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『ATM封筒』の大量持ち去り→転売に議論「規制すべき」「ただの窃盗では」→“ご自由にお取りください”は法的にどこまでOK?

  • 2025.10.18
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

銀行のATMコーナーに置かれている現金用の封筒。多くの人が当たり前のように利用するこの無料サービスを悪用し、大量に持ち去ってフリマサイトで転売する行為が、SNSで物議を醸しています。

「ご自由にお取りくださいと書いてあるのだから問題ない」という意見がある一方、「窃盗ではないか」「本当に必要な人が使えなくなる」といった批判が殺到し、議論は絶えません。

無料で提供されているものを、想定外の目的で大量に持ち去り利益を得る行為は、法的にどのように判断されるのでしょうか。窃窃盗罪にあたる可能性や、銀行側が取りうる対策について、じょうばん法律事務所 鬼沢健士 弁護士に詳しく解説していただきました。

「ご自由に」は無制限ではない?窃盗罪成立の可能性

「ご自由にお取りください」と書かれた無料の封筒を持ち去る行為は、果たして犯罪になるのでしょうか。

結論から言うと、刑法235条に規定されている「窃盗罪」にあたる可能性があります

窃盗罪は「他人の財物を窃取した」場合に成立しますが、今回のケースはこの要件を満たすと考えられるのです。

まず、無料の封筒であっても、フリマサイトで売買が成立している現状から「財物(財産的な価値がある物)」に該当します。そして最も重要なのが「窃取」、つまり「持ち主(占有者)の意思に反して持ち去る」という点です。

銀行側は、ATM利用者が現金を入れるために1人数枚程度利用することを想定して封筒を設置しています。転売目的で大量に持ち去ることは、この想定を明らかに逸脱しており、銀行の意思に反する行為であるため「窃取」と見なされ、窃盗罪が成立する可能性が高いのです。

何枚からが犯罪?判断の分かれ目となる「目的」

では、具体的に何枚持ち去ると「犯罪」になるのでしょうか。

実は「10枚ならOK、100枚ならアウト」といった明確な枚数の基準はありません。法的な判断基準は、あくまで「金融機関(占有者)の意思に反するかどうか」です。

例えば、引き出した現金を仕分けるために多めの枚数をもらう行為は、金融機関が許容する範囲内かもしれません。しかし、たとえ1枚であっても転売する目的で持ち去れば、それは銀行の意思に反するため、理論上は窃盗罪にあたる可能性があります。

とはいえ、持ち去った人の内心の目的を外部から判断するのは困難です。そのため、現実的には少ない枚数で立件される可能性は低いでしょう。今後、金融機関が「お一人様〇枚まで」といった注意書きを明示すれば、目的を問わず、その枚数を超えた時点でより明確に違法性が問われることになります。

逮捕や前科は?そして「買った側」にも重い罪のリスク

封筒の被害額は少額ですが、それでも逮捕されたり、前科がついたりすることはあるのでしょうか。

被害額の大きさは捜査機関が逮捕や起訴を判断する上で重要な要素であり、封筒数百枚でも価値は数百円程度であるため、一度の行為でただちに逮捕・起訴される可能性は低いと考えられます。

しかし、何度も繰り返し大量に持ち去り、他の利用者が使えなくなる事態を招いたり、銀行から注意されてもやめなかったりといった悪質なケースでは、逮捕・起訴に至る可能性は十分にあります。

さらに、問題は売る側だけにとどまりません。フリマサイトでこれらの封筒を「盗品」と知りながら購入した場合、「盗品等有償譲受け罪」という重い罪に問われる可能性があります。この罪の法定刑は窃盗罪と同じ「十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金」であり、購入者にも極めて大きな法的リスクがあると言えるでしょう。

軽い気持ちが招く、売り手と買い手の法的責任

ATMの無料封筒の転売問題は、単なるマナー違反ではなく、売り手にも買い手にも明確な法的リスクを伴う行為です。

「無料だから」「誰も見ていないから」という軽い気持ちで行ったことが、窃盗罪や盗品等有償譲受け罪といった犯罪になり得ます。特に、盗品と認識して購入した側に、窃盗犯と同じ重い罰則が科される可能性があることは、あまり知られていません。

この問題は、社会の善意によって成り立っているサービスを一部の人間が私利私欲のために悪用する行為であり、その代償は決して小さくないことを、売る側も買う側も認識する必要があるでしょう。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。