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朝ドラで“初登場とは思えない”圧倒的な存在感が話題に「似過ぎ」「出れるなんて…」難しい役柄も見事にこなした“若手俳優の凄み”

  • 2025.9.2
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『あんぱん』第20週(C)NHK

漫画家のやなせたかしとその妻・暢をモデルにした物語として大きな注目を集めている、朝ドラ『あんぱん』。ヒロイン・のぶ(今田美桜)と夫・嵩(北村匠海)が、幾多の困難を乗り越えて『アンパンマン』に象徴される“逆転しない正義”へとたどり着くまでを描く壮大なドラマだ。そのなかでひときわ強烈なクセを放っていたのが、藤堂日向演じる六原永輔である。

初の朝ドラ出演と「六原永輔」という役柄

六原は、気鋭の演出家であり作詞家、構成作家というマルチな才能を持ちながらも、ひらめき型でどこか変わり者の人物として描かれる。嵩に『見上げてごらん夜の星を』の舞台美術を依頼する存在として登場し、物語に鮮烈な刺激を与える。登場した瞬間からSNS上でも「永六輔さんに似過ぎ」「朝ドラの役に出れるなんて……」と感動の声に溢れた。

2025年7月23日公開のNHK公式のコメントで藤堂自身が「朝ドラ出演は役者を志した時からの夢だった」と語っている通り、その演技からは作品への真摯な思いと覚悟が滲み出ていた。

役者を志した時から、朝ドラに出ることが一つの大きな目標でした。朝ドラ初出演、心の底から感謝の気持ちでいっぱいです。引用元:NHK公式 2025年7月23日より

藤堂日向は、映画『東京リベンジャーズ』シリーズや『神回』『遺書、公開。』など、話題作に次々と出演し存在感を示してきた。若者の刹那的なエネルギーを体現する役から、静謐で繊細な人物まで、幅広い役柄を柔軟に演じ分けることができるのが彼の強みである。

とくに印象的なのは、『あんぱん』でも主演を務める北村匠海が監督した短編映画『世界征服やめた』で演じた星野役だ。

夢を見失いかけた青年の隣で、ふとした言葉や仕草で彼の心を揺さぶる存在感を見事に表現してみせた。役と自分の実感そのものを自然に重ね合わせたような演技が、観客の心に届く表現として昇華されている。

また、舞台作品への出演経験も豊富であり、セリフだけでなく立ち姿や視線の使い方で役の感情を伝える力に長けている。だからこそ『あんぱん』でも、天才肌で掴みどころのない六原を「ただの変人」に矮小化せず、人間味のあるキャラクターとして成立させることができたのだろう。

藤堂日向という俳優の魅力

朝ドラは数か月にわたり毎朝放送される国民的シリーズであり、役者にとっては“生活に溶け込む芝居”が求められる場でもある。

藤堂にとって六原永輔役は初めての朝ドラ出演という挑戦であり、これまで培ってきた演技の柔軟性と存在感が試される場にも見えた。

六原は、嵩やのぶにとって新しい視点を与える“触媒”のような存在だ。突飛なアイデアを放ち周囲を振り回しながらも、どこか憎めない人柄で人々を惹きつける。その人物像を藤堂は、ユーモアと真剣さの緩急をつけた演技で巧みに表現した。とくに嵩に舞台美術を依頼する場面では、彼の眼差しに作品にすべてを賭ける芸術家の狂気と、人を信じて託す誠実さの両方が宿っていた。

藤堂の演技の魅力は、役に自分を寄せていく自然体と、観客に訴えかける存在感の両立にある。彼は技巧を前に出しすぎず、しかし表情や間の取り方で観る者を強く惹きつける。六原という一筋縄ではいかない役柄にも、彼の醸し出す空気感がぴたりとハマった。

また、彼の演技からは“役に生きる”姿勢が強く感じられる。自身の経験や実感を大切にしながら、それを過剰に誇張することなく役柄に自然に溶け込ませる。そのため観客は、彼の演技を作り物と感じることなく、現実の人物として受け止めることができるのだ。

これからのキャリアにおける大きな武器

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『あんぱん』第20週(C)NHK

藤堂日向にとって『あんぱん』出演は間違いなく大きな転機になるだろう。朝ドラは多くの若手俳優にとって全国的な知名度を広げる舞台であり、彼の鮮烈な存在感は視聴者の記憶に強く残るはずだ。

今後は朝ドラで得た経験を糧に、さらに多様なジャンルの作品でその実力を発揮することが期待される。シリアスな役だけでなく、コメディやファンタジーといった幅広いジャンルでも、彼の持つ自然体の魅力は十分に生きるだろう。

藤堂日向は、『あんぱん』で六原永輔という難役を通じて、俳優としての新たな地平を切り開いた。天才的で変人ながら人間味あふれる六原を演じることで、作品に深みと彩りを与えたのである。彼の自然体の演技と存在感は、朝ドラという国民的作品のなかでも強い印象を残し、これからのキャリアにおいても大きな武器となるに違いない。


連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_