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「衝撃受けた」「これ作れるの天才」20年後も聴き惚れる“焼肉のラブソング” ユーモア×色気の“おふざけタイトルポップ”

  • 2025.9.22

「20年前の冬、あなたはどんな音楽に耳を傾けていた?」

2005年の街には、最新のヒット曲がコンビニの有線やカラオケボックスから絶えず流れていた。ポップスもロックも百花繚乱、R&Bやヒップホップも勢いを増していた時代に、ふと飛び込んできたのは“焼肉のメニュー”を冠した不思議なタイトル。ユーモラスさと艶やかさが同居する一曲は、当時の音楽シーンの中でも強烈な個性を放っていた。

大塚愛『黒毛和牛上塩タン焼680円』(作詞・作曲:愛)――2005年2月9日発売

焼肉と恋が交差する不思議な瞬間

このシングルは大塚愛にとって7枚目のシングルであり、2004年にリリースされたアルバム『LOVE JAM』に収録された『黒毛和牛上塩タン焼735円』のシングルカット扱い。ただし日本テレビ系アニメ『ブラック・ジャック』の初代エンディングテーマとして先にオンエアされていたため、リスナーの耳にはアルバム版よりも早く届いていた。

「アニメの余韻と焼肉ソング」という組み合わせが、なんとも異色でユニークだったことは、当時の空気を知る人ならすぐに思い出せるだろう。

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2006年、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』ジャパンプレミアに登場した大塚愛 (C)SANKEI

艶めく言葉に潜んだ大人の影

この楽曲の最大の特徴は、歌詞が持つ二面性にある。金網と焼肉の関係を、男女の関係に重ね合わせるという、大胆で艶やかな比喩が全体を貫いているのだ。

伸びやかなメロディに乗りながら、聴けば聴くほど色気を感じさせる内容は、大塚愛の持つキュートでポップなイメージとのギャップを際立たせた。聴き手の想像をじわじわ掻き立てる“艶やかさ”が、この曲の隠れた魅力となっている。

さらに、カップリング曲の『つくね70円』は、その表現がより直接的で、艶やかさの温度を一段上げた内容となっていた。おどけたタイトルに反して、中身は大人びたニュアンスをはらんでおり、アーティストとしての大塚愛が持つ“別の顔”を垣間見せるものだった。

このシングル1枚で、彼女の音楽的な振れ幅を実感したファンも多かったに違いない。

札に隠された小さな物語

このシングルは、タイトルだけでなく収録曲全体に仕掛けが隠されている。『本マグロ中トロ三〇〇円(緑色)』『つくね70円』と続き、3曲の値段を合計するとちょうど当時のシングル価格である「1050円」になる。

こうした細部にまで行き届いた遊び心は、単なるネタではなく、“作品全体を小さなコンセプトアルバムのように楽しませる工夫”として際立っていた。

リスナーをクスリと笑わせながらも、しっかりと音楽的な完成度で魅了する二重構造が、大塚愛らしい持ち味といえる。

ポップシーンに刻まれた異彩の足跡

2005年当時の大塚愛は、『さくらんぼ』の爆発的ヒットで国民的な人気を得た後、『大好きだよ。』や『金魚花火』などのラブソングで若い世代の共感を集めていた。そんな中で送り出された“焼肉ラブソング”は、彼女にとって大胆な挑戦でもあっただろう。タイトルの奇抜さもあり、この異色作は確実に人々の記憶に残ることとなった。

『黒毛和牛上塩タン焼680円』は、ユーモアと色気を両立させた稀有なシングルとして、今も語り継がれている。キュートさと大人っぽさ、その両面を併せ持つことこそが大塚愛というアーティストの魅力であり、この曲はその象徴的な存在だ。

この曲を聴いたファンからは「衝撃受けた」「これ作れるの天才」「どハマりしてた」「めっちゃキュートな曲」と20年経った今でも絶賛の声が飛び交う。

何気なく耳にしたときに思わず「そうそう、こんな曲あったよね」と語りたくなる“時代の香り”を持った一枚といえるだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。