金銭的、精神的なハードルがあります。だからこそ、個々の教師が一人で問題を抱え込むのではなく、学校や教育委員会が組織として毅然とした対応方針を定め、教師を守るための具体的な体制を築くことが不可欠です。

教師が安心して教育に専念できる環境を守ることは、最終的に子どもたちの利益にも繋がります。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

undefined

 

茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。