２５年前、日本中が痺れた“和×洋の都会的ラップアンセム”　J-POPの常識を塗り替えた“緻密なクラブソング”

「25年前、街を揺らしていた“あのラップ”を覚えてる？」

2000年の東京。渋谷のスクランブル交差点には大音量の音楽を流すビジョンが輝き、夜になればクラブから鳴り響くビートが街を揺らしていた。人々はタワーレコードやTSUTAYAの試聴機で新曲を探し、雑誌からクラブシーンの最新情報を得ていた。

そんな時代に、シーンの中で存在感を高めていた3人組が放った楽曲は、強烈な一撃を刻み込むことになった。

m-flo『How You Like Me Now?』（作詞・作曲：m-flo）——2000年9月6日発売

“3人の化学反応”が生んだ決定打

『How You Like Me Now?』は、m-floにとって8枚目のシングル。ここまでの活動ですでにシーンでの評価を得ていたが、この作品で彼らのスタイルは一層洗練された。VERBALの緻密なラップ、LISAの伸びやかなボーカル、そして☆Takuの鋭いトラックメイキングが一体となり、グループの個性が一枚のシングルに凝縮されたのだ。

タイアップはTDKのCM。テレビから流れると、多くの視聴者が「これは誰だ？」と振り返った。結果として20万枚を超えるセールスを記録し、クラブ発のサウンドを大衆に浸透させる契機となった。

独自のセンスが生んだ“都会の響き”

VERBALのラップは英語と日本語を自在に行き来しながらも、いわゆる「日本語ラップ」とはまったく異なる質感を放っていた。重さや泥臭さではなく、クールで都会的なフロウ。そこにLISAのソウルフルかつ透明感ある歌声が重なり、聴き手を一瞬で非日常へと引き込んでいく。

さらに☆Takuのトラックは、クラブ由来の重低音に加え、きらびやかでどこか浮遊感を帯びたメロディが同居し、当時のJ-POPにはなかった“独特の空気”を生み出していた。

ラップと歌が単に共存するのではなく、それぞれが主役としてぶつかり合いながらも調和する。そのスタイルは、シーンにおいて際立った存在感を放っていた。

ライブを熱狂に変える“始まりの合図”

このシングルは、翌2001年のアルバム『EXPO EXPO』に収録される。アルバムバージョンではアカペラのラップで始まるが、ライブではその冒頭が響くと、会場全体が一気に熱を帯び、観客の歓声がフロアを包む。まさに“始まりの合図”として機能する瞬間だ。

その後リリースされた『come again』が印象強い人も少なくないかもしれないが、『How You Like Me Now?』はその前夜を告げる曲ではなく、むしろ「m-floらしさが全開になった決定打」と言っていいだろう。

m-floは、クラブのリアルを武器にしながらメジャーのフィールドで勝負するという稀有な存在だった。『How You Like Me Now?』は、その象徴的な1曲だ。渋谷や六本木のクラブではDJがターンテーブルを回し、街のファッション誌ではB-BOYカルチャーが特集される。そんな風景の中で流れるこの楽曲は、アンダーグラウンドとメインストリームをつなぐ“橋”そのものだった。

25年後も色あせないサウンドメイク

あれから25年。クラブの床を震わせた重低音、夜の街を走る車のスピーカーから響いたフロウ、カラオケルームで友人たちと声を重ね合った瞬間——『How You Like Me Now?』を聴けば、当時の断片的な記憶が一気に蘇ってくる。

それは単なる楽曲の記憶ではなく、2000年という時代そのものの匂いや景色と結びついている。まだCDを買うためにショップへ足を運び、雑誌で新曲情報を追いかけていた頃の高揚感。街のスピーカーから流れてくるビートに思わず足を止めた感覚。そうした記憶のすべてが、この曲の一音一音に刻まれている。

四半世紀を経た今聴いても、古びるどころかむしろ新鮮さを失っていない。『How You Like Me Now?』は、懐かしさと同時に“今も生きている曲”として耳に届く。

25年前に描かれた都会の熱気と、今だからこそ感じる普遍性。その両方を抱えながら、この曲はこれからも聴く人の心にリズムを刻み続けるだろう。

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※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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