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30年前、日本中が痺れた“無邪気なソウルフルポップ” ラブソングイメージを脱却した“一打逆転の青春ソング”

  • 2025.9.7

「30年前の夏、夕暮れのグラウンドに響いた音楽を覚えてる?」

1995年の日本。新しい時代の息吹が音楽にも感じられるようになっていた。テレビの前に座った木曜の夜、野球アニメのオープニングに流れたのは、久保田利伸が放った鮮烈な一曲だった。

久保田利伸『虹のグランドスラム』(作詞・作曲:久保田利伸)——1995年7月7日発売

青春のフィールドに響いたFunkyPOPS

『虹のグランドスラム』は、あだち充原作のアニメ『H2』(テレビ朝日系)のオープニングテーマとして放送開始から番組を牽引した。毎週木曜19時、夕食の前にテレビをつけると、野球と恋愛を交差させた物語と共に、久保田のソウルフルな歌声が家庭に広がった。

15枚目のシングルにして、彼にとって初のアニメソング。この意外な選択には、学生時代に野球部で汗を流した久保田自身の経験も色濃く反映されていた。単なるタイアップに留まらず、青春の汗と光を封じ込めた“野球部出身者ならでは”の真実味が漂っていた。

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1996年、コンサートで歌う久保田利伸 (C)SANKEI

駆け抜けるリズム、舞い上がる声

イントロから溢れ出すのは、グラウンドに響く掛け声のような力強いリズム。打席に立つ瞬間の緊張感や、ベンチからの声援が重なるように、サウンドは一気に加速していく。

そこに重なる久保田のボーカルは、ソウルフルでありながらどこか無邪気さを残している。野球の試合で“ここ一番”を狙う高揚感と、青春時代に抱いた恋や友情のざわめきが、歌声の中に同居していた。

「虹のグランドスラム」というフレーズが放たれる瞬間、聴き手の心は一打逆転の歓喜に包まれる。それはまさに、音楽が野球の勝負と同じ熱を帯びた稀有な瞬間だった。

久保田といえば都会的で洗練されたラブソングのイメージが強い。そんな彼がアニメソングを歌うことは、多くのリスナーにとっても新鮮な驚きだった。久保田はあえてそこに、ポップとソウルを交差させた新しい扉を開いた それは、アニメとアーティストの垣根を超える大きな布石でもあった。

『H2』の青春とシンクロする旋律

あだち充が描いた『H2』は、野球部の仲間たちとの友情、そして恋愛の揺れを描く青春物語。オープニングに流れる『虹のグランドスラム』は、その世界観に寄り添いながらも、単なる背景ではなく物語の熱を引き上げる存在だった。

バットを振り抜く瞬間の緊張、夏のグラウンドに響く蝉の声、恋に揺れる心の迷い。久保田の歌声は、そのすべてを抱き込んで、30分のアニメをさらに鮮やかに照らした。

特に当時、部活動に励んでいた中高生にとっては、まさに自分たちの日常とシンクロする応援歌のように響いたのではないだろうか。

今も鳴り響く青春の残響

あれから30年。携帯電話もインターネットもまだ普及途上だったあの時代に、テレビから流れる音楽は「毎週の合図」であり、「青春の伴走者」だった。

『虹のグランドスラム』を聴けば、真夏のグラウンドに白球を追った記憶や、夕暮れの商店街を駆け抜けた帰り道がよみがえる。

青春の一瞬を切り取ったこの曲は、数字では測れない余韻を今もなお残している。勝負と夢、仲間と恋。すべてをひとつの旋律に乗せた“虹の歌”は、時代を超えて輝き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。


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