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「死者をひとりも出さない」“強い信念”の『TOKYO MER』はなぜ“絶大な支持”をされるのか 視聴者の“心情”を突き動かす名作の魅力

  • 2025.8.29
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映画「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』」(C)SANKEI

8月1日に公開された『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』。2021年7月期にTBS日曜劇場枠にて連続ドラマとして放送され、2023年4月28日には劇場版第一弾が公開となった。

約2年ごとに新作が観られるのはTOKYO MERファンとしては嬉しいところ。新作が次々と制作される作品の魅力はどういったところにあるのだろうか。

TOKYO MERに通底する信念

最新の医療設備を備えた「ERカー」で事故や災害現場へと駆けつけるTOKYO MER。車内で手術も行えることから「走る緊急救命室」と呼ばれている……というわけだ。救急搬送中に救えない命も、ERカーがあれば救えることがある。

東京都知事・赤塚(石田ゆり子)が誕生させた「TOKYO MER」の使命はひとつ。「死者をひとりも出さないこと」。

当たり前だが、簡単なことではない。大規模な事故、災害になればなおさらだ。ただ、TOKYO MERのメンバー全員にその使命が染みついている。医療従事者として、もちろん「目の前の人を助ける」という想いを持っているだろうが、救急の現場に急行することでその想いはドラマで回を追うごとに強くなっていくのが感じられた。

そして、実際に死者を出さない。それは視聴者側としても安心感につながる。「TOKYO MERが来れば大丈夫」という安心感は医療版アベンジャーズのよう。

ただ、だからと言って「絶対に大丈夫」とまでは感じさせない。作中では死者が一名だけ出ているからだ。それも「TOKYO MER」にとって大事な人物が亡くなった。

その一名の命が奪われたことによって、人間は強いけれど、命はもろくもある、ということを知らしめてくれている。それが物語への緊張感にもつながっている。

リアルな医療シーン

医療に詳しくないイチ視聴者として観ていても、手術シーン、治療シーンにハッと息を呑んでしまう。

よく分からないながらに、これはリアルなものなのだろう、と思わされるのだ。奇跡は都合よくは起こらないし、現場が判断を間違えれば取り返しのつかないことが起こる。医師も万能ではない。TOKYO MERも人間だから迷うこともあるし、ためらうこともある。しかし、それが全て人の命に繋がっている、だから緊張感をもって取り組むんでいるのだという一種の決意のようなものが伝わるリアリティがある。

人が救われることに人は感動する

『TOKYO MER~走る緊急救命室~』がオンエアされたのはコロナ禍真っただ中だ。多くの人が経験したことがない状況に不安になり、自分自身の命の危うさを感じた人だっているだろう。同時にどれだけの医療従事者が苦心し、文字通り命がけで多くの人たちを救ってきたかを改めて知ることになった人もいるだろう。

人を救うために危険を顧みずに現場に赴き、戦う。その姿は誰もが憧れる「ヒーロー」と重なる。

『TOKYO MER』の人気がコロナ禍で終わらなかったのは、作品のおもしろさはもちろんあるだろうが、現代社会において「ピンチのときに助けてくれるヒーロー」を求めた結果だったのかもしれない。

そして、何より、誰かが救われることはシンプルに感動する。日々、私たちは「明日死ぬ」と思って生きていない。その死が突然間近に迫ったとしたら? その恐ろしさが作中でリアルに実感させられる。だからこそ、救われたときの感動は大きい。

仲間が増えていくことへの喜び

最初は反発も大きかったTOKYO MER。しかし、彼らの医療と命に対する真摯な向き合い方が支持者を増やし、仲間を増やしていく。そんな様子もワクワクする要素のひとつ。ひとりでできることは少ない。仲間が増えていくからこそ、できることも、救える命も増えていく。「死者をひとりも出さないこと」というシンプルだけど難しい目標も叶えられそうな気がしてくる。

いつか、MERが私たちが知らないところで今日も誰かの命を救っているかもしれない、という未来が来るかもしれないと思うとほんの少し、明日に希望が持てそうだ。