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「猛烈に泣きたくなる」30年後も絶賛される“激しいギターフレーズの繊細バラード” ピュアで力強い“透明な一曲”

  • 2025.9.23

「30年前の冬、あなたはどんな音楽に心を委ねていただろう?」

1995年の始まり。街にはまだ正月の賑わいが残り、ショーウィンドウには福袋やバーゲンの文字が踊っていた。けれども、そのきらびやかさの裏側では、バブル崩壊の余韻が人々の暮らしに重くのしかかり、日常にはどこか切なさを帯びた空気が流れていた。

ニュースや雑誌には不安をにじませる話題も多く、誰もが心の奥に小さな影を抱えていた時代。そのなかで、そっと胸に沁み込むように響いたのが、一曲のバラードだった。

JUDY AND MARY『小さな頃から』(作詞:YUKI・作曲:恩田快人)——1995年1月21日発売

6枚目のシングルとして、2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』(1994年)からシングルカットされた本作。アルバム自体が約70万枚を売り上げるヒットを記録するなかで、この楽曲は作品全体の中で“静かな光”のような存在となり、多くのリスナーの記憶に深く刻まれていった。

透き通る歌声に抱きしめられるような時間

JUDY AND MARYといえば勢いあるポップパンクやキャッチーなロックをイメージする人も多いだろう。しかし、この楽曲は透明感のあるミディアムバラードとして、聴いた人の心に優しく寄り添い続けている。

YUKIのボーカルは、少女のような無垢さと、大人へと成長していく強さを同時に宿している。その伸びやかで澄み切った声は、聴く者を抱きしめるように包み込み、聴き終えたあとにもしばらく余韻が残る。バンドの中で繊細に、そして温かく響く歌声を体感できる一曲だ。

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JUDY AND MARYのボーカル・YUKI-1998年撮影 (C)SANKEI

ギターのきらめきとリズムの支えが描く風景

この楽曲の美しさをさらに際立たせているのは、TAKUYAのギターが奏でる繊細なフレーズだ。きらめく光の粒のようなアルペジオで旋律を支え、時折差し込まれる歪みサウンドと激しいギターソロ、YUKIの声と絡み合いながら楽曲全体をきらびやかに彩っていく。そこに恩田快人のベースと五十嵐公太のドラムが重なり、しっかりとしたリズムを刻みつつも決して前へ出すぎることなく、静かに下支えをする。

そのアンサンブルはまるで、思い出の中で柔らかく揺れる光景のようで、聴くたびに“懐かしさ”と“安心感”が同時に押し寄せる。音と歌が一体となり、誰の心にも情景を描かせる力を持っている。

今も心に生き続ける余韻の旋律

『ORANGE SUNSHINE』期のJUDY AND MARYは、まだポップパンク的な疾走感と、繊細でエモーショナルな表現との両立を模索していた時期だった。その中で『小さな頃から』は、バンドが持つ音楽性の幅広さと、メロディアスな側面を最も鮮やかに示した楽曲といえる。

YUKIの声に導かれるその余韻は、30年経った今もなお消えることなく、聴く人それぞれの“あの頃”を呼び覚ましてくれる。「猛烈に泣きたくなる」「歌詞が刺さりすぎる…」「イントロから泣きそう」「ギターのフレーズ神」など評する声も少なくない。

季節や場所を超えて、変わらず寄り添い続ける――それこそが、この楽曲が奇跡のように愛され続ける理由なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。