1. トップ
  2. 20年前、12週連続リリースを告げた“型破りな革命曲” 定番をやめて敢えて選んだ“ささやきの静寂バラード”

20年前、12週連続リリースを告げた“型破りな革命曲” 定番をやめて敢えて選んだ“ささやきの静寂バラード”

  • 2025.9.7

「20年前の冬、どんな音楽が街を流れていたか覚えてる?」

2005年の12月。街はクリスマスイルミネーションに照らされ、カップルたちが腕を組んで歩く姿があちこちで見られた。携帯電話からは着うたが流れ、街角のCDショップには年末商戦を彩る新譜が並び、誰もが音楽とともに季節を過ごしていた。

そんな華やかな時代に始まった“12週連続シングルリリース”の挑戦。その最初の1曲に選ばれたのは、華やかさとは対照的な、静かな余白を持つバラードだった。

倖田來未『you』(作詞:Kumi Koda・作曲:Kumi Koda、Toko Kuzuya)——2005年12月7日発売

彼女にとって19枚目のシングルであり、「12週連続シングルリリース企画」の幕開けを告げる作品だった。遠く離れた恋人への思いを描いた切ないバラードは、チャート1位を獲得する作品となり、その後のキャリアを大きく方向づける記念碑的な一曲となった。

undefined
2005年、第47回輝く!日本レコード大賞 レコード大賞を受賞し、熱唱する倖田來未(C)SANKEI

ささやくような歌声が描いた冬の情景

『you』を聴いたときにまず印象に残るのは、倖田來未のボーカルが放つ“親密なささやき”だ。この曲ではあえて感情を抑え込み、吐息を含むような柔らかさで旋律をなぞっている。

その繊細な声は、冬の寒さの中でふと漏らす吐息や、街灯の下で響く小さな会話のように、静かな夜にそっと寄り添う。

編曲はピアノを軸にしたシンプルな構成で、彼女の声の存在感が際立つ仕上がりになっている。サビで広がるストリングスが、遠くにいる誰かへの想いを増幅させ、その余韻が聴き手の胸に沁みていく。

12週連続リリースという前人未踏の挑戦

2005年12月から2006年2月までの3か月間、倖田來未は毎週シングルを発売し続けるという前代未聞のプロジェクトに挑んだ。当時、CD市場は依然として巨大で、1曲1曲を丁寧に売るのが主流のなかで、この企画はまさに型破りだった。

その第1弾に選ばれたのが『you』だったことは象徴的だ。通常なら連続リリースの口火を切るのは、勢いを象徴するアップテンポの曲が定番。しかし、倖田はあえて静かなバラードを選び、自分の歌声そのものを武器にリスナーを引き込んだ。

自身初の1位が持つ意味

当時の倖田來未は、メディアで派手なビジュアルや露出にフォーカスされることが多かった。だが、この曲ではそうした演出を排し、歌声の力だけで評価を勝ち取った。

リスナーに届いたのは、彼女が秘めていた真摯な表現力だった。セクシーさや挑発性といったイメージを越えて、「こんなにも静かに人の心を揺らすことができる歌手」であると証明した瞬間。『you』が記録した1位は、倖田來未が単なる時代のアイコンではなく、“音楽を語るべき存在”であることを示す出来事だった。

時代とともに残る余韻

『you』が世に出た2005年、日本の音楽シーンはCD全盛の最終章にあった。ランキング番組はゴールデンタイムに放送され、レコードショップには試聴機が並び、人々はまだ“音楽を手に入れる”喜びを大切にしていた。

そんな賑やかな時代に、この静かなバラードが冬の街に流れたことは象徴的だ。華やかなダンスナンバーや派手なタイアップが並ぶ中で、『you』はむしろ“余白”で勝負し、聴く人の心を深くとらえた。

あれから20年。音楽の聴き方は配信やサブスクへと移り変わり、当時のようにCDショップで列を作る風景はもう見られない。それでも、冬の冷たい空気の中でふと『you』を耳にすると、街の灯りや人の温もりを感じたあの頃の記憶がよみがえる。

——挑戦の第一歩として生まれたこの曲は、20年経った今もなお、冬の夜に静かに寄り添い続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。


【体験談募集】結婚式当日に「ブス子はどこ行った!?」実姉からの罵声の嵐に「コイツは許さん」【2分で完了/匿名OK】