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「これほどの映画には出会えない」世界が熱狂した“圧倒的クオリティ”…「観ないと一生後悔する」熱烈な支持が殺到する至高作

  • 2025.8.30

映画の中には、痛みを抱えながらも前に進む人を描いた作品があります。今回は、そんな中から"傷ついた心の再生を描いた作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第2弾として、映画『ドライブ・マイ・カー』(ビターズ・エンド)をご紹介します。最愛の人を失いまま、心に蓋をして生きてきた男。寡黙なドライバーとの出会いが、閉ざされていた感情の扉を少しずつ開いていきます。喪失感と向き合いながら再生へと向かおうとする、静かな旅の物語です――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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米アカデミー賞・国際長編映画賞受賞会見の西島秀俊(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『ドライブ・マイ・カー』(ビターズ・エンド)
  • 公開日:2021年8月20日
  • 出演: 西島秀俊(家福悠介 役)

舞台俳優であり演出家の家福悠介(西島秀俊)は、脚本家の妻・音(霧島れいか)と穏やかな日々を送っていました。ところが、妻がある秘密を残したまま突然この世を去り、彼の時間は止まってしまいます。二年後、広島で行われる演劇祭の演出を任されることになった家福は、愛車サーブに乗り込み現地へ向かいます。そこで専属ドライバーとして彼に同行することになるのが、左頬に傷のある寡黙な若い女性・渡利みさき(三浦透子)でした。喪失感を抱えたまま生きる家福は、彼女と過ごす日々の中で、これまで目を背けていた自分の心と向き合うようになります――。

カンヌ国際映画祭を席巻した会話劇

映画『ドライブ・マイ・カー』は、作家・村上春樹さんの同名小説を原作とした作品です。

原作は、短編小説集『女のいない男たち』に収められた一編ですが、映画化にあたり、同じ短編集に収録された『シェエラザード』や『木野』の要素も取り入れられ、物語に一層の厚みが加えられました。

監督は映画『偶然と想像』『寝ても覚めても』などで知られる濱口竜介監督。チェーホフの『ワーニャ伯父さん』ベケットの『ゴドーを待ちながら』といった演劇を物語に取り入れ、登場人物たちの複雑な心情を重層的に描いています。

キャストには、西島秀俊さん、三浦透子さん、岡田将生さん、霧島れいかさんら実力派が集結。

主演の西島さんは黒沢清監督の『ニンゲン合格』や『クリーピー 偽りの隣人』で主演を務めたベテラン俳優で、本作が濱口監督との初タッグとなります。ドライバー役の三浦透子さんは女優としてだけでなくアーティストとしても注目を集め、本作では寡黙で芯のある女性を熱演。
岡田将生さんは若手俳優の高槻を、霧島れいかさんは主人公の妻・音を演じました。

本作は第74回カンヌ国際映画祭日本映画として初めて脚本賞を受賞。さらに国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞を受賞しました。国内でもキネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位をはじめ、日本映画監督賞、日本映画脚本賞、助演女優賞(三浦透子さん)など数々の賞に輝き、国内外で大きな話題を呼びました。

「もっと早く帰っていれば…」後悔を抱えたふたりの再出発

映画『ドライブ・マイ・カー』の大きな見どころは、赤いサーブ900の車内で交わされる家福とみさきの会話です。言葉と言葉のあいだに生まれる沈黙や緊張感が、観る者に彼らの抱える孤独や痛みを想像させます。特に、みさきが自身の過去を静かに語る場面や、家福が後悔を吐露するシーンは、胸に迫るものがあります。

みさきは、北海道の寒村で水商売をしていた母とふたりで暮らしていました。中学生の頃から車を運転し、母の送り迎えを繰り返す日々。運転が下手だと後部座席から蹴られることもあったと、彼女は語ります。18歳の時、大雨による土砂崩れで家が崩れ、母を亡くしたみさきは、そのままあてもなく車を走らせ、車が故障した広島で暮らしはじめたのでした。

一方、家福は「音に話したいことがある」と言われた日に、自分は理由もないのに帰宅を避けたと打ち明けます。「もっと早く帰っていれば、彼女は死なずにすんだかもしれない」と――。その言葉に、みさきもまた、「自分もあの土砂崩れの日、母を助けなかった」と打ち明けたのでした。

こうしてふたりは、これまでずっと胸の内に抱えていた罪の意識を吐き出し、過去に向き合いはじめます。

SNSには「緊張感のある会話劇の傑作」「記憶にとどめておきたい会話がいくつもあった」「この上なく贅沢な時間」と、本作の演出に心を奪われたという感想が数多く寄せられています。

“正しく傷つくべきだった”…過去と向き合う旅の終わりに

本作映画『ドライブ・マイ・カー』のテーマは、「喪失」と「再生」です。

最愛の人を失った家福は、亡き妻・音の浮気と正面から向き合えないまま、止まった時間の中を生きていました。しかし、みさきとの会話を重ねるなかで、「正しく傷つくべきだった」と気づかされる家福。

この思いは、原作の短編『木野』にある「傷つくべきときに十分に傷つかなかった」という一節とも重なります。

やがてふたりは、みさきの育った北海道の地を訪れます。かつて土砂崩れに呑まれたその場所で、みさきは、暴力をふるっていた母がときおり“サチ”という別の人格になっていたことを打ち明け、「サチのことは好きだった」と語ります。

その言葉を聞いた家福は、「自分たちは正しく傷つくべきだった。生き返ってほしい」と語り、みさきを抱きしめるのでした――。

ラストで描かれるのは、韓国の地で微笑むみさきの姿。頬の傷跡は、以前よりも薄くなっていました。

大切な人を失ったふたりが、それぞれ痛みを抱えながらも、少しずつ前を向いて歩き始めようとする――そんなラストシーンに、「傷ついた心の再生」という本作のテーマが重なります。

そんな本作に、SNSでは、「この映画に救われる人がたくさんいると思う」「元気のない人にこそ観てほしい」「人を愛し信じることの苦しさと美しさを描き出した傑作」「これほどの映画には出会えない」「3時間全く無駄のない作品で感動した」「観ないと一生後悔する」と絶賛の声が多く寄せられています。

喪失を描きながらも、再生へと向かう本作は、まさに「傷ついた心の再生を描いた」名作。落ち込んだときに、そっと寄り添ってくれる一作です。


※記事は執筆時点の情報です