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「気持ち悪い」「もう時代遅れ」“社会のタブー”に切り込む脚本に物議…だけど「本気に溢れた大傑作」“大河俳優”が魅せた至高映画

  • 2025.8.25

映画のなかには、痛みを抱えながらも前に進む人を描いた作品があります。今回は、そんな中から“傷ついた心の再生を描いた作品”を5本セレクトしました。本記事ではその第1弾として、映画『流浪の月』(ギャガ)をご紹介します。世間から“誘拐された少女”と“加害者の青年”というレッテルを貼られた更紗と文。15年の時を経て偶然再会したその瞬間から、止まっていた時間が少しずつ動き始めました。深く傷ついた更紗と、心に痛みを抱えた文…。そんなふたりがそれでも互いを必要とした理由とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画『流浪の月』大ヒット御礼舞台挨拶に出席した広瀬すず(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『流浪の月』(ギャガ)
  • 公開日:2022年5月13日
  • 出演: 広瀬すず(家内更紗 役)

ある雨の夕暮れ、公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・更紗(白鳥玉季)に声をかけたのは、19歳の大学生・文(松坂桃李)でした。伯母の家に帰りたくないと訴える更紗の思いを受け止め、文は自分の部屋へと迎え入れます。二人はそこで2か月間、穏やかな時間を共に過ごしますが、その生活は突然の終わりを迎え、文は「誘拐犯」として逮捕されてしまいます。

それから15年。世間から“被害者”と“加害者”という烙印を押されたままの更紗(広瀬すず)と文は、思いがけず再会を果たします。更紗のそばには婚約者の亮(横浜流星)が、文のそばには看護師の谷(多部未華子)がいました。しかし、過去を抱えながら生きてきた二人の運命は、やがて彼らを取り巻く人々を巻き込みながら、大きく動き出します――。

「物語×演技×映像」国際チームが創り上げた衝撃作

本作『流浪の月』は、人気作家・凪良ゆうさんの同名小説が原作です。映画化を手がけたのは、『悪人』『怒り』などで知られる李相日監督。主演は広瀬すずさんと松坂桃李さんで、共演には横浜流星さん、多部未華子さん、趣里さん、柄本明さんら実力派が顔をそろえています。

原作者の凪良ゆうさんは、BL作品で人気を集め、『美しい彼』シリーズなど数々の話題作を発表してきた実力派です。2017年には一般文芸に進出し、その丁寧な筆致と人物造形が高く評価されています。本作は2019年に刊行され、全国の書店員から熱い支持を受けて2020年本屋大賞を受賞。受賞後、第一作として刊行された『滅びの前のシャングリラ』も本屋大賞にノミネートされ、幅広い読者層から注目を集めています。

撮影監督には『パラサイト 半地下の家族』を手がけたホン・ギョンピョさん、美術には『ヘイトフル・エイト』『悪人』の種田陽平さんが参加し、国際的なスタッフによる映像美も大きな見どころとなっています。

「気持ち悪い」vs「究極の愛」― 物議を醸したストーリー

映画『流浪の月』は、10歳の少女と19歳の大学生という年齢差のある二人の関係性を描いています。また、“誘拐”というセンシティブな題材だったこともあり、公開直後からSNSでは賛否が渦巻きました。「気持ち悪い」と感情的に切り捨てる声や、「なぜ、いい年した成人男性が不幸な家出少女を簡単に家に招き入れてしまうの?」という意見、さらに「典型的なストックホルム症候群だ」という指摘もあり、否定的な見方も少なくありませんでした。

一方で、「“ロリコン”なんて言葉はもう時代遅れ」と冷静に捉える意見や、「簡単には感想がまとまらない映画」「観る人それぞれに解釈を委ねる余白のある作品」といった感想もあり、単純な肯定や否定では片づけられない複雑さが伝わってきます。

また、「切なくて、やるせない」など心を揺さぶられたという声や、「主人公たちにめちゃくちゃ感情移入して号泣した」という共感、さらには「究極の愛だと思う」というコメントも寄せられています。観客の間でここまで意見が分かれたのは、この作品が人間の深い部分に踏み込んでいるからこそ――。観る人によって全く違う景色を映し出す、そんな特別な一作です。

“禁断の愛”を超えて描かれる、痛みと再生

主人公たちの関係性をめぐって賛否が渦巻く中、物語にさらなる緊張感を与えているのが、現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』に出演している横浜流星さんの存在です。

彼が演じた更紗の婚約者・亮は、一見すると誠実なエリートですが、文と再会した更紗を前にして次第に心が歪んでいきます。愛情はやがて執着へと変わり、支配的で暴力的な行動に突き進んでいくのです。その過程は、まさに人間の心が壊れていく姿そのもの…。SNSには「横浜流星のDVが怖くて目を逸らしてしまった」「DVモラハラ彼氏役の狂気すら感じる」といった声が上がりました。

横浜さんの演技は、ただ怒りをぶつけるだけでなく、その裏側にある不安や弱さまでも丁寧に映し出しています。だからこそ観客は、彼の暴走に震えながらも、「救われてほしい」と願わずにはいられないのでしょう。こうした複雑な感情を抱かせる迫真の演技は高く評価され、横浜さんは第46回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞しています。

小児性愛というレッテルをめぐる議論と、横浜さんが体現した亮の存在が交わることで、本作は単なる禁断の愛の物語を超え、人間の奥底に潜む痛みや脆さを描き出す濃密なドラマへと昇華しました。SNSには、「禁断の愛を真正面から描いた、衝撃的だけど素晴らしい傑作」「没頭し心が動かされた」「人間について考えさせられる深い映画」「本気に溢れた大傑作」と絶賛の声が後を絶ちません。

観客の心に深く突き刺さったのは、ただの愛憎劇ではなく、傷を抱えながらも前へ進もうとする主人公・更紗と文の姿です。本作は“傷ついた心の再生を描いた名作”として、多くの人の記憶に残り続けることでしょう。


※記事は執筆時点の情報です